身柄を拘束されている間に帰国できるのか 旅券が手元にない状態の意味
2026/09/01
「日本で拘束されている家族を、とりあえず中国に帰らせることはできないのか」というご相談をよくいただきます。結論から申し上げると、刑事事件で身柄を拘束されている間に出国することはできません。そして、帰国できる段階が来たときに、それが自分で帰るのか、送還されるのかによって、次に日本へ入れるかどうかが大きく変わります。この記事では、旅券が手元にない状態の意味と、帰国の道筋を整理します。
結論 刑事の身柄拘束中に帰国はできない
逮捕・勾留は、捜査と裁判のために身柄を確保する制度ですから、その間に本人が国外へ出ることは想定されていません。起訴された後に保釈が認められた場合でも、裁判に出頭する義務がありますので、自由に出国できるわけではありません。ご家族が航空券を用意しても、迎えに来ても、手続の上では意味を持ちません。まず必要なのは、刑事手続をどこで終わらせるかを決めることです。
旅券が手元にない状態の意味
逮捕された方の旅券は、いくつかの経路で本人の手を離れています。事件との関係で証拠として押収されている場合、施設に領置されて保管されている場合、勤務先や知人が預かっている場合です。どの状態にあるかによって、返ってくる時期が変わります。押収されているものは、捜査や裁判で必要がなくなった段階で戻ります。施設に保管されているものは、身柄が解かれるときに返還されます。いずれにしても、ご家族が窓口で「返してほしい」と申し出て直ちに返るものではありません。他方で、旅券が手元にないという事実は、逃亡のおそれが小さいことを示す事情でもありますので、勾留を争う場面ではむしろ使える材料になります。
帰国できる段階はいつ来るか
大きく分けて四つの場面があります。第一に、不起訴となって釈放された場合です。この段階で在留資格が有効に残っていれば、通常の出国として帰国できます。第二に、罰金の略式命令を受けて納付を終えた場合です。第三に、執行猶予の付いた判決を受けて釈放された場合です。第四に、刑を終えた場合です。ただし、第二から第四の場面では、刑事手続が終わった後に入管の手続が始まることがあり、その場合には自分の判断だけで帰国の時期を決められなくなります。
自分で帰るのと送還されるのとでは何が違うのか
ここが最も重要な分かれ道です。在留資格が有効なうちに自ら出国するのと、退去強制の手続に乗って送還されるのとでは、その後日本に入国できるまでの期間が違います。出入国管理及び難民認定法(入管法)は、退去強制を受けて出国した方について、前歴のない場合は5年、前歴のある場合は10年の上陸拒否期間を定めています。他方、出国命令の手続によって自ら出国した場合の上陸拒否期間は1年です。この差は非常に大きいものです。さらに、薬物に関する法令違反で刑に処せられた方については、期間の定めのない上陸拒否の対象となり、罰金であっても該当します。この場合、再び日本に入るには特別の許可を得るほかありません。「とりあえず帰ればまた来られる」という理解は、罪名によっては誤りです。
帰国を急ぐことが不利になる場面
ご家族は一日でも早く帰国させたいと考えますが、急ぐことが将来を狭めることがあります。たとえば、不起訴を得られる見込みがある事件で、争わずに早く終わらせようとして事実を認めてしまうと、有罪の記録が残り、在留資格の更新にも将来の入国にも影響します。また、在留資格を持ったまま出国できる可能性がある場合に、退去強制の手続に乗ってしまうと、上陸拒否期間が5年になります。どの出口から出るかは、帰国の日付よりもはるかに重い問題です。参考までに、出入国管理統計(令和7年)によれば、退去強制令書の発付を受けた方は7,722人で、うち中国籍は686人でした。一方で、在留特別許可は同じ年に合計1,030人に与えられています。出口は一つではありません。
ご家族が今準備できること
帰国の可否は、刑事の処分と在留資格の状況の両方で決まりますから、今できるのは材料をそろえることです。在留カードと旅券の所在、在留資格の種類と満了日、これまでの出入国の履歴、過去に日本で処分を受けたことがあるかどうか、中国側の住所と家族構成。これらを整理しておけば、弁護人は刑事の見通しと入管の見通しを同時に立てることができます。刑事事件と入管手続は別の制度ですが、実際には一続きの問題です。刑事の段階でどの処分を得るかが、帰国の形と、その後もう一度日本に来られるかどうかを決めます。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------