偽造在留カードは持っているだけで罪になる 所持・行使・提供・貸与の違い
2026/09/01
在留カードをなくした、在留期間が切れてしまった、アルバイト先に提示を求められた。そうした場面で、SNSや知人を通じて、すぐ作れると持ちかけられることがあります。中国語圏では「日本使用假在留卡犯了什么法」という検索が繰り返されています。結論から言えば、偽造された在留カードは、使わずに持っているだけで犯罪です。この記事では、所持・行使・提供・貸与という行為の違い、発覚する場面、雇う側の責任、そして在留資格に与える影響を、中国籍の方とご家族に向けて整理します。
持っているだけで罪になる理由
入管法は、在留カードの偽造や変造そのものだけでなく、偽造されたカードを他人に提供する行為、行使する目的で所持する行為を、それぞれ処罰の対象としています(73条の6以下)。さらに、本物の在留カードであっても、他人に貸す行為、他人のカードを譲り受ける行為が別に処罰されます(73条の8以下)。つまり、偽造する、偽造カードを他人に渡す、行使する目的で持っている、本物を貸し借りする、という四つの場面が、それぞれ独立した罪として組み立てられています。使っていないから大丈夫という理解は、この構造を見落としています。使う目的で持っていた事実が認められれば、提示していなくても立件されます。逆に言えば、行使の目的があったかどうかは、弁護人が正面から争える論点でもあります。
どこで発覚するのか
実際に発覚するのは、警察官の職務質問、携帯電話の契約、金融機関の口座開設、勤務先の採用時の確認、そして入管による事業所への調査です。警察庁の令和6年における組織犯罪の情勢(確定値版、令和7年4月)によれば、令和6年の来日外国人による入管法違反の検挙は5,974件で、このうち偽造在留カード所持等が401件を占めます。中国籍の特別法犯の検挙件数1,087件のうち、偽造在留カード所持等は84件で7.7%でした。同じ資料は、SNS等で在留者を集め、国外にいる指示役の指示で偽造在留カードを製造する、高度に組織化された形態がみられると指摘しています。作った側だけでなく、受け取って持っていた側にも捜査が及びます。
本物のカードを貸すこと、借りること
就労時間の制限を超えて働くために他人のカードを借りる、帰国するので自分のカードを知人に貸す。いずれも処罰の対象です。貸した側は、そのカードが不法就労や口座開設、携帯契約に使われれば、後続の犯罪に巻き込まれます。名義が自分である以上、被害の申告も捜査の照会も自分に向かってきます。帰国が決まっているからといって、在留カードや通帳を他人に預けないでください。
雇う側にも責任がある
入管法73条の2の不法就労助長罪は、就労が認められない外国人を働かせた事業者を処罰します。実務では、採用時に在留カードの原本を確認したか、有効期間と就労制限の記載を見たか、資格外活動許可の有無を確かめたかが争点になります。警察庁の同じ資料によれば、令和6年の雇用関係事犯の検挙は278件・326人で、うち不法就労助長罪が262件、割合にして94.2%を占めました。被雇用者の国籍別ではベトナム247人、タイ50人、中国48人です。加えて、不法就労助長は入管法24条3号の4により、刑事処罰を経なくても行為があるだけで退去強制事由になり得ます。外国人経営者にとっては、刑事と在留の双方に直結する問題です。
在留資格にどう響くか
偽造在留カードの事案は、執行猶予付きの判決や罰金で終わることが少なくありません。入管法24条4号リの退去強制事由は無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に限られ、全部執行猶予は但書で除外されますから、この罪名だけで直ちに退去強制になるとは限りません。もっとも、危険はそこにはありません。偽造カードを用いて在留資格の許可を受けていれば入管法22条の4第1号の取消しの対象になりますし、在留期間の更新や永住許可の審査では素行の要素として正面から評価されます。刑が軽く済んだことと、在留が続くこととは別の問題です。
疑われたときの初動
身柄を拘束された場合、ご家族はまず在留カードと旅券の所在、勤務先や学校へ説明する時期、差し入れの手配を確認してください。本人にとって重要なのは、カードをどこで、いくらで、誰から入手したかという経緯を、記憶が新しいうちに弁護人に伝えることです。入手先の存在は、量刑上の位置づけを大きく変えます。取調べには通訳が入りますが、供述調書は署名して初めて証拠となります。内容に違和感があれば署名を留保し、訂正を求めることができます。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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