外国人は保釈が通りにくいと言われる理由と、その評価を崩すための準備
2026/09/01
「外国人だから保釈は無理だ」という話を、中国語圏のご家族はよく耳にされます。実際、弁護人の側から見ても、外国籍の方の事案で逃亡のおそれが強く指摘される場面は多くあります。しかし、この話は二つの点で正確ではありません。第一に、国籍別の保釈の統計は公表されておらず、数字で裏づけられた話ではないこと。第二に、実際に問題にされているのは国籍そのものではなく、生活の基盤と出国の可能性という具体的な事情であることです。この記事では、何が評価されているのかを分解し、それぞれに対して何を用意できるかを示します。
まず、国籍別の保釈率は公表されていません
ここは正直に申し上げます。検察統計には、国籍と勾留・保釈のクロス集計は存在しません。したがって、「外国人の保釈率は日本人より低い」ということを、公的な統計を出典として示すことはできません。参考になるのは、全国籍を対象とした数字です。令和6年の検察統計によれば、逮捕後の措置の総数100,738件のうち、勾留の許可は91,358件、却下は4,154件で、勾留請求に対する許可率は95.7%となります(公表数値からの計算値)。身柄の拘束が容易に解かれないという傾向は、国籍を問わず存在します。「外国人だから駄目だ」という言い方は、実務感覚としては語られますが、根拠を示せる主張ではありません。ですから、あきらめる理由にもなりません。
それでも通りにくいと言われる理由
実際に評価されているのは、逃亡のおそれと罪証隠滅のおそれです。逃亡のおそれについて、裁判所は次のような点を見ます。日本に生活の基盤があるか。帰るべき住居があるか。仕事や学業が続くか。日本に家族がいるか。出国できる状態にあるか。母国に生活の拠点が残っているか。国籍そのものが問題なのではなく、これらの事情が外国籍の方の場合に不安定になりやすいのです。たとえば、寮に住んでいて契約名義が会社になっている、家族はすべて中国にいる、旅券を手元に持っている、といった事情が重なると、逃亡のおそれが高いと評価されやすくなります。逆に言えば、一つ一つを具体的な資料で埋めていくことができます。
在留資格の安定性が判断に影響します
在留資格は、日本にとどまる法的な根拠ですから、その安定性は逃亡のおそれの判断に影響します。永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者は、入管法の別表第二に定められた身分または地位に基づく在留資格で、活動に制限がなく、在留の基盤は比較的安定しています。出入国在留管理庁の在留外国人統計によれば、令和7年末の中国籍の在留者930,428人のうち、永住者357,565人、日本人の配偶者等26,617人、永住者の配偶者等21,762人、定住者32,047人で、合計437,991人、約47.1%がこの層に当たります。他方、留学、技術・人文知識・国際業務、技能実習などの別表第一の在留資格は、活動が続いていることが前提であり、勾留が長引けば在留の基盤自体が揺らぎます。保釈の準備は、在留資格の維持と切り離せません。
身元引受人をどう選ぶか
身元引受書は、誰が書いても同じというものではありません。評価されるのは、その人が実際に本人を監督できる立場にあるかどうかです。同居している配偶者や親、雇用を継続する意思のある勤務先の代表者、学校の関係者などが典型です。書面には、本人との関係、いつからの付き合いか、保釈後にどこに住まわせるか、生活費をどう負担するか、裁判所への出頭にどう同行するか、事件関係者と接触させないためにどう監督するかを、具体的に書いていただきます。中国におられるご家族の陳述書も無意味ではありませんが、日本にいる方の身元引受書が中心になります。日本に監督者がいない場合は、その点をどう補うかを弁護人と相談してください。
住居と就労先の資料をどう揃えるか
住居については、賃貸借契約書、家賃の支払記録、会社の寮であれば入居を認める会社の書面が必要です。契約名義が本人でない場合は、名義人の同意書を用意します。就労については、雇用契約書、直近の給与明細、そして最も重要なのが、事件を認識したうえで雇用を継続する意思があるという勤務先の書面です。学生の場合は、在学証明と、学籍が維持されていることを示す書類です。これらは同時に、後の在留手続でも必要になります。なお、在留カードの住居地の届出義務違反は在留資格の取消事由(入管法22条の4第6号)とされ、令和7年の取消し1,446件のうち69.1%がこの事由でした。住所の整理は、刑事と入管の双方で同じ意味を持ちます。
出国の可能性を下げる工夫
旅券を弁護人が預かるという申出は、実務でよく用いられます。出国の物理的な可能性を下げ、逃亡のおそれが小さいことを具体的に示すためです。あわせて、定期的に弁護人へ連絡する、住居を離れる際は事前に届け出る、事件関係者と連絡を取らないといった約束を、守れる内容として提示します。守れない約束を並べても意味がありません。むしろ、実行可能な範囲で具体的に約束し、実際に守り続けることが、公判が続く間の信用につながります。
保釈が却下されたあと
一度却下されても、そこで終わりではありません。却下の決定に対しては不服を申し立てることができますし、事情が変われば改めて請求することもできます。証拠調べが進んで関係者の尋問が終われば、罪証隠滅のおそれは小さくなります。被害弁償が整えば、事情は変わります。身元引受人が新たに見つかれば、それも変化です。実務では、二度目、三度目の請求で認められる例が現にあります。ご家族としては、却下された理由を弁護人から正確に聞き取り、その理由に対応する資料を一つずつ足していくことが、最も堅実な進め方です。
中文版:外国人在日本保释真的更难吗?逃亡之虞的评价结构与如何补强材料
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------