上陸拒否期間はなぜ1年・5年・10年に分かれるのですか
2026/09/01
「日本から帰されたら何年入れないのですか」というご質問には、一つの答えがありません。出入国管理及び難民認定法(入管法)5条1項9号は、上陸拒否の期間を1年・5年・10年に分けており、どれに当たるかは、どのような形で日本を出たか、過去に退去強制を受けたことがあるかによって決まるからです。この記事では、その分かれ目を整理し、なぜ「出頭申告」が実務上重視されるのかを説明します。中国籍の在留者ご本人と、ご家族に向けた記事です。
まず、出国の仕方によって扱いが変わります
日本を離れる形は一つではありません。退去強制令書の発付を受けて送還される場合、退去強制手続の中で自ら出国する場合、出国命令を受けて自ら出国する場合、そもそも退去強制の対象にならずに通常どおり出国する場合があります。上陸拒否期間の規定は、この違いを前提に組み立てられています。したがって、ご自身がどの形で日本を出たのか(あるいは出ようとしているのか)を正確に把握することが出発点になります。入管から交付された書面の名称を確認してください。
1年になる場合
入管法5条1項9号ホは、出国命令により出国した者について、上陸拒否期間を1年と定めています。また同項9号ロは、入管法52条5項の決定を受けて自ら日本を出国した者について、同じく1年としています。出国命令は、入管法24条の3に定める要件を満たす場合に、収容されることなく、出国期限を15日を超えない範囲で定めて自ら出国する制度です。なお、この制度の条文の位置は令和5年の改正により55条の85へ移されており、定められた期限を過ぎて残留した場合には別途の罰則が用意されています。
5年になる場合と、10年になる場合
入管法5条1項9号ハは、退去強制を受けた者で、それ以前に退去強制を受けたことがないものについて、上陸拒否期間を5年としています。同項9号ニは、過去に退去強制を受けたことがある者について、10年としています。つまり、一度目と二度目とで、期間が倍になる構造です。さらに同項9号ヘは、24条の3第1号ロに該当する者が出国命令により出国した後、短期滞在の在留資格で入国しようとする場合について、5年と定めています。同じ出国命令でも、その入口の要件をどう満たしたかによって、後の扱いが変わり得るということです。
1年と5年を分けるのは、違反調査が始まる前か後かです
出国命令の要件を定める入管法24条の3第1号には、イとロの分岐が置かれています。イは、違反調査が始まる前に自ら入管に出頭した場合です。ロは、違反調査が開始された後、47条3項の通知が行われる前に出国の意思を表明した場合です。この二つは、いずれも出国命令に至り得る道ですが、その後の上陸拒否の扱いに差が生じます。摘発されてから動くのか、その前に自ら出頭するのかという差が、条文上の効果として現れているわけです。出頭申告が実務で重視されるのは、この構造があるためです。
期間の定めがない類型もあります
すべての上陸拒否事由に年限があるわけではありません。入管法5条1項10号は、24条4号オからヨまでに該当して退去強制を受けた者について、期間の定めを置いていません。また、薬物に関する上陸拒否事由である5条1項5号にも、9号のような年限がありません。この事由は罰金でも、外国の法令違反でも足りるとされており、再入国は入管法12条1項の上陸特別許可によるほかありません。「何年たてば入れる」という発想が通じない領域があることは、正確に知っておく必要があります。
統計から見た出国の形
出入国在留管理庁の統計(令和6年)によれば、退去強制手続等を執った者は18,908人で、そのうち出国命令手続によるものが10,131人でした。被送還者数は7,698人で、内訳は自費出国6,808人、国費送還(護送官なし)581人、国費送還(護送官あり)249人などとなっています。出国命令手続が全体の半数以上を占めていることが分かります。どの手続に乗るかで、その後の1年と5年、あるいは10年が変わるのですから、手続の初期段階の判断は軽いものではありません。
今、確認していただきたいこと
第一に、入管から受け取った書面が、出国命令書なのか、退去強制令書なのかです。第二に、過去に日本から退去強制を受けたことがあるかどうか。第三に、退去強制事由として何号が挙げられているか。薬物に関する号が含まれていれば、年限の議論とは別の枠組みになります。第四に、次に日本へ来る目的です。短期滞在なのか、就労なのか、家族と暮らすためなのかによって、準備すべき資料が異なります。これらを整理したうえで弁護士にご相談いただくと、見通しの精度が上がります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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