日本で交通事故を起こしたときの三つの責任 刑事・行政・民事
2026/09/01
日本で交通事故を起こすと、一つの出来事に対して三つの手続が別々に進みます。警察と検察が扱う刑事の手続、公安委員会が扱う運転免許の行政処分、そして被害者との間の民事の賠償です。中国語圏では「咨询一下国外酒驾怎么处罚」といった検索がありますが、多くの記事は刑事だけを扱っています。三つは互いに独立していて、一つが終わっても他は終わりません。この記事では、それぞれの手続で何が決まるのか、順序をどう組み立てるべきか、そして在留資格にどこで影響するのかを、中国籍の方とご家族に向けて整理します。
三つの手続は別々に進む
刑事の手続は、事故の態様と被害の程度に応じて、捜査から起訴または不起訴の判断へと進みます。行政の手続は、違反の点数に応じて免許の停止や取消しを決めるもので、刑事で不起訴になっても行われます。民事は、被害者への損害賠償で、保険会社が窓口になることが多いものの、最終的な責任は運転者と車の保有者にあります。この三つを混同すると、示談ができたから免許は大丈夫だと考えたり、不起訴だから賠償はしなくてよいと考えたりして、対応が遅れます。事故の直後は、三つを並行して管理する必要があります。
刑事 どの罪名になるか
人身事故の多くは、自動車の運転上必要な注意を怠って人を死傷させた場合として、自動車運転死傷処罰法の過失運転致死傷にあたります。これに対し、アルコールや薬物の影響、制御が困難な高速度での走行など、一定の危険な運転により人を死傷させた場合は、同法2条の危険運転致死傷です。同条2号は、進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる類型を定めています。無免許運転が加わる場合の加重は同法6条1項です。現場を離れれば道路交通法の救護義務違反が加わります。どの罪名になるかによって、量刑の幅も、在留への影響も変わりますので、事故の態様を正確に把握することが出発点になります。
行政 免許の処分と手続
違反の内容に応じて点数が付き、累積すると免許の停止や取消しの処分が行われます。取消しの場合は、一定の期間、免許を再取得できません。処分の前には、意見を述べる機会が設けられます。通知は住民登録の住所に届きますから、引越しの届出を怠っていると、通知を受け取れないまま処分が確定することがあります。刑事の弁護に集中して行政の通知を放置してしまう例が実際にありますので、ご家族が郵便物を管理してください。
民事 賠償と保険
自動車損害賠償責任保険は、対人賠償について最低限の補償を行うもので、これだけでは足りないことがほとんどです。任意保険に加入していれば、対人・対物の賠償、示談の交渉、弁護士費用の一部が対象になる場合があります。まず確認すべきは、任意保険の加入の有無と補償の範囲です。営業目的の運送であることを告げていない場合や、無免許運転の場合には、保険が使えないことがあります。示談が成立すれば、刑事処分の判断にも有利に働きます。順序としては、保険会社への連絡、被害者への謝罪、治療状況の確認、示談の交渉という流れになります。
在留資格にどこで影響するか
出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号の2は、別表第一の在留資格をもって在留する方について、自動車運転死傷処罰法2条及び6条1項の危険運転致死傷を退去強制事由としています。過失運転致死傷は、この列挙には含まれません。他方、入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑を退去強制事由とし、全部執行猶予は但書で除かれます。出入国在留管理庁の出入国管理統計によれば、令和7年に4号の2により退去強制令書が発付されたのは49人で、うち中国籍は15人、ベトナムが22人でした。令和7年末の在留外国人統計では、中国籍の在留者930,428人のうち、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者に特別永住者を加えた層が約47.1%を占めます。残る約半数の方は別表第一の在留資格であり、4号の2の対象となります。自分がどちらの層にいるかを知っておくことは、事故後の見通しを立てるうえで欠かせません。
ご家族が今日できること
事故の直後にすべきことは、保険証券の確認と保険会社への連絡、ドライブレコーダーと車両の写真の保全、被害者の治療状況の把握、そして行政処分の通知が届く住所の確認です。ご本人が身柄を拘束されている場合には、勤務先や学校への説明の時期、在留カードと旅券の所在、差し入れの手配が加わります。被害者への謝罪と弁償の意思は、可能な範囲で早く伝えることが、三つの手続すべてに良い方向で影響します。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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