国選弁護人を中国語対応の弁護士に変えられるか。切替えの仕組みと時期の問題
2026/09/01
国選弁護人が付いたけれども、話が通じない、通訳を挟んでも要点が伝わらない、こちらの質問に答えてもらえない。中国語圏のご家族から、担当の弁護人を中国語ができる弁護士に代えたい、というご相談をいただくことがあります。結論から申し上げると、被告人が国選弁護人を自分で指名したり、気に入らないという理由だけで交代させたりすることはできません。もっとも、私選の弁護人を選任するという方法によって、実質的に担当を変えることはできます。この記事では、その仕組みと、時期によって生じる不利益を率直に説明します。
国選弁護人は、本人が選ぶ仕組みではありません
国選弁護人は、裁判所が弁護士会からの推薦などに基づいて選任します。被告人の側に、この弁護士にしてほしいという指名の権利はありません。中国語ができる弁護士が選ばれるかどうかは、その時に対応可能な弁護士がいたかどうかによります。もっとも、選任の際に中国語での意思疎通が必要である旨を裁判所に伝えておくことには意味があります。ご家族から、本人が日本語をほとんど解さないこと、通訳を介した打合せの時間が必要であることを、書面で伝えておくとよいでしょう。
解任と辞任は、本人の意思だけでは決まりません
国選弁護人の解任は、裁判所が行います。弁護人が職務を行わない、心身の故障がある、被告人との信頼関係が失われて弁護が困難になったといった事情がある場合に検討されます。単に相性が合わない、返事が遅いと感じるといった理由だけでは、解任には結びつきにくいのが実情です。弁護人の側から辞任を申し出る場合も、裁判所の判断を経ることになります。したがって、担当を変えたいときの現実的な道は、次に述べる私選への切替えです。
私選の弁護人を選任すれば、国選は終わります
被告人または一定の範囲のご家族が私選の弁護人を選任し、選任の届出が裁判所に提出されると、国選弁護人の選任は効力を失います。裁判所に対して国選をやめてほしいと申し立てるのではなく、新しい弁護人を立てることによって結果的に交代する、という順序です。本人が身柄を拘束されている場合でも、ご家族が弁護士と委任契約を結び、本人が接見の際に署名するという流れで進められます。中国にいるご家族が費用を負担する場合の手続についても、あらかじめ弁護士に確認しておいてください。
切替えの時期によって生じる不利益
ここは率直に申し上げます。交代には代償があります。
- 記録の引継ぎに時間がかかります。新しい弁護人は、検察官が開示した証拠を改めて謄写し、内容を把握するところから始めます
- 公判の期日は、弁護人が代わったからといって当然に変更されるわけではありません。準備が間に合わないという理由での期日の変更が認められないこともあります
- 示談交渉が途中の場合、被害者との関係が振り出しに戻ることがあります。被害者が弁護人の交代に不信を抱く例もあります
- 判決の直前や、審理が終わった後の段階での交代は、できることが限られます
逆に、起訴された直後や、証拠の開示を受ける前の段階であれば、交代による不利益は小さく済みます。動くのであれば早い方がよい、というのが実務の感覚です。
交代させる前に試していただきたいこと
不満の原因が、方針の違いではなく意思疎通の不足にあることは珍しくありません。まず、通訳を入れた接見や打合せの機会を求めてください。国選弁護人であっても、必要な場合に通訳を伴って接見することはできます。次に、聞きたいことを箇条書きにして書面で渡し、書面で回答を求める方法があります。ご家族が同席して説明を受ける機会を設けてもらうこともできます。それでも、事件の見通しや入管手続への影響について何も説明が得られないという状態が続くのであれば、切替えを検討する段階です。
ご家族が確認しておく事項
切替えを検討する際は、現在の期日がいつか、証拠の開示がどこまで進んでいるか、示談交渉が始まっているか、保釈の請求をしたか、この4点を把握してください。そのうえで新しい弁護士に相談すれば、交代した場合に何が得られ、何を失うかを具体的に比較できます。刑事の処分の内容が在留資格の帰趨に直結する事案では、入管手続まで見通せる弁護人であるかどうかも、判断の材料になります。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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