執行猶予の判決の後、入管から呼び出されるのはなぜか 何を聞かれるのか
2026/09/01
刑事の判決が終わって一息ついたところに、出入国在留管理庁から出頭を求める通知が届く。この順番に驚かれる方が多いのですが、実務では珍しいことではありません。刑事手続と入管手続は別の制度であり、刑事が終わってから入管が動き始めるのは、むしろ通常の流れです。この記事では、入管がどこから事件を知るのか、呼出しにどのような性質のものがあるのか、手続がどの段階まで進み得るのか、聴取では実際に何を聞かれるのか、そして答え方を誤るとなぜ後から取り返しにくいのかを説明します。
入管はどこから事件を知るのか
端緒は一つではありません。検察庁や裁判所から入管に対して行われる通報、警察からの情報提供、勤務先や学校からの届出、そしてご本人が行った在留期間の更新や在留資格の変更の申請そのものが端緒になります。更新の申請書には、犯罪を理由とする処分を受けたことがあるかを尋ねる欄があり、ここを空欄にしたり、事実と違う記載をしたりすると、事件そのものよりも、その記載のほうが重く扱われることがあります。隠して通そうとする発想は、入管の手続では機能しないと考えてください。
呼出しには二つの性質があります
一つは、事実関係を確かめるための任意の聴取です。もう一つは、退去強制事由に当たる疑いがあるとして行われる違反調査としての呼出しです。通知書の文面からは区別がつかないことも多く、行ってみて初めて後者であったと分かる場合があります。違反調査の結果、退去強制事由に当たると判断されると、収容令書による収容や監理措置の決定を経て、入国審査官による審査、特別審理官による口頭審理、法務大臣の裁決に対する異議申出という三段階の手続に進みます。令和7年の統計では、違反調査の受理は30,446人、既済は26,025人でした。審査の段階での在留特別許可は824人で、同段階の既済18,236人に占める割合は4.5%です(出入国在留管理庁「出入国管理統計」)。狭い道ですが、閉ざされた道ではありません。
聴取で実際に聞かれること
聞かれる事項は、おおむね次の範囲に収まります。事件の内容と、それを認めているかどうか。判決の内容と執行猶予の期間。来日の経緯と、これまでの在留の履歴。現在の在留資格に応じた活動を実際に行っているか。勤務先と収入、納税と社会保険料の納付の状況。家族の構成、配偶者や子どもの国籍と就学の状況。日本に残りたい理由。帰国した場合に具体的にどのような支障が生じるか。再び同じことを起こさないために何を変えたか。これらは、後の在留特別許可の判断で考慮される事情と重なっています。入管法50条5項は在留特別許可の考慮要素を法律で定めており、在留特別許可のガイドラインは令和6年3月に改定され、同年6月10日に施行されました。同ガイドラインでは、不法滞在を申告するために自ら地方出入国在留管理官署に出頭したことが積極的な要素として明記されています。
答え方を誤ると、後から取り返しにくい理由
聴取の内容は調書にまとめられ、署名を求められます。いったん署名した調書は、後の段階で「あれは違う」と言っても、そのまま信用されるとは限りません。三つの点に注意してください。第1に、通訳の内容を理解できないまま署名しないこと。日本語の調書を読み上げて訳してもらい、意味が分からない箇所はその場で聞き返してください。第2に、事実と評価を分けること。「反省しています」といった評価の言葉より、いつ、どこで、何をしたのかという事実を正確に述べるほうが、後の主張と食い違いにくくなります。第3に、分からないことを推測で答えないこと。記憶がない事柄について曖昧に答えると、それが事実として記録されます。可能であれば、出頭の前に弁護士に相談し、必要に応じて同行や意見書の提出を検討してください。
出頭の日までに用意する資料
在留カード、旅券、判決書の謄本または刑事の処分を示す書面、住民票、在職証明書と直近の給与の明細、納税の証明、社会保険の加入を示す書面、家族関係を示す書面(配偶者や子どもの在留カード、子どもの在学を示す書面)、住居の賃貸借契約書。加えて、事件後に生活をどう立て直したかを示す資料、たとえば勤務先が引き続き雇用する意思を書面にしたもの、家族が監督する意思を書面にしたものが、実務では意味を持ちます。これらは呼出しを受けてから集めると間に合わないことがありますので、判決が出た時点で準備を始めてください。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------