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営業秘密の持ち出しで実刑を免れた事件 研究への貢献はどう評価されたか

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営業秘密の持ち出しで実刑を免れた事件 研究への貢献はどう評価されたか

営業秘密の持ち出しで実刑を免れた事件 研究への貢献はどう評価されたか

2026/09/01

日本の研究機関や企業で働く中国籍の方から、会社や研究所のデータを自分の記録媒体に保存したことで捜査を受けている、というご相談をいただくことがあります。営業秘密をめぐる事件は、罪名そのものよりも、判決が実刑になるのか刑の全部の執行を猶予されるのかによって、その後の生活がまったく違うものになります。この記事では、実際に報道された営業秘密の開示事件を手がかりに、何が実刑の回避につながったのか、刑事処分が在留資格にどう連動するのかを、ご本人とご家族の視点から順に整理します。

報道されている事件の概要

読売新聞、産経新聞、朝日新聞などの報道によれば、国立研究開発法人の主任研究員だった中国籍の男性が、2018年4月、フッ素化合物の合成技術に関する情報を中国・北京の化学メーカーにメールで送信したとして、不正競争防止法違反(営業秘密の開示)の疑いで2023年6月15日に逮捕されました。判決は2025年2月25日に東京地方裁判所で言い渡され、拘禁刑2年6月、刑の全部の執行猶予4年、罰金200万円(求刑と同じ)と報じられています。送信先は当時この男性の妻が代表を務めていた企業であり、判決はその点を身勝手だと厳しく評価する一方、在籍中の研究上の貢献を考慮して刑の執行を猶予したと伝えられています。上訴の有無を含む確定後の経過は、公表された資料からは確認できていません。

実刑か執行猶予かが、在留の分かれ目になる

出入国管理及び難民認定法(入管法)は、退去強制事由のひとつとして、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を挙げています(24条4号リ)。もっとも、この号にはただし書があり、刑の全部の執行を猶予された場合は除かれます。同じ「1年を超える刑」であっても、実刑であれば退去強制手続の入口に立たされ、全部執行猶予であれば少なくともこの号によって退去強制の対象になることはありません。報道された事件の2年6月という刑期は、実刑であればこの号にまっすぐ当てはまる長さでした。執行猶予が付いたことは量刑上の評価であると同時に、日本での在留を続ける可能性を残すという、法律上の決定的な意味を持っていたことになります。

数字で確かめておきます。令和7年の出入国管理統計第57表によれば、24条4号リ単独を理由とする退去強制令書の発付は全国で41人、うち中国籍は11人です。不法残留(24条4号ロ)による発付が5,778人であることと比べれば、刑事事件を理由とする発付は数の上では少数にとどまります。ただし中国籍については、退去強制令書発付総数686人のうち4号リが単独11人、不法残留との並立が36人で計47人(6.9%)を占め、ベトナム籍の2.3%より高くなっています。刑事事件を起こせば直ちに送還されるという理解は正確ではありませんが、1年を超える実刑という一線が重い意味を持つことも、また事実です。

研究への貢献という事情は、どうやって裁判所に届くのか

裁判官は、法廷に提出された記録以外の情報を持っていません。ある研究者がその組織にどれだけの成果を残したかは、本人や家族にとってどれほど明らかであっても、証拠として提出されなければ判決には反映されません。営業秘密の事件では、いったん外部に出た情報を金銭で取り戻すことができず、被害弁償による被害回復が成り立ちにくいという特徴があります。だからこそ、その人が在籍中に何を積み上げたのかという一般情状が、数少ない積極的な材料として重みを持ちます。

実務上、弁護人が集めるのは、発表論文や特許の一覧、共同研究の実績、受賞歴、勤務評価、上司や共同研究者の陳述書、後任への引継ぎの状況などです。あわせて、再発を防ぐための具体的な生活設計、家族による監督の体制、被害を受けた組織に対する謝罪の意思表示を、書面の形にしていきます。捜査段階から準備を始めておかないと、公判が始まってからでは関係者の協力を得にくくなります。逮捕によって職場との関係が切れてしまう前に着手できるかどうかが、実際の分かれ目になります。

罰金200万円の併科が意味すること

不正競争防止法の営業秘密に関する罪では、拘禁刑と罰金を併せて科すことができます。報道された判決も罰金200万円を併科しています。ここで押さえておきたいのは、罰金それ自体は入管法24条4号リがいう拘禁刑ではないため、罰金を納めたことが直ちに退去強制事由になるわけではないという点です。他方で、在留期間の更新や在留資格の変更の審査では、有罪判決を受けた事実が素行に関する判断材料になります。退去強制につながらなかったとしても、次の更新申請で説明を求められる場面は避けられません。納付が一度に難しい場合の取扱いを含め、判決後の手続まで弁護人と詰めておく必要があります。

ご家族が今日から準備できること

まず、在留カードと旅券の所在を確認し、在留期限を控えてください。身柄が拘束されている間も在留期間は進みます。次に、勤務先とのやり取りは日付とともに保存してください。休職か解雇かによって、その後の在留資格の扱いが変わってきます。研究や業務上の実績を示す資料は、本人が職場に戻れなくなる前に、家族が手元で集められる範囲で集めておくと、後の情状立証で生きてきます。差し入れは現金と着替え、そして辞書類が中心になりますが、施設ごとに扱いが異なるため、接見に行く弁護人に確認するのが確実です。

最後に、取調べで何をどう述べたのかを、面会のたびに記録しておくことをお勧めします。通訳を介した供述は、後から調書の記載と食い違うことがあります。令和6年の犯罪白書によれば、被告人に通訳を要した通常第一審の終局人員は4,649人で、中国語は726人(15.6%)と、ベトナム語1,794人に次ぐ第2位です。通訳を要する事件は決してまれではなく、それだけに通訳の質を確かめる作業が弁護活動の一部になります。

中文版:因研究贡献被认可而免于实刑的营业秘密案件——缓刑与在留资格的分界线

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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