身柄拘束中に在留期限が切れる。更新に行けないまま何が起き、釈放後に何をするか
2026/09/01
逮捕・勾留が長引くと、その間に在留期限が来てしまうことがあります。ご本人は留置施設から出られず、更新の申請に行けません。ご家族から「代わりに行けば良いのか」「期限が切れたら不法滞在になるのか」「釈放されたらまず何をすべきか」というご相談を受けます。結論から言えば、身柄拘束中に期限が切れること自体は珍しくなく、それだけで在留の道が閉ざされるわけではありません。ただし、釈放後の最初の一手を誤ると、選べたはずの選択肢が消えます。この記事では、期限切れの法的な位置づけと、釈放後にとるべき手順を具体的に説明します。
在留期間の更新は本人の出頭が原則で、身柄拘束中は事実上できません
在留期間の更新許可申請は、期間満了のおおむね3か月前から、本人が地方出入国在留管理局に出頭して行うのが原則です。弁護士や行政書士のうち届出をした申請取次者が書類を提出する制度もありますが、これは本人が出頭できない場合に代わりに手続をする仕組みであって、申請が受理され、許可されることを保証するものではありません。身柄を拘束されている状態では、そもそも在留資格に応じた活動を現に行っていないため、更新の必要性を説明することが難しく、実務上は受理や許可のハードルが高くなります。したがって、更新できないまま期限が経過することは、この局面では起こりうることとして受け止めたうえで、次の段取りを考えることになります。
期限が切れると法的にはどうなるか
在留期間を過ぎて日本に残っている状態は、不法残留です。入管法24条第4号のうち不法残留を定める規定に当たり、退去強制事由になります。同時に、不法残留は刑罰の対象でもあり、入管法70条1項5号により、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科と定められています。ただし、実務上、勾留中に期限が経過したという事情は、自ら選んで逃げ隠れしていた事案とは評価が異なります。統計を見ても、令和7年の退去強制令書発付7,722人のうち、不法残留を理由とするものが5,778人と圧倒的多数を占めており(出入国管理統計第57表)、不法残留は入管が最も日常的に処理している類型です。だからこそ、どのような経緯で期限が切れたのかを説明できる材料を残しておくことが重要になります。
刑事手続が終わる前に期限が切れた場合の実際の流れ
実際には、刑事手続が先に進み、その終わり際に入管が動くという順序になることが多くあります。不起訴になった場合や、執行猶予付きの判決を受けた場合、刑事施設や留置施設から釈放される際に、入管の職員が待っていて、収容令書によって身柄が入管に引き継がれるという流れが典型です。ここで刑事事件が終わったから安心、とはなりません。刑事手続と入管手続は別の線路であり、刑事の結論が出た瞬間から入管の手続が動き出します。弁護人が刑事と入管の両方を見ていれば、釈放の日を見越して主張の準備をしておくことができます。
釈放後に最初にすべきことは、速やかな出頭申告です
もし入管に引き継がれることなく釈放された場合、次にすべきことは、自ら地方出入国在留管理官署に出頭して事情を申告することです。これには明確な法的な意味があります。第一に、在留特別許可のガイドライン(令和6年3月改定、同年6月10日施行)は、その他の事情として「不法滞在を申告するため自ら地方出入国在留管理官署に出頭したこと」を積極要素として明記しています。第二に、出国命令の要件は、違反調査の開始前に自ら出頭したか、開始後であったかで分かれます。第三に、上陸拒否期間にも差が出ます。出国命令によって出国した場合は1年、違反調査開始後に出国意思を表明して出国命令を受けた者が短期滞在で来ようとする場合は5年、退去強制で前歴がない場合は5年、前歴がある場合は10年です。摘発されてから動くのか、自ら出頭するのかで、その後何年日本に来られないかが変わります。
在留特別許可を求められるのはいつからか
在留特別許可の申請権は、いつでも生じるわけではありません。入管法50条2項により、収容令書によって収容された外国人、または監理措置決定を受けた外国人に申請権が生じます。それ以前の段階では、職権の発動を求める活動という位置づけになります。また、同条3項により、退去強制令書が発付された後は申請できません。つまり、時期を逃すと、法律上の申請という形が取れなくなります。なお、令和6年6月10日に始まった監理措置については、施行から同年末までに1,123件の決定があり、監理人の9割以上は親族や知人であったと公表されています。収容されずに手続を進める道があることは、ご家族にとって重要な情報です。
ご家族が今のうちに揃えておく資料
期限が切れる前後で必要になる資料はおおむね共通しています。旅券と在留カード(警察が領置していることが多いので所在を確認します)、これまでの在留に関する資料、賃貸借契約書、雇用契約書または在学証明、納税と社会保険の納付を示す資料、日本にいる家族の関係を示す資料、そして家族の陳述書です。在留特別許可の判断では、入管法50条5項が考慮要素を法定しており、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、法的地位、退去強制の理由、人道的配慮といった点が見られます。逆に言えば、これらを裏づける資料を、身柄拘束中のうちにご家族が集めておくことができます。長期化はガイドライン上も消極要素とされていますから、動き出しは早いほど良いというのが実務の感覚です。
中文版:被羁押期间在留期限到期,无法去入管更新怎么办?释放后第一件事做什么
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------