刑事手続と入管手続は別々に進む 二本のレールを同時に見るということ
2026/09/01
日本で刑事事件の当事者になった外国籍の方にとって、最も見落とされやすいのが、刑事手続と入管手続がまったく別の役所によって、別の基準で、別の時間軸で進むという事実です。刑事の裁判が終わってほっとしていたところへ、出入国在留管理庁から呼出しが来る。あるいは、刑事は不起訴になったのに在留期間の更新が通らない。この記事では、この二本のレールがどう関係し、どこでずれ、どちらを先に手当てすべきなのかを整理します。
二つの手続はどこが違うのか
刑事手続は、警察と検察庁が捜査し、裁判所が有罪か無罪か、刑をどうするかを決める手続です。入管手続は、出入国在留管理庁が、その人を日本に在留させるかどうかを判断する行政の手続です。判断する機関も、適用される法律も、証明の程度も違います。したがって、刑事で不起訴になったからといって在留が保証されるわけではなく、逆に、有罪判決を受けたからといって直ちに退去強制になるとも限りません。二つを一本の線で考えることが、最初の誤りです。
刑事の処分がどう入管の判断材料になるのか
出入国管理及び難民認定法(入管法)は、退去強制事由を24条に列挙しています。刑事事件との関係で重要なのは次の四つです。第一に、24条4号チ。覚醒剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律などに違反して有罪となった場合で、有罪判決があれば足り、罰金でも執行猶予でも該当します。在留資格の種類も問いません。第二に、24条4号リ。無期または1年を超える拘禁刑に処せられた場合ですが、ただし書により全部執行猶予は除外されます。「執行猶予でも該当する」という説明は誤りです。第三に、24条4号の2。別表第一の在留資格で在留する方に限られる特定の犯罪で、危険運転致死傷などが含まれます。第四に、24条3号の4。不法就労助長は、刑事処罰を受けていなくても行為があれば該当します。
「刑事事件を起こすと強制送還」は正確ではない
出入国在留管理庁の出入国管理統計(令和7年)によれば、退去強制令書が発付された7,722人のうち、不法残留(24条4号ロ)が5,778人と圧倒的多数を占め、単独の4号チ(薬物)は86人、単独の4号リ(1年超の実刑)は41人、4号の2は49人にすぎません。刑事事件を起こせば直ちに送還されるという理解は、統計の実際とは異なります。ただし国籍によって様相は異なります。同統計で中国籍の退令発付は686人、うち4号リは単独11人に不法残留との並立36人を加えて47人で、全体に占める割合は6.9%です。ベトナム籍の2.3%に比べて約3倍にあたり、中国籍については実刑の重みが相対的に大きく現れています。
在留資格の取消しという別のルート
退去強制まで至らなくても、在留資格そのものが取り消されることがあります。入管法22条の4は、在留資格に応じた活動を継続して三か月以上行っていないこと(第5号)や、住居地の届出義務違反等(第6号)を取消事由としています。刑事事件で長期間身体を拘束されれば、勤務も通学も止まりますし、届出も滞ります。同庁の統計では、令和7年の在留資格取消件数は1,446件と過去最高で、そのうち第6号が999件、69.1%を占めました。刑事事件そのものとは別に、身柄拘束の副作用としてこのルートが動き出すことがあるのです。
時期のずれをどう扱うか
刑事が先、入管が後、というのが基本の順序です。捜査中は在留の判断が保留され、刑事の処分が確定してから入管が動くことが多くあります。実刑判決を受けた場合には、服役が終わってから退去強制手続に入るのが通例です。他方で、身体拘束中に在留期限が到来する、更新申請の時期が来るといった形で、入管の時計だけが先に進むこともあります。この二つの時計の速さが違うことを前提に、それぞれの期限を紙に書き出して管理してください。
どちらを先に手当てするのか
実務の答えは明快です。まず刑事です。理由は、入管の判断材料になるのが刑事の結果だからです。不起訴になれば、有罪判決を前提とする退去強制事由は生じません。罰金で済むか実刑になるか、実刑の期間が1年を超えるかどうかで、24条4号リの適用が変わります。したがって、刑事の段階から入管を見据えて、示談書、贖罪寄付の受領証、勤務先の上申書、家族の陳述書、再発防止の計画といった資料を残しておくことが決定的に重要です。これらは後の在留特別許可の手続でそのまま使えます。
それでも退去強制手続に進んだ場合
退去強制手続に入っても、在留特別許可という道があります。入管法50条は、その考慮要素を法律上明示しており(同条5項)、また収容令書により収容された方や監理措置決定を受けた方には申請権が生じます(同条2項)。同庁の統計では、令和7年の在留特別許可は審査段階824人、口頭審理段階29人、異議申出段階177人の合計1,030人でした。退去強制令書発付7,725人と対比すれば決して多くはありませんが、許可が現に出ていることは事実です。なお、在留特別許可の国籍別の内訳は公表されていませんので、中国籍の許可件数を示すことはできません。
ご家族が今日から整理すべきこと
在留カードと旅券の所在、在留資格の種類と在留期限、住居地の届出が最新かどうか、勤務先や学校への説明の段取り、被害弁償に充てられる資金、日本にいる家族の状況。この六つを一枚の紙にまとめてください。刑事の弁護人と入管の手続を別々の窓口に頼むと、この情報が二重に必要になり、時間を失います。刑事と入管を続けて見られる体制を早い段階で作ることが、結局は最短の道になります。
中文版:中国人在日本涉案后,刑事程序与入管程序是两条并行的线
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------