逮捕は会社や学校に知られるのか。中国籍の方のご家族が最初に判断すべきこと
2026/09/01
ご家族が日本で逮捕されたとき、中国語圏のご相談で最も早い段階に出てくるお尋ねの一つが「会社や学校に知られてしまうのか」です。仕事を失えば就労資格の土台が崩れ、学校を除籍されれば「留学」の在留資格そのものが揺らぎます。刑事処分の見通しが立つ前に職や学籍を失うことは、身柄の解放にも、その後の量刑にも不利に働きます。この記事では、逮捕の事実がどの経路で勤務先や学校に伝わるのか、実名で報道されるのはどのような場合か、説明をするならいつ、誰が、どこまで話すのが良いのかを、在留資格への波及まで含めて整理します。
結論として、警察や検察が勤務先や学校へ自動的に通知する仕組みはありません
まず結論から申し上げます。日本の刑事手続には、人を逮捕したことを勤務先や学校へ知らせる一般的な通知制度はありません。捜査機関が身柄拘束の事実を外部に伝えることが制度として予定されているのは、本人が希望した場合の領事機関への通報(領事関係に関するウィーン条約36条1項)など、限られた場面です。したがって「逮捕された翌日に会社へ電話がいく」というものではありません。もっとも、通知制度がないことと、知られないこととは別です。実務では、次に述べる三つの経路のいずれかによって、遅かれ早かれ伝わることが多いのが現実です。
知られる経路は主に三つあります
第一は報道です。第二は捜査そのものです。捜査機関は被疑事実の裏付けのために、勤務先へ聞き込みに行き、社員寮や事務所を捜索し、パソコンや帳簿を押収することがあります。事件が業務に関係する場合は、この経路で会社が最初に知ることになります。第三が、実際には最も多い経路である「本人からの連絡が突然途絶えること」です。逮捕から検察官への送致まで48時間、勾留請求まで逮捕から72時間、勾留は原則10日で、さらに10日まで延長されます。合計すると、20日を超えて連絡が取れない状態が続きます。無断欠勤や無断欠席がその間ずっと続けば、会社も学校も当然に事情を調べ始めます。
実名で報道されるのはどのような場合か
報道するかどうかは各報道機関の判断であり、法律で決まっているわけではありません。被害が大きい事件、社会的な関心が高い事件、公務員や資格職が関わる事件は報道されやすく、一方で日々起きている多くの事件は報道されません。中国籍の方の事案では、日本語の報道が在日中国人向けの中国語メディアやSNSに転載され、そこから勤務先や同郷のコミュニティに広がるという経路もあります。ここで強調しておきたいのは、報道された段階では起訴も有罪も確定していないということです。逮捕は捜査の一段階にすぎず、被疑者には無罪推定が及びます。会社や学校に対しても、この点は正確に伝える必要があります。
会社にはいつ、誰が、どこまで説明するのが良いか
説明の時期は、本人の意思と就業規則の二つで決まります。多くの就業規則は、無断欠勤が一定期間続いた場合を懲戒や退職扱いの事由としています。したがって、何も言わずに沈黙を続けることが最も危険です。他方で、事実関係が固まらない段階で家族が詳細を語ってしまうと、後に本人が述べる内容と食い違い、かえって不利になります。実務上は、弁護人が選任された後に、本人の同意を得たうえで、事件の中身には立ち入らず「刑事手続により身体を拘束されており、復帰の時期は現時点では未定である」という限度で伝える方法が取られます。有給休暇や欠勤の扱い、社会保険の継続、給与の振込先の確認など、手続的な事項に話題を絞ると、感情的な対立を避けやすくなります。
学校への説明は在留資格と直結します
留学生の場合、学校への説明は単なる社会的な問題ではなく、在留資格そのものの問題です。出席が途切れて除籍や退学に至ると、「留学」の在留資格に応じた活動を行っていない状態になります。入管法22条の4第5号は、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていない場合を在留資格取消しの事由としています。出入国在留管理庁の統計では、令和7年の在留資格取消しは1,446件と過去最高で、そのうち留学が343件(23.7%)を占めます。休学の手続によって学籍を維持できないか、復学の可能性があるか、留学生担当の部署と早い段階で相談することが重要です。なお、住居地の届出義務違反も取消事由(同条第6号)とされており、令和7年の取消しの69.1%がこれに当たります。身柄拘束中に住居を引き払う場合は、この点にも注意が必要です。
ご家族が今日できる準備
今日のうちに手をつけられることは具体的にあります。第一に、旅券と在留カードの所在の確認です。逮捕時に警察が領置していることが多く、その場合は弁護人を通じて確認できます。第二に、雇用契約書、賃貸借契約書、学生証や在籍証明、健康保険証の写しを一か所にまとめることです。これらは後に勾留に対する準抗告や保釈の際、生活の基盤があることを示す資料になります。第三に、会社や学校へ伝える文面を、弁護人と相談したうえで用意することです。第四に、被害のある事件では、被害弁償の原資をどう確保するかを早めに検討しておくことです。示談ができるかどうかは、起訴されるか否かの判断に影響します。来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48.35%(法務省『令和7年版犯罪白書』、対象年次は令和6年)であり、起訴前の段階でできることは決して小さくありません。
中文版:在日本被逮捕后,公司和学校会知道吗?什么时候知道,家属该怎么说明
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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