日本の窃盗は重い罪なのか 万引きと侵入盗はまったく別に扱われる
2026/09/01
「日本で窃盗は重い罪ですか」というご質問には、「どの窃盗かによります」としかお答えできません。日本の刑法は、店頭で商品を持ち出す行為も、住居に立ち入って金品を持ち出す行為も、同じ窃盗という一つの罪名で捉えています。しかし実務上の扱いは、この二つでまったく別物です。この記事では、中国籍の方とそのご家族に向けて、何が扱いの差を生んでいるのか、その差はどの段階で決まってしまうのか、そして在留資格への影響はどこで分かれるのかを説明します。
罪名は一つでも、実務は別の事件として扱っている
窃盗罪の法定刑は10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。上限と下限の間がこれほど広いのは、条文が想定する行為の幅が広いからにほかなりません。店舗での万引きは、被害額が数千円にとどまり、商品が回復され、店側が処罰を強く求めない場合には、起訴猶予や略式手続による罰金で終わることがあります。これに対して、施錠された住居や事務所に立ち入る侵入盗は、財産の被害だけでなく、住居の平穏という別の利益を侵害します。建物への立入り自体が住居侵入罪として別に成立し、窃盗と併せて処理されるため、被害額が同じでも結論は大きく違います。
量刑を分ける四つの要素
実務で見られているのは、おおよそ次の四点です。第一に手口です。無施錠の場所からの持ち出しか、ガラスを割る、鍵を壊す、道具を用意するといった行為を伴うかで、計画性の評価が変わります。第二に被害額です。ただし金額は一要素にすぎず、金額が小さくても手口が悪質であれば軽く扱われるわけではありません。第三に侵入の有無です。人が住み、または働いている空間に立ち入ったかどうかは、被害者の不安の大きさを直接左右します。第四に組織性です。複数人で見張りと実行を分ける、運搬役を用意する、転売先が確保されているといった事情は、単独の出来心とは別の評価を受けます。
統計から見える窃盗の位置
法務省『令和7年版犯罪白書』(対象年次は令和6年)によれば、窃盗の起訴率は全体で44.84%、来日外国人では52.53%であり、来日外国人の終局処理人員は3,890人でした。傷害・暴行の起訴率が来日外国人で25.69%であることと比べると、窃盗は起訴に至る割合が高い罪名です。また警察庁『令和6年における組織犯罪の情勢』によれば、来日外国人の刑法犯検挙件数13,405件のうち窃盗犯は9,103件を占めます。ここで注意すべきなのは、統計上の来日外国人が永住者や特別永住者等を含まない概念であること、そして同じ年に在留外国人数自体が大きく増えていることです。母数を無視して増減だけを取り出すと、実態を誤って読むことになります。
共犯と評価されたときに何が起きるか
警察庁の同資料によれば、令和6年中の来日外国人による刑法犯の共犯事件率は41.1%で、日本人の12.5%の約3.3倍でした。万引きに限ると来日外国人22.6%に対し日本人3.4%です。これは国籍と犯罪傾向を結び付けて読むべき数字ではありません。単身での滞在が少なく同居や同行が多いこと、言語の制約から単独で行動しにくいことなど、生活形態の違いが数字に反映されている面があります。実務上重要なのは、その場に二人以上いた場合、たとえ本人が商品に触れていなくても共謀の有無が捜査の中心になり、身柄拘束が長引きやすいという点です。共犯が疑われる事件では、供述の食い違いを恐れて接見禁止が付されることも珍しくありません。
在留資格への影響は、手口ではなく刑の重さで決まる
入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付いた場合は除かれます。万引き類型で罰金や執行猶予にとどまれば、この号によって直ちに退去強制手続に進むわけではありません。他方、侵入盗で実刑となり刑期が1年を超えれば、この号に正面から当たります。出入国管理統計(令和7年)では、4号リ単独による退去強制令書の発付は全国41人、うち中国籍11人、不法残留との並立を含めると中国籍47人で、中国籍の退令発付総数686人の6.9%を占めます。ベトナム籍の同種比率2.3%と比べて高く、国籍によって様相が異なる点は正確に押さえておく必要があります。
逮捕直後にご家族ができること
万引き類型では、被害店舗が示談に応じるかどうか、応じる場合の窓口が店舗か本部かが最初の分岐になります。侵入盗類型では、被害者の生活の平穏が害されている以上、金銭の弁償だけで処罰感情が収まるとは限らず、謝罪の届け方そのものに配慮が要ります。いずれの類型でも、ご家族には、在留カードと旅券の所在確認、被害弁償の原資の確保、身元引受人の確定、勤務先や学校への説明時期の検討をお願いしています。ご本人が何を話したのかが分からないままでは弁護方針を立てられませんので、弁護人による接見を早い段階で入れることが何より重要です。
中文版:在日本盗窃罪严重吗?顺手牵羊与入室盗窃完全不是一回事
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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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