接見禁止がついたとき、家族との面会だけを認めてもらう一部解除の申立て
2026/09/01
ご家族が日本で逮捕され、警察署へ面会に行ったのに窓口で「この方は接見禁止が付いています」と言われて、会えないまま帰ってきた。中国語圏のご家族から最も多くいただくご相談の一つです。この記事では、接見禁止とは何が止まっている状態なのか、弁護人だけがなぜ会えるのか、そして「家族との面会だけを認めてほしい」と範囲を限って求める一部解除という手段があること、どのような事情があれば認められやすいのか、認められた後も残る制約は何かを順に説明します。ご本人が拘束されている間、ご家族にできることは限られますが、何もできないわけではありません。
接見禁止とは、誰との面会が止まっている状態なのか
接見禁止は、裁判所が勾留の決定と併せて出す決定で(刑訴法81条)、被疑者・被告人が弁護人以外の人と面会すること、手紙や書類をやり取りすることを禁じるものです。理由は罪証隠滅のおそれ、つまり外部の人を通じて証拠を隠したり、関係者と口裏を合わせたりする危険があるという判断です。共犯者がいる事件、事実を争っている事件、組織的な形態が疑われる事件で付されやすく、外国人の事件では、国外にいる関係者と連絡が取られることを懸念して付されることがあります。時間の流れも押さえておいてください。逮捕されると、司法警察員は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求します。勾留は原則10日、やむを得ない事由があればさらに10日まで延長され、最大で20日です。接見禁止は、この勾留の期間に重なって効いてきます。
弁護人との接見だけは、接見禁止でも止められない
接見禁止が付いていても、弁護人との接見は制限されません(刑訴法39条1項)。立会人なしで、原則として時間や回数の制約なく会うことができます。つまり接見禁止下では、弁護人がご本人と外部とを結ぶ唯一の経路になります。ご本人が何を言われ、何を認め、何を否認しているのか、体調はどうか、通訳が付いているかを確認できるのは弁護人だけです。ご家族が伝えたい言葉、たとえば仕事は待っている、子どもは元気にしている、家賃は払ってあるといった生活の情報を、弁護人を通じて届けることもできます。中国語圏の方の事件では、弁護人が中国語の通訳と共に接見に入るかどうかで、伝わる情報の量がまったく変わります。
全部の解除ではなく、家族との面会だけを求める
接見禁止に対しては、決定そのものの取消しを求める準抗告という不服申立てがあります。しかし実務でより現実的なのは、対象を絞って「配偶者と両親に限って面会を許してほしい」と求める一部解除の申立てです。裁判官は罪証隠滅のおそれを個別に判断しますから、対象を全世界から特定の二、三名へ絞れば絞るほど、認める余地が生まれます。範囲の絞り方には工夫があり、面会だけを求めて手紙は求めない、一定期間に限る、事件の話をしないことを条件にする、といった限定の仕方があります。起訴されると、被告人の身分に変わり、保釈の請求と併せて接見禁止の解除を求める場面になります。起訴の前後いずれの段階でも申立ては可能で、時期を選ぶこと自体が弁護の一部です。
一部解除が認められやすいのはどのような事情か
認められやすい方向に働く事情は、おおむね次のように整理できます。第一に、面会を求める人が事件と無関係であること。共犯者でも被害者でも目撃者でもなく、事件の経緯を知る立場にないことを、具体的に示します。第二に、ご本人が事実関係を認めていて、証拠の隠滅を図る動機が乏しいこと。第三に、関係者の取調べや証拠の収集が一通り終わっていること。勾留の延長がされた後や、起訴された後は、この点を主張しやすくなります。第四に、面会を求める人が日本国内に生活基盤を持ち、身元引受人となる意思を示していること。第五に、面会の具体的な必要性です。幼い子どもがいる、家族が病気である、勤務先や学校への説明を本人の意思を確かめてから行う必要がある、といった事情は説得力を持ちます。弁護人はこれらを疎明する資料を添えます。中国のご家族の場合は、戸口簿や親族関係の公証書、在留カードや旅券の写し、勤務先の在職証明などが資料になります。これらは日本にいるご家族に用意していただくほかなく、早く動くほど間に合います。
解除が認められた後も残る制約
一部解除が認められても、自由に会えるわけではありません。面会は職員の立会いの下で行われ、時間は短く、一日の回数や同時に入れる人数にも制限があります。事件の内容に触れる会話は制止されることがあり、施設によっては、職員が内容を確認できるように日本語で話すよう求められたり、通訳の同席が必要とされたりします。中国語で自由に話せると期待して行くと戸惑いますので、あらかじめ弁護人に運用を確認しておいてください。また、面会が認められても手紙のやり取りは別に判断されますし、差し入れは面会とはまた別の枠組みです。解除は事件の進行に応じて見直されることもあります。制約は残りますが、ご本人にとって、家族の顔を一度見ることの意味は小さくありません。
ご家族が今日から準備できること
まず弁護人を選任してください。当番弁護士や国選の制度もありますが、中国語対応や入管への波及まで見据えるなら、私選で早く動く選択肢を検討する価値があります。並行して、親族関係を示す書類、日本国内の住所と連絡先、ご本人の在留カードと旅券がどこにあるかの確認を進めてください。旅券や在留カードは警察が押収していることも、自宅や勤務先に残っていることもあります。勤務先や学校にいつ、誰から、何を伝えるかも早めに決めておく必要があります。加えて、被害者がいる事件では被害弁償の原資をどう用意するかが処分を左右しますので、この点も弁護人と早く相談してください。なお、外国人が逮捕された場合、本人が要請すれば領事関係に関するウィーン条約36条1項に基づき領事機関への通報が行われます。通報を望むかどうかはご本人の判断であり、この点も接見の際に確認できます。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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