保釈中に入管から呼び出しが来たら。制限住居と出頭条件をどう両立させるか
2026/09/01
保釈が認められて外に出た後、出入国在留管理局(入管)から書面や電話で呼び出しを受けることがあります。刑事の裁判はまだ続いているのに入管にも行かなければならない、そもそも保釈の条件を破ることにならないか、というご相談は少なくありません。刑事手続と入管手続は別の手続として同時に進みます。この記事では、保釈に付く条件の中身、入管の呼び出しにどのような種類があるか、裁判所への事前の届出をどう行うか、そして当日の受け答えが刑事の裁判に跳ね返る仕組みを説明します。
結論として、どちらも放置できません
保釈の条件に違反すれば保釈が取り消され、納めた保証金の全部または一部が没取されるおそれがあります。他方、入管の呼び出しに応じなければ、在留資格の取消しや退去強制の手続が本人の言い分を聞かないまま進むことになります。どちらか一方を優先して他方を無視するという選択肢はありません。実務上は、入管の期日を先に確認し、それに合わせて裁判所へ事前の届出や許可の申立てを行う、という順番で調整します。
保釈に付く条件を正確に把握する
保釈の許可決定には、通常いくつかの条件が付きます。代表的なものは次のとおりです。
- 制限住居。決められた住所に居住し、そこを生活の本拠とすること
- 指定された期間を超えて住居を離れる場合や旅行をする場合に、あらかじめ裁判所の許可を得ること
- 共犯者、被害者、事件の関係者と接触しないこと
- 裁判所から呼び出しを受けたときに出頭すること
問題になりやすいのは二つ目です。入管の地方局は住所地から遠いことがあり、日帰りできない距離であれば、住居を離れる許可が必要になります。決定書の文言を弁護人と一緒に読み、何日以上の外出が許可の対象になるのかを確認しておいてください。
入管からの呼び出しには複数の種類がある
ひとくちに入管からの呼び出しといっても、法的な意味はまったく違います。少なくとも次の区別を押さえてください。第1に、退去強制事由があるかどうかを調べる違反調査への呼び出し。第2に、在留資格の取消しに向けた意見聴取の通知。第3に、在留期間の更新や在留資格の変更の申請について、追加の資料や説明を求める連絡。第4に、在留カードの記載事項の届出など事務的な手続です。第2の意見聴取は、期日に出て意見を述べる機会そのものが法律で保障されている場面ですから、欠席すると本人にとって不利に働きます。届いた書面の表題と発出した部署を弁護人に伝えれば、どの手続なのかを見分けられます。
裁判所への事前の届出と弁護人の役割
入管へ出頭する日が決まったら、日付、行き先の官署名、出発と帰宅の予定、同行者を書面にして、あらかじめ裁判所に届け出るか、住居を離れる許可を求めます。事後に報告するのではなく、事前に出すことが大切です。この一手間は、保釈の条件を守っているという実績にもなり、万一その後に保釈の取消しが問題となったときの説明材料にもなります。弁護人が同行できる場合は、同行することを届出に書きます。入管の手続には弁護人が代理人として関与できる場面があり、当日その場で判断を迫られる事態を避けられます。
旅券と在留カードが手元にない場合
刑事手続の中で旅券が押収されたままになっていることや、逃亡のおそれを下げるために弁護人へ預けていることがあります。入管の窓口では身分事項の確認が求められますので、旅券の所在と、預けている場合はその経緯を説明できるようにしておきます。在留カードの有効期間が刑事手続の途中で切れることもあります。身柄拘束や公判の日程を理由に手続が遅れる場合でも、放置せずに事情を記録に残しておくと、後の判断で説明ができます。
当日の受け答えは刑事裁判にも影響します
入管の違反調査で述べたことは調書になります。そこで刑事事件の内容について事実と異なる説明をしてしまうと、後に刑事の法廷で供述の一貫性を問われかねません。逆に、刑事で争っている点について入管の調書で不用意に認める記載をすれば、量刑の判断に影響することもあります。何を聞かれるのかを事前に弁護人と整理し、通訳の手配を確認したうえで臨んでください。ご家族は、当日の交通手段、同行者、帰宅時刻の連絡方法をあらかじめ決めておくと安心です。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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