高度専門職の人が白タクで現行犯逮捕された 罰金でも在留は無事では済まない
2026/09/01
高度専門職の在留資格は、学歴・職歴・年収などを点数化して一定の点数に達した方に認められるもので、永住許可の要件が緩和されるなど、他の就労資格にはない優遇を伴います。それだけに、刑事事件が起きたときの影響も、他の資格とは違った現れ方をします。この記事では、いわゆる白タク、すなわち自家用車で有償の運送を行った疑いで摘発された事例を素材に、罰金にとどまった場合でも在留がどう動くのかを説明します。
報じられている事件
産経新聞及び共同通信が2026年7月12日に報じたところによれば、東京都内で、中国籍の42歳のシステムエンジニアの男性が、東京駅前で声をかけて米国籍の観光客3人を品川区まで正規料金の約1割高い金額で運んだとして、道路運送法違反の疑いで現行犯逮捕されました。報道によれば、この男性は在留資格「高度専門職」で滞在しており、容疑を否認しています。疑いで逮捕されたと報じられているにとどまり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
白タクはなぜ処罰されるのか
日本では、他人の需要に応じて、有償で自動車を使って旅客を運送する事業を営むには、国土交通大臣の許可が必要です。許可を受けずにこれを行うと道路運送法違反となります。争点になるのは二つです。一つは、受け取った金銭が運賃なのか、燃料代や高速道路料金の実費の分担にすぎないのか。もう一つは、それが「業として」行われたか、つまり反復継続の意思をもって行われたかです。知人を一度送って実費をもらっただけであれば、通常は事業とは評価されません。他方、駅前で見知らぬ旅行者に声をかけ、相場より高い金額を受け取り、それを繰り返していたとなれば、事業性は否定しにくくなります。捜査では、決済アプリの履歴、車両の走行記録、募集に使われた通信アプリのやり取りが決定的な資料になります。
資格外活動が同時に問題になる
白タクの事案では、道路運送法違反だけでなく、資格外活動(入管法19条)が併走します。高度専門職として許可された活動は、勤務先での専門的な業務です。旅客運送で収入を得る活動は、その範囲に含まれません。資格外活動の許可を受けずに報酬を伴う活動を行えば、それ自体が入管法上の問題となります。しかも、この点は刑事処分の重さとは独立に評価されます。刑事で罰金にとどまっても、あるいは不起訴になっても、入管の審査では「本来の活動以外で収入を得ていた事実があったか」が問われます。刑事と入管は別の手続であり、片方が終われば安心という関係にはありません。
罰金でも更新とポイントの再評価で不利になる
高度専門職の在留期間更新や、高度専門職2号への移行、永住許可の申請では、素行が善良であることが求められます。罰金刑は前科として記録に残り、素行の審査で事実として現れます。加えて、高度専門職はポイントの合計で資格が支えられていますから、事件をきっかけに転職や降格、年収の減少が起きれば、点数の前提そのものが崩れます。勤務先が事件を知って就業規則に基づく処分を行えば、専門的業務への従事という在留資格該当性が失われることもあります。永住許可を目指していた方にとっては、素行要件の充足を説明するために、相当の年数を要する場合があります。退去強制に至らないことと、在留が無傷であることとは、まったく別の話です。
否認する場合に何を残しておくか
報道では容疑を否認しているとされています。否認を維持するのであれば、金銭の性質と反復性を否定する具体的な資料が必要です。相手方とどのように知り合ったのか、金額はどのように決まったのか、同種の行為が過去にあったのか。通信アプリの履歴は、削除すると罪証隠滅を疑われ、勾留や保釈の判断に直結します。消さずに、弁護人を通じて保全してください。取調べでは、質問の前提に事実の誤りが含まれていることがありますから、通訳を介して一つずつ確認し、調書に署名する前に読み聞かせを受けることが重要です。
ご家族と勤務先ができること
ご家族は、在留カードと旅券、雇用契約書、直近の源泉徴収票、高度専門職のポイント計算に用いた資料の所在を確認してください。これらは、後に更新や在留の維持を説明する場面で必要になります。勤務先には、いつどの範囲で説明するかを弁護人と相談してから伝えるのが安全です。身柄が続く場合、無断欠勤の扱いが後の雇用に響きます。初回のご相談は無料です。ご本人が拘束されていても、ご家族からのご連絡で対応できます。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------