銀行口座を売った、貸した それだけで逮捕されるのはなぜか
2026/09/01
帰国するので口座はもう使わない、知人に頼まれて通帳とキャッシュカードを渡した、副業の入金用だと言われて名義だけ貸した。中国語圏では「日本 洗钱 被抓会怎么样」という検索が続いています。日本では、口座を他人に渡す行為それ自体が違法とされており、渡した口座が詐欺に使われれば、詐欺の共犯として捜査される場面もあります。この記事では、なぜ口座の譲渡が犯罪になるのか、どこから詐欺の共犯になるのか、送金を請け負う行為はどう扱われるのか、そして在留資格にどう跳ね返るのかを、中国籍の方とご家族に向けて順に説明します。
口座を渡すこと自体が禁じられている
日本では、犯罪による収益の移転を防ぐための法律により、正当な理由なく預貯金口座に係る通帳やキャッシュカードを他人に譲り渡す行為、譲り受ける行為が禁じられ、罰則が置かれています。売買であっても、無償で貸しただけであっても対象になります。さらに、最初から他人に渡す目的を隠して金融機関の窓口で口座を開設した場合には、銀行を欺いて通帳の交付を受けたものとして、詐欺罪が成立し得ます。この場合、被害者は口座を使われた人ではなく金融機関です。実務では、開設の直後に口座が第三者に渡っている、短期間に複数の銀行で口座を作っている、といった客観的な経過から、開設時の意図が推認されます。口座は売っても貸してもいけない、という一点を押さえておいてください。
どこから詐欺の共犯になるのか
渡した口座が特殊詐欺の振込先に使われると、捜査は口座名義人から始まります。名義人が何も知らなかったのであれば詐欺の故意は認められませんが、問題は、どこまで知っていたかが供述だけでは決まらないことです。報酬の額、依頼者との関係、渡した経緯、暗証番号や携帯電話を一緒に渡したか、身分証の写しを求められたか、複数回にわたって渡したかといった事情が積み上げられ、少なくとも犯罪に使われるかもしれないと思っていた、という未必の故意が認定されることがあります。ここを超えると、詐欺の幇助、さらには共同正犯として扱われます。警察庁の令和6年における組織犯罪の情勢(確定値版、令和7年4月)によれば、令和6年の特殊詐欺の認知件数は20,987件、被害額は約721億5,000万円で、3年連続の増加により過去最悪となりました。一方で検挙人員2,320人のうち中枢被疑者は58人、全体の2.5%にとどまります。末端に位置する名義人が処罰の中心になりやすい構造がここに表れています。
送金を請け負う行為は別の罪になる
知人から現金を預かって中国の家族に送る、レートを取って両替と送金をまとめて引き受ける。こうした行為は、いわゆる地下銀行として、銀行法上の無許可の為替取引にあたる可能性があります。最高裁判所平成13年3月12日判決は、為替取引を、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することと定義しました。この定義は広く、現金を実際に運ばないまま貸し借りを相殺する方式も含まれます。手数料を取り、反復して行っていれば、事業性が認められやすくなります。善意で親族の送金を手伝ったつもりでも、金額と回数が積み上がれば捜査の対象です。
在留資格への影響
口座譲渡だけで終われば罰金や執行猶予に収まることもありますが、詐欺の共犯として起訴されると、被害額によっては実刑の可能性が現実になります。出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とし、但書により全部執行猶予は除かれます。出入国在留管理庁の出入国管理統計によれば、令和7年の退去強制令書発付は総数7,722人で、4号リ単独は41人、うち中国籍は11人でした。不法残留との並立を含めると中国籍は47人となり、中国籍の発付総数686人の6.9%を占めます。ベトナムの2.3%と比べると約三倍で、中国籍については実刑を伴う事件が退去強制に結びつく比率が相対的に高いことが分かります。刑事事件で実刑を避けることが、そのまま在留を守ることにつながる類型です。
ご家族が今日できること
まず、本人名義の口座の状況を確認してください。犯罪に使われた口座は金融機関によって取引が止められることがあり、家賃や公共料金の引落しが不能になります。次に、通帳やカードを誰にいつ渡したかを示す記録、メッセージのやり取り、報酬の入金履歴を保全してください。名義人が受け取った金額が小さいことは、関与の程度を示す資料になります。被害弁償の原資を用意できるかどうかも、早い段階で見通しを立てておくべき点です。そして、本人には、取調べで記憶にないことを認めないよう伝えてください。供述調書は署名して初めて証拠になります。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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