保釈された後の生活 働けるのか、どこに住むのか、何をしてはいけないのか
2026/09/01
保釈が認められて外に出られることになったとき、ご本人とご家族がすぐに直面するのが、これから数か月をどう暮らすのかという問題です。仕事に戻れるのか、家賃はどうするのか、住む場所は自由に決められるのか、一時的に国に帰ることはできるのか。外国籍の方の場合、この問いには刑事手続の答えと入管の答えの二つがあり、両方を満たさないと生活が成り立ちません。この記事では、保釈後の就労、住まい、移動の制限、そしてやってはいけないことを、在留資格の有無で場合を分けて説明します。
まず前提。保釈は起訴された後にしか請求できない
日本には起訴前の保釈という制度がありません。保釈の請求ができるのは起訴された後です(刑訴法88条以下)。ですから、逮捕から勾留、そして起訴までの最大23日ほどの期間は、保釈で出るという選択肢がそもそも存在しません。この段階で身柄を解く方向で働きかけるとすれば、勾留に対する準抗告や、そもそも勾留を請求させない働きかけ、あるいは不起訴を目指す活動になります。逆に言えば、起訴された瞬間に保釈という新しい選択肢が生まれます。保釈保証金を納付し、住居を定め、条件を守ることを前提に、判決までの間を外で過ごすことができます。なお、保釈保証金の額は事件と資力によって裁判所が決めるもので、一律の金額はありませんし、当事務所として具体的な金額を示すことはできません。
保釈中に働けるかは、在留資格があるかどうかで分かれる
保釈それ自体は就労を禁じるものではありません。しかし、外国籍の方が日本で働けるかどうかは、刑事手続とは別に、出入国管理及び難民認定法(入管法)が決めています。就労できる在留資格を持ち、その在留期間が続いていて、資格に応じた活動をする限りにおいて働けます。問題は、勾留されている間に在留期間が満了してしまう場合です。更新の手続ができないまま期間が過ぎると、在留期間の経過という状態になり、これは入管法24条4号ロの退去強制事由に当たります。令和7年の退去強制令書発付総数7,722人のうち、4号ロ単独が5,778人と圧倒的多数を占めており(出入国管理統計)、刑事事件よりもむしろ、この期限切れが在留を失う最大の入口なのです。ですから、保釈が見えてきた段階で、在留期間の満了日と手続の状況を必ず確認してください。
資格外活動と、在留資格の取消しという別の危険
留学の在留資格で資格外活動許可を得て働いていた方が、事件をきっかけに学校を除籍された。あるいは技術・人文知識・国際業務の在留資格の方が、勾留中に会社を退職扱いにされた。こうした場合、在留資格はあるのに、その資格に対応する活動をしていない状態になります。入管法22条の4第5号は、在留資格に応じた活動を継続して三か月以上行っていないことを取消事由としています。令和7年の在留資格取消しは1,446件と過去最高で、うち第5号は350件(24.2%)でした。生活のために資格の範囲を超えて働けば、今度は資格外活動の問題になります。保釈中だからといって、入管法上の制限が緩むことは一切ありません。働けるかどうかは在留資格を確認してから判断する、これが鉄則です。
住まいは自由に選べない。制限住居と届出の二重の義務
保釈では住居が指定されます。指定された住居に住むことが条件であり、そこを離れて旅行したり、長期間別の場所に泊まったりするには、裁判所の許可が必要です。引っ越しも同様です。ここで見落とされがちなのが、入管に対する住居地の届出です。中長期在留者は住居地を届け出る義務があり、入管法22条の4第6号はその違反等を在留資格の取消事由としています。令和7年の取消し1,446件のうち第6号は999件で、全体の69.1%を占め、取消事由の中で最も多いのです。保釈で従前の住所と違う場所に住むことになった方が、刑事手続の届出だけをして入管への届出を失念する。これは非常に起こりやすく、しかも重い結果を招きます。住所が変わったら、刑事と入管の両方に届け出る。この二重の義務を覚えておいてください。
帰国はできるのか。刑事の身柄と入管の身柄は別
保釈中に一時帰国したいというご希望は非常に多いのですが、原則としてできないと考えてください。保釈は逃亡しないことを前提とした制度であり、出国は裁判所の許可なしにはできません。旅券が押収されている場合もあります。加えて、もう一つ重要な区別があります。刑事手続で保釈されることと、入管手続で身柄を解かれることは別だという点です。在留資格を失った方は、刑事の判決が確定した後、あるいは並行して、退去強制手続の中で収容されることがあります。令和6年6月10日施行の制度で監理措置があり、入管庁の統計では同年末までに監理措置決定は1,123件、監理人の九割以上が親族・知人でした。日本に頼れる親族や知人がいるかどうかが、この場面でも効いてきます。
保釈中にしてはいけないことと、家族が支えられること
してはいけないことは明確です。指定住居を無断で離れること、被害者や事件関係者に接触すること、共犯とされている人と連絡を取ること、無断で出国すること、そして新たな事件を起こすことです。条件に違反すれば保釈は取り消され、保証金も没取され得ますし、その後の情状にも響きます。ご家族が支えられることも具体的にあります。指定住居となる家を確保すること、身元引受人として監督を約束する書面を出すこと、生活費と交通費を用意すること、通院が必要なら医療機関につなぐこと、就労できる資格がある場合に受け入れ先と連絡を取ることです。判決までの数か月をどう過ごしたかは、判決の情状で必ず見られますし、その後に入管の判断を仰ぐことになった場合の資料にもなります。保釈は終わりではなく、次の手続に向けた準備期間だと考えてください。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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