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窃盗と強盗の分かれ目 逃げるときに突き飛ばすと何が変わるのか

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窃盗と強盗の分かれ目 逃げるときに突き飛ばすと何が変わるのか

窃盗と強盗の分かれ目 逃げるときに突き飛ばすと何が変わるのか

2026/09/01

万引きが見つかって逃げようとした際に店員を突き飛ばした。この一瞬の行動によって、事件の名前が窃盗から強盗に変わることがあります。日本の刑法では、窃盗と強盗は連続した軽重の差ではなく、まったく別の重さを持つ罪です。この記事では、中国籍の方とそのご家族に向けて、両者を分ける基準、逃走時の暴行を捉える刑法238条の構造、けがの結果が加わったときに何が起きるのか、そして在留への影響を説明します。

強盗は「反抗を抑圧する程度」の暴行・脅迫を要する

強盗罪は、暴行または脅迫を用いて財物を奪う罪であり、法定刑は5年以上の有期拘禁刑です。窃盗の上限が10年であるのに対し、強盗は下限が5年です。この下限の存在が決定的な意味を持ちます。実務上の分かれ目は、暴行や脅迫が、被害者の反抗を抑圧する程度に達していたかどうかです。判断は、凶器の有無、人数、場所と時間帯、被害者の年齢や体格、言動の内容といった事情を総合して行われます。ひったくりのように、財物を奪う力しか用いていない場合は窃盗にとどまることがありますが、被害者が転倒してけがをすれば評価は変わります。

逃げるときの暴行を捉える刑法238条

刑法238条は、窃盗が、財物を取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、または罪跡を隠滅するために暴行または脅迫をしたときは、強盗として論ずると定めています。これが事後強盗です。最初は万引きであっても、店員に腕をつかまれた際に振り払って突き飛ばした、追いかけてきた警備員を殴ったという行為があれば、この規定によって強盗と同じ重さで扱われます。ここでも暴行の程度が問われ、単に振りほどいて走り去っただけの行為が常に事後強盗になるわけではありません。しかし、相手が転倒し、あるいは負傷すれば、後述のとおり事態は一段と重くなります。

けがの結果が加わったときに何が起きるか

強盗が人を負傷させた場合は強盗致傷となり、法定刑は無期または6年以上の拘禁刑です。この類型は裁判員裁判の対象となり、市民が加わった法廷で審理されます。手続の面でも、公判前整理手続に数か月を要し、判決までの期間が長くなります。注意していただきたいのは、けがをさせる意図がなくても、逃走時の暴行によって相手が転倒し骨折したという場合には、この重い類型に当たりうるという点です。万引きという軽い入口から、裁判員裁判の対象事件に至る経路が現実に存在します。

法定刑の重さと、執行猶予の可否

日本の執行猶予は、言い渡される刑が一定の範囲内に収まっていることを前提とします。強盗の下限は5年、強盗致傷の下限は6年ですから、そのままでは執行猶予に届きません。酌量減軽がなされて刑が軽くなった場合に、はじめて執行猶予の可能性が生じます。したがって、この類型の弁護では、そもそも事後強盗にあたる程度の暴行だったのか、負傷との因果関係はあるのか、被害の回復はどこまで進んでいるのかという各点を、丁寧に主張していくことになります。法務省『令和7年版犯罪白書』(対象年次は令和6年)によれば、強盗の起訴率は全体で38.22%、来日外国人で56.58%でしたが、来日外国人の終局処理人員は83人と母数が小さく、この数字だけで個別の見通しを立てることはできません。

在留資格への影響は窃盗類型と別に考える

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とし、但書により全部執行猶予を除いています。万引きにとどまり罰金や執行猶予で終わる事件では、この号に当たらないことが多いのに対し、強盗や強盗致傷で実刑となれば、刑期が1年を超えることが通常であり、正面から該当します。出入国管理統計(令和7年)によれば、4号リ単独による退去強制令書の発付は全国で41人、うち中国籍は11人で、不法残留との並立を含めると中国籍は47人でした。中国籍の退令発付総数686人に占める割合は6.9%で、ベトナム籍の2.3%より高くなっています。実刑判決を受けた場合には、服役後に退去強制手続が続くことを前提に、在留の見通しを早い段階から検討しておく必要があります。

ご家族が最初にすること

この類型では、事実関係の細部が罪名を変えます。何秒間の出来事だったのか、どちらが先に手を出したのか、相手はどのように転倒したのか。これらは、防犯カメラの映像と目撃者の記憶によってしか再現できません。映像の保存期間は長くありませんから、弁護人を通じて早期に保全を求めることが重要です。あわせて、被害者の負傷の程度と治療経過を把握し、被害弁償の原資を用意してください。身元引受人の確定と、住居や就労先または通学先の維持を示す資料も準備します。ご本人が取調べで何を述べたかによって方針が変わりますので、弁護人による接見を最優先で入れてください。

中文版:在日本,盗窃与抢劫的分界线在哪里

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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