観光客がレンタカーで事故を起こした 保険と帰国の段取りをどう組むか
2026/09/01
旅行で日本に来て、レンタカーを借りて移動している最中に事故を起こしてしまう。ご本人にとっては、帰国の予定も、仕事も、家族との約束も、すべてがその日から止まります。短期滞在の方の交通事故は、日本に生活の基盤がある方の事故とは、手続の進み方がまったく違います。この記事では、中国籍・香港在住の方を含む観光目的で来日された方とそのご家族に向けて、身柄拘束が長引く理由と、帰国までの段取りの組み立て方を説明します。
報じられている事件
UHB北海道文化放送が2025年12月11日に報じたところによれば、北海道共和町で、香港特別行政区に住む中国籍の46歳の男性が、観光目的で来日中に、一部が凍結した国道でレンタカーを運転して対向車線にはみ出し、軽乗用車と正面衝突して50代の男性に重傷を負わせた疑いで、過失運転致傷の疑いで逮捕されました。報道によれば、はみ出して走行したこと自体は認めているとされています。疑いで逮捕されたと報じられているにとどまり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。なお、香港特別行政区の旅券をお持ちの方も、日本の入管実務では中国籍として扱われます。
なぜ短期滞在の方は身柄が続きやすいのか
逮捕された後、検察官が勾留を請求し、裁判官が判断します。勾留の判断で重視されるのは、住居が定まっているか、逃亡のおそれがあるか、罪証を隠滅するおそれがあるかです。短期滞在の観光客の場合、日本国内に住居がなく、滞在先はホテルで、帰国便の予約が数日後に迫っています。この状況は、そのままでは逃亡のおそれが高いと評価されやすいのです。令和6年の検察統計では、全国籍を通じて、逮捕後の措置のうち勾留が許可されたのは91,358件、却下は4,154件でした。この二つから計算すると許可率は約95.7パーセントになります。なお国籍別の内訳は公表されていませんので、外国人が特に勾留されやすいと公的統計で示すことはできません。しかし、住居と身元引受という要素が弱いことが、判断に影響するのは事実です。
最初に確認するのは保険の中身
レンタカーには通常、対人・対物の保険と補償制度が付いています。まず確認すべきは、契約した補償の範囲、免責額、対人賠償の上限、そして事故時の手続をどこまで済ませたかです。被害者が重傷である場合、治療費と休業損害は保険から支払われますが、刑事事件の量刑で評価されるのは、保険による賠償があることに加えて、本人が謝罪と被害回復にどう向き合ったかです。保険がすべてを解決するわけではありません。また、契約者が同行者名義であった場合や、運転者として登録されていなかった場合には、補償が受けられないことがあります。契約書と貸渡証の内容は、最初に弁護人へ渡してください。
帰国の段取りは三つの要素で決まる
第一に、身元引受です。日本国内に親族や知人がいる場合、その方が身元引受人となり、連絡先と監督の内容を書面にすることで、勾留に対する準抗告や、起訴後の保釈の判断材料になります。第二に、帰国後に日本の手続へ出頭する担保です。旅券を弁護人が預かる、保釈保証金を積む、連絡手段を明確にするといった方法があります。第三に、被害者との示談です。示談が整えば、起訴猶予による不起訴の可能性が現実的になります。令和6年の犯罪白書によれば、来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48.35パーセントで、約半数が起訴猶予となっています。起訴前の弁護活動が結果を大きく左右する分野です。
ご家族が今日できること
まず、レンタカーの契約書、保険証券、予約の記録、旅券と航空券の控えを揃えてください。次に、日本国内に連絡が取れる方がいるかを確認します。身元引受を引き受けてくださる方がいるかどうかで、選択肢の幅が変わります。中国からの送金が必要になる場合は、金融機関の手続に日数がかかりますので、早めに準備してください。勤務先への説明や、帰国便の変更は、弁護人と見通しを共有してから行うのが安全です。中国語の通訳を伴う接見は、初日から実施できます。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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