認めるか争うかで身体拘束の期間はどう変わるのか 日本の現実
2026/09/01
「認めれば早く出られると言われた」。取調べを受けている方から、しばしばこの言葉を聞きます。日本の身体拘束の運用には、確かに、争う姿勢を示すと拘束が長引きやすいという構造があります。しかし、その構造を理由に事実と違う供述をすれば、後から取り返しがつきません。この記事では、認めるか争うかで身体拘束の期間がどう変わるのか、なぜそうなるのか、そして争うべき事案で早期釈放を目指すにはどの道筋があるのかを説明します。
身体拘束の期間はどう決まるのか
逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官へ送り、検察官は24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求します。勾留は原則10日、やむを得ない事由があるときはさらに10日まで延長され、最長で合計20日です。起訴されれば起訴後の勾留に移り、そこから保釈を請求できます。起訴前に保釈を求める制度は日本にはありません。したがって、起訴前の身体拘束を短くする方法は、勾留を請求させないこと、勾留請求を却下させること、勾留決定に不服を申し立てること、勾留の延長をさせないこと、この四つに限られます。
否認するとなぜ長引くのか
勾留の要件には、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること、逃亡すると疑うに足りる相当な理由があることが含まれます。事実を争えば、供述の変遷や関係者への働きかけの可能性を指摘され、罪証隠滅のおそれがあると主張されやすくなります。共犯者がいる事件では、さらに接見等禁止が加わります。他方、事実を認め、被害弁償が済んでいる事件では、隠滅すべき証拠が乏しいと評価され、早い段階で釈放されることがあります。これが「認めれば早い」と言われる実態です。
それでも虚偽の自白をしてはならない
身体拘束を短くするためだけに事実と違う供述をすると、その供述が調書として残り、公判ではその調書を前提に審理が進みます。後から「本当は違う」と述べても、変遷の理由を説明しなければならず、立場はかえって不利になります。加えて、外国籍の方にとって、有罪判決の内容はその後の在留資格の判断に影響します。目先の数日を縮めるために、その後の何年かを失うことがあり得るのです。方針の決定は、必ず弁護人と行ってください。
統計から見た勾留の現実
検察統計(令和6年、全国籍)によれば、逮捕後の措置の総数100,738人のうち、勾留の許可は91,358件、却下は4,154件でした。ここから計算すると、勾留請求に対する許可率は95.7%となります。これは計算値であり、また国籍別の内訳は公表されていませんので、「外国人は勾留されやすい」ということを公的統計で示すことはできません。それでも、勾留請求がなされればほとんど認められるという傾向は明らかで、だからこそ、請求される前の段階で弁護人が意見書を出すことに意味があります。
争う事案で早期釈放を目指す道筋
第一に、勾留請求の前に、検察官と裁判官に対して意見書を提出することです。住居が定まっていること、勤務先や学校があること、家族が日本にいること、旅券を弁護人に預けること、出頭を約束することを、資料とともに示します。第二に、勾留が決定された場合には、準抗告という不服申立てを行います。第三に、勾留延長の請求がなされる段階で、延長の必要がないことを主張します。第四に、起訴された場合には直ちに保釈を請求します。いずれも時間との勝負であり、逮捕された直後に弁護人が動き出せるかどうかで結果が変わります。
そろえるべき資料
身元引受書は、日本に住む家族、配偶者、勤務先の上司などに書いてもらいます。住居の賃貸借契約書、在留カードの写し、勤務先の在職証明書や学校の在学証明書、給与明細、納税や社会保険の状況を示す書面が有効です。被害者のいる事件では、弁償に充てられる資金の存在を示すことが決定的な意味を持つことがあります。これらは本人が留置場から集めることはできません。ご家族が用意する以外にありません。
起訴猶予という着地点
身体拘束の期間と並んで大切なのが、最終的にどのような処分を得るかです。法務省『令和7年版犯罪白書』によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴率は44.28%、起訴猶予率は48.35%でした。約半数が起訴猶予、すなわち不起訴となっています。起訴されなければ、有罪判決を前提とする退去強制事由の問題は生じません。争うべきところは争いつつ、被害弁償や環境の整備によって起訴猶予を目指すという設計が、外国籍の方の事件では特に重要になります。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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