白タクは道路交通法違反ではない 適用されるのは道路運送法である
2026/09/01
空港へ送ってほしいと頼まれてお金を受け取った、同郷のグループで送迎の依頼を回している、配車のやり取りをSNSで受けている。いわゆる白タクの摘発が続いています。中国語のニュース記事やSNSでは、これを道路交通法違反と説明しているものを見かけますが、正確ではありません。適用されるのは道路運送法です。この記事では、何が禁じられているのか、ガソリン代だけの受取りはどう扱われるのか、そして在留資格に及ぶ第二の問題について、中国籍の方とご家族に向けて整理します。
根拠となる法律が違うことの意味
道路交通法は、走り方や停め方など、道路における交通の安全を守るための法律です。信号無視や速度違反、飲酒運転はこちらに含まれます。これに対し、他人を運んで対価を得る事業そのものを規制しているのは道路運送法で、旅客自動車運送事業を営むには国土交通大臣の許可が要ります。許可を受けずに有償で旅客を運ぶ事業を行えば、この法律に違反し、罰則の対象になります。根拠法を間違えると、何が争点になるのかも見誤ります。道路交通法違反であれば運転の態様が問題ですが、道路運送法違反では、対価を得ていたか、事業として反復継続していたか、という点が中心になります。中国語の記事を読んで安心したり、逆に必要以上に恐れたりする前に、まず適用される法律を確かめてください。
ガソリン代だけを受け取った場合はどうか
実費の分担にとどまるのか、運送の対価なのかは、実務上よく争われます。判断の材料になるのは、金額が実際にかかった燃料費や高速代と釣り合っているか、距離や時間に応じて金額が決まっていないか、事前に料金を提示していないか、不特定の人から依頼を受けていないか、SNSや掲示板で募集していないか、繰り返し行っていないか、といった事情です。友人一人を空港へ送り、高速代を折半しただけであれば、事業とは評価されにくいでしょう。他方、料金表を示して不特定の相手を運んでいれば、名目が謝礼であっても対価と評価されます。配車アプリを使っていた場合、乗車の履歴と入金の記録がそのまま証拠になります。
資格外活動という第二の問題
白タクの事案で見落とされがちなのが、在留資格の側の問題です。留学や家族滞在の在留資格で就労するには資格外活動の許可が要り、許可があっても認められる時間には上限があります。技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ方が、勤務のかたわら送迎で収入を得ていれば、これも資格外活動です。出入国管理及び難民認定法(入管法)は、資格外活動を行った者を73条で処罰し、その活動に専従していた場合は70条1項4号の対象としています。そして入管法24条4号ヘは、73条の罪により拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とし、同4号イは資格外活動に専従した者を退去強制事由としています。警察庁の令和6年における組織犯罪の情勢(確定値版、令和7年4月)によれば、令和6年の来日外国人による資格外活動の検挙は257件でした。出入国在留管理庁の出入国管理統計では、令和7年に資格外活動を理由として退去強制令書が発付された人は57人です。件数は多くありませんが、白タクは、刑事の罰則と退去強制の双方が同時に動き得る類型です。
事故が起きたときに何が起きるか
営業目的の運送であることを告げずに任意保険を契約している場合、事故の際に保険金が支払われないことがあります。乗客が負傷すれば、賠償はすべて運転者本人にのしかかります。刑事では過失運転致傷が加わり、無許可営業の事実は情状として重く評価されます。乗る側にとっても、事故の際の補償が及ばない可能性があるという意味で、安いから使うという判断には相応の危険が伴います。
摘発されたときの初動
まず、送迎の依頼をどこで受けていたか、料金をどう決めていたか、何回行っていたかを、記憶が新しいうちに整理してください。反復継続の程度が処分の重さを左右します。次に、資格外活動に当たるかどうかを、自分の在留資格と許可の内容に照らして確認してください。ここは刑事の弁護人と入管手続を併せて見る必要がある部分です。ご家族は、在留カードと旅券の所在、勤務先や学校への説明の時期、差し入れの手配を確認してください。
中文版:日本 黑车 被抓怎么处罚:适用的是道路运送法,不是道交法
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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