拘禁刑5年6か月の実刑。求刑からの減軽がわずかだった判決を読み解く
2026/09/01
認めていれば軽くなる。反省していれば執行猶予になる。日本の刑事裁判について、そう聞かされている方は少なくありません。しかし、罪名によっては、認めていても実刑を避けられない領域があります。大分地方裁判所が中国籍の男性に拘禁刑5年6か月の実刑を言い渡したと報じられた事件は、その現実を示しています。この記事では、報じられた判決を手掛かりに、この類型の量刑がどう決まるのか、認めることに意味はあるのか、そして実刑が確定した後に何が起きるのかを整理します。
報じられた判決の内容
TBS NEWS DIG(大分放送)の2026年5月19日報道によれば、大分地方裁判所は、不同意わいせつ、同未遂、不同意性交等の罪に問われた中国籍の40代の男性会社員に対し、拘禁刑5年6か月の実刑を言い渡しました。2025年11月から12月にかけての複数の被害について起訴されており、検察官の求刑は拘禁刑6年でした。前科がないこと、犯行を認めていることは考慮されたと報じられています。行為の態様については、被害を受けた方の保護の観点から、ここでは触れません。判決の内容は報道によるものであり、確定の有無を含め、詳細は公開の記録によって確認する必要があります。
なぜ減軽の幅がこれほど小さかったと考えられるのか
求刑6年に対して判決が5年6か月というのは、量刑の実務からみて小さな幅です。この類型の量刑は、被害を受けた方の人数、期間、そして被害の回復がされているかどうかによって、大枠が決まります。被害が複数にわたる事件では、それぞれの被害について個別に評価されるため、認めているという事情だけでは、下方への振れ幅が限られます。前科がないことは考慮されますが、それは初犯であることを前提とした相場の中での話であり、相場そのものを動かす力までは持ちません。実務で最も大きく量刑を動かすのは、被害を受けた方との示談の成否ですが、この種の事件では、示談に応じていただけないことも多く、その場合には量刑上の減軽要素が乏しくなります。
認めることに意味はあるのか
結果として実刑になったのだから認めても無駄だった、という受け止め方は正確ではありません。認めるかどうかは、量刑の材料であると同時に、事実そのものの問題です。やっていないことを認めてはいけませんし、やったことを争えば、被害を受けた方への負担が量刑上不利に評価されます。実務的に重要なのは、認める、争うという二択ではなく、どの事実を認め、どの事実を争うのかを、証拠に即して切り分ける作業です。起訴された事実の一部について記憶と食い違いがあるなら、その部分だけを争うという選択肢があります。この切り分けを弁護人と一緒に行わないまま、取調べの流れで全部を認めてしまうと、後から取り返しがつかなくなります。
実刑と退去強制はどうつながるのか
入管法(出入国管理及び難民認定法)24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた方を退去強制事由としています。ただし、全部執行猶予が付いた場合は除かれます。したがって、5年6か月の実刑であれば、この号に該当することになります。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、この4号リ単独による退去強制令書の発付は全国で41人、不法残留との並立を含めても限られた人数です。全体では不法残留による発付が5,778人と圧倒的多数を占めています。もっとも、中国籍の方については、退去強制令書の発付総数686人のうち4号リ関係が47人と、他の国籍と比べて比率が高くなっています。刑事事件が在留に直結する場面が、現実に存在するということです。
判決の後、手続はどう進むのか
実刑が確定すると、刑事施設で服役することになります。服役が終わる時期が近づくと、出入国在留管理庁への引継ぎが行われ、収容または監理措置のもとで退去強制手続が進みます。この段階で在留特別許可を求めることになりますが、入管法50条1項ただし書は、無期または1年を超える実刑に処せられた場合に加重された要件を置いています。令和7年の在留特別許可の件数は、審査、口頭審理、異議申出の合計で1,030人でした。退去強制令書の発付が7,725人ですから、容易ではありませんが、道が閉ざされているわけでもありません。退去強制を受けて出国した場合の上陸拒否期間は、前歴がなければ5年、前歴があれば10年です。
判決を聞いたご家族が、その日にすべきこと
まず、控訴の期限を確認してください。控訴の申立ては、判決の言渡しがあった日の翌日から14日以内に行う必要があります。判決の内容に事実誤認や量刑不当があると考えるなら、その日のうちに弁護人と方針を決める必要があります。次に、被害を受けた方への対応が残っていないかを確認してください。判決後であっても、被害弁償は民事上の責任として残ります。そして、在留に関する資料の準備です。家族の在留状況、日本での生活歴、扶養している方の有無、帰国した場合に生じる支障。これらは、後の退去強制手続で在留特別許可を求める際の中心的な材料になります。刑事の弁護人と入管手続を扱う弁護士が別になると情報が途切れますので、一つの窓口で引き継ぐことをお勧めします。
中文版:拘禁刑5年6个月实刑:比求刑只减了半年的判决说明了什么
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------