舟渡国際法律事務所

万引き・住居侵入など軽微な事件でも在留資格に響く理由

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万引き・住居侵入など軽微な事件でも在留資格に響く理由

万引き・住居侵入など軽微な事件でも在留資格に響く理由

2026/09/02

万引きで警察署に呼ばれた。空き部屋に入っただけで住居侵入と言われた。被害額は数千円で、警察官からは今回は書類だけだと説明された。それでも在留資格に影響するのか。外国人の方から寄せられる相談で、最も数が多いもののひとつです。

結論から言えば、軽微な事件が在留に響く経路はひとつではありません。退去強制事由に当たるかどうかという入口だけを見て安心すると、数か月後の在留期間更新で足をすくわれることがあります。この記事では、軽微とされる事件が在留資格に届く三つの経路を分けて説明し、それぞれについて何ができるのかを示します。

軽微な事件が在留資格に届く三つの経路

軽微な事件が在留に影響する経路は、退去強制事由への該当、在留期間の更新や変更における裁量判断、そして将来の上陸拒否の三つに分かれます。この三つは根拠条文も判断者も異なるため、ひとつを回避しても別の経路が残ります。

経路根拠典型的な帰結
退去強制入管法24条4号リ無期又は1年を超える拘禁刑。全部執行猶予は但書により除外
更新・変更の不許可法務大臣の裁量罰金でも執行猶予でも素行として考慮される
上陸拒否入管法5条1項4号1年以上の拘禁刑に処せられた者は上陸を拒否される
在留資格の取消し入管法22条の4正当な理由なく3か月以上その活動を行わない等

罰金や執行猶予で退去強制になるのか

万引きや住居侵入の典型例では、罰金や全部執行猶予の判決で退去強制事由に該当することはありません。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としています。ただし同号には但書があり、刑の全部の執行を猶予された場合は除外されます。一部猶予であっても、実際に服する部分が1年以下であれば同じく除外されます。

執行猶予でも退去強制になるという説明を目にすることがありますが、これは条文に反します。もっとも、薬物犯罪だけは扱いが違います。入管法24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を退去強制事由とし、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。軽微かどうかという感覚は、薬物では通用しません。

起訴されるかどうかは日本人と同じではない

統計上、来日外国人の被疑事件の起訴率は全体の起訴率より高くなっています。令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴率は44.28パーセントで、全体の40.38パーセントを上回りました。罪名別に見ると、窃盗は来日外国人が52.53パーセント、全体が44.84パーセントです。分母は過失運転致死傷等及び道交違反を除く終局処理人員です。

ここでいう来日外国人とは、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者、在留資格不明者を除いた定義です。数字が示しているのは、被害額が小さいから当然に不起訴になるという前提が成り立たないということです。同種前科の有無、被害弁償の有無、身元引受の体制といった事情が、日本人の事件よりも重く働くことがあります。

職務質問と在留カードの携帯義務

軽微な事件では、その場で在留カードの提示を求められる場面がしばしば発生し、これ自体が別の違反になり得ます。入管法23条は中長期在留者に在留カードの携帯と提示の義務を課しています。携帯義務違反は同法75条の3により20万円以下の罰金、提示を拒んだ場合は同法75条の2により1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金です。

提示義務違反は拘禁刑が定められている点で携帯義務違反より重い扱いです。もっとも、いずれも入管法24条4号リの1年を超える拘禁刑という水準からは離れています。恐れるべきなのは刑そのものより、複数の違反が重なって素行の評価が下がることです。

本人とご家族が取れる行動

軽微な事件ほど、初期の対応で結論が動きます。取れる行動を具体的に挙げます。

  • 被害弁償と示談の申し入れは弁護人を通じて行う。本人や家族が直接店舗へ行くと、かえって処理が硬直することがある
  • 取調べでは、刑訴法198条2項により黙秘権が告げられる。話す範囲を決めてから臨む
  • 供述調書は同条4項により読み聞けが行われ、増減変更を申し立てることができる。事実と違う部分はその場で訂正を求める
  • 身体を拘束された場合、刑訴法39条1項により立会人なしで弁護人と接見できる
  • 勤務先や学校への説明の順序と内容を、弁護人と相談してから決める

特に最後の点は在留資格に直結します。事件を理由に退職や退学をしてしまうと、入管法22条の4の取消事由が現実の問題になります。刑事事件を抜けても在留を失うという事態は、こうして起こります。

よくある誤解

相談の場で繰り返し出てくる誤解を挙げます。

  • 微罪処分や不起訴なら記録は残らない。検察庁と警察には前歴として記録が残り、次の事件の処理に影響します。
  • 刑法34条の2で刑が消滅すれば入管にも関係なくなる。刑の消滅は法律上の資格制限を解くものであり、過去の事実そのものが消えるわけではありません。
  • 罰金なら在留カードの更新は自動で通る。更新は裁量判断であり、自動ではありません。
  • 被害額が小さければ在留に影響しない。影響の有無を決めるのは金額ではなく、処分の内容と素行の評価です。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。

軽微とされる事件でも、執行猶予判決で足りるとは考えません。在留への影響を最小にするという観点からは、不起訴処分を最優先の目標に置きます。刑事事件と入管手続は一体として設計します。刑事段階の供述調書は、後の違反審査や口頭審理で資料として使われるためです。退去強制事由に当たるかどうかの判断についても、故意や過失の有無を含めて争う視点を持ちます。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

おわりに

軽微という言葉は、刑事手続の中での相対的な評価にすぎません。在留資格の側から見たとき、同じ事件がまったく違う重さを持つことがあります。処分が決まる前に、刑事と入管の両方を視野に入れて動くことをおすすめします。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事の英語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099197/

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