弁護人を通じて本人に伝言できますか。伝えられることと伝えられないこと
2026/09/01
ご家族が逮捕され、面会もできない状況で、多くの方が「弁護士さんから本人に伝えてもらえないか」とお考えになります。答えは、できます。ただし何でも伝えられるわけではありません。弁護人は伝言を運ぶだけの役ではなく、ご本人を守る立場にあるため、伝えることが本人の不利益になる内容は、そもそも伝えません。この記事では、弁護人を通じて伝えられること、伝えられないこと、そして伝え方の工夫を説明します。ここを理解しておくと、限られた接見の時間を有効に使えます。
なぜ弁護人だけが会えるのですか
身柄を拘束された方が弁護人と接見する権利は、刑事訴訟法39条1項が保障しています。立会人なしで会うことができ、接見禁止(同法81条)が付いている場合でも、弁護人との接見は制限されません。ご家族との面会や手紙が止まっている状況で、外と中をつなげるのは弁護人だけということが現実に起こります。逆に言えば、弁護人がいなければ、ご本人は完全に孤立します。逮捕から起訴・不起訴が決まるまでは、勾留の延長を含めても最長20日ほどです。この短い期間に何を伝え、何を確認するかが、その後を左右します。
伝えられること
次のような内容は、ご本人の支えになり、弁護活動にも役立ちます。
- 生活が崩れていないという事実:住まいが確保されている、家賃が払われている、家族が健康である、子どもが学校に通っている、といった具体的な情報。
- 勤務先・学校の状況:解雇されたのか、休職扱いなのか、いつまで待ってもらえるのか。身元引受けや今後の生活設計に直結します。
- 身元引受けの意思:家族が引き受ける用意があること、住居を提供できること。
- 被害弁償の原資の見込み:金額の交渉は弁護人が行いますが、家族としてどこまで用意できるかという情報は不可欠です。
- 健康と薬の情報:持病、服用している薬の名称、アレルギー。施設の医療につなぐために必要です。
- 手続に関する質問:本人が知りたいこと、家族が知りたいことを、あらかじめ書き出して弁護人に渡しておくと、接見の時間が有効に使えます。
伝えられないこと
一方で、次のような依頼は弁護人が取り次ぐことはできません。第一に、供述をこう変えてほしい、こう言ってほしいという指示。第二に、共犯者やその家族との連絡の仲介。第三に、証拠となる物や記録をどうするかという相談。第四に、被害者に直接接触するための連絡先の取得。これらは罪証隠滅につながる行為であり、取り次げば弁護人自身が問題を問われますし、何より、ご本人の身柄の判断を悪化させます。実際、罪証隠滅のおそれは、勾留を続けるかどうか、接見禁止を付けるかどうかの判断で中心になる要素です。ご家族としては「本人を助けたい」一心での依頼であっても、結果として本人を長く拘束させる方向に働いてしまいます。
本人から家族へ伝えてもらえること
逆方向の伝言も重要です。ご本人しか知らない情報が、外の生活を維持するために必要になることがあります。たとえば、家の鍵の場所、家賃の引き落とし口座、勤務先の連絡先、旅券と在留カードをどこに置いたか、携帯電話が押収されているかどうか、といった事柄です。特に旅券と在留カードの所在は、この後の入管手続で問題になります。また、ご本人がどのような処分を望んでいるのか、日本に残りたいのか、早く帰国したいのかという意思は、方針を決めるうえで最も重要です。ご家族の希望と本人の意思が食い違っていることは珍しくありません。弁護人はここを確認します。
伝え方の工夫
接見の時間は限られています。効果的なのは、伝えたいことを箇条書きにして、優先順位を付けて弁護人に渡すことです。長い手紙よりも、五つの短い項目のほうがよく伝わります。感情的な言葉、責める言葉は避けてください。拘束されている方は、外の家族に見捨てられることを最も恐れています。「待っている」「住むところはある」という一言が、取調べでの態度を落ち着かせ、結果として供述の安定につながることもあります。なお、中国語での接見では通訳の有無が伝わり方を大きく左右します。中国語の通訳が同席できるかどうかを、依頼の段階で確認してください。
今日からご家族ができること
第一に、弁護人を決めることです。まだいなければ当番弁護士を呼ぶ制度があり、勾留後は国選弁護人を請求できます。中国語の対応と、刑事の後に続く入管手続まで見通した対応を求めるのであれば、私選という選択肢もあります。第二に、伝えたいことと聞きたいことを紙に書き出してください。第三に、生活を維持するための実務、すなわち家賃、公共料金、携帯電話の契約、学校や勤務先への連絡を整理してください。第四に、旅券と在留カードを探しておいてください。これらは、伝言よりもむしろ、後の手続で効いてきます。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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