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立件は時計1点。それでも組織性が主張される理由

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立件は時計1点。それでも組織性が主張される理由

立件は時計1点。それでも組織性が主張される理由

2026/09/01

売ったと認定されたのは腕時計1点。それなのに、捜査機関は組織的な犯行だと主張し、報道は数億円という数字を伝える。偽ブランド品の事件では、この落差がしばしば生じます。ご本人にしてみれば、なぜ1点の販売でここまで大きく扱われるのか理解できないという気持ちになるはずです。この記事では、報じられた事件を手がかりに、立件事実と量刑事情の関係、組織性が主張される仕組み、そしてそれに対する防御の組み立て方を整理します。

報じられた事件の概要

2021年10月21日の読売新聞の報道によれば、千葉県において、インターネットで模造腕時計1点を2万7200円で販売したとして、中国籍の自称会社員の男性ら中国人4人が商標法違反の疑いで逮捕されたと伝えられました。捜索では段ボール数十箱分が押収され、不正な売上は数億円規模とみて捜査が進められたとされています。逮捕の段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。以下は、この事件の結論を述べるものではなく、同じ構造の事件で何が起きるかを説明するものです。

立件1点でも組織性が主張される理由

捜査機関が組織性を主張する根拠は、販売した点数ではありません。第一に、複数人が同時に逮捕されているという事実です。役割の分担があると見られれば、それだけで個人の犯行とは異なる評価がされます。第二に、押収された在庫の量です。段ボール数十箱という規模は、個人が趣味で保有する量とは考えられません。第三に、売上の推計です。取引履歴、入金記録、出品数から総額が算定されると、その数字が事件全体の像を決めていきます。第四に、仕入経路です。海外からの継続的な輸入が確認されれば、供給と販売の仕組みがあったと評価されます。つまり、立件された1点は入口にすぎず、その背後の構造が主張の中心になるということです。

立件事実と量刑事情を区別する

ここで、防御の基本となる考え方を確認します。刑事裁判で刑を決める対象は、起訴された事実です。起訴されていない事実、いわゆる余罪を、実質的に処罰する趣旨で量刑に用いることは許されません。他方で、起訴された事実の情状として、犯行に至る経緯や背景事情を考慮することは認められています。この二つの境界は微妙ですが、押収量や売上推計が主張されるときには、それが訴因の情状としての範囲を超えて、事実上、別の犯罪を処罰する働きをしていないかを検討する必要があります。弁護人は、検察官の主張のうちどこまでが証拠によって裏づけられているのかを確認し、推計にとどまる数字を確定した事実のように扱わせない作業を行います。

共犯者が複数いる事件での立ち位置

4人が同時に逮捕されている事件では、それぞれの役割が異なるのが通常です。資金を出した人、仕入れを担当した人、出品と顧客対応をした人、保管と発送をした人。利益の分配も同じではありません。ここで危険なのは、全員が一様に扱われることです。自分の関与を正確に説明することは、他の共犯者の責任を重くする方向にも働くため、供述の内容は慎重に検討する必要があります。共犯者同士で連絡を取り合うことは、証拠隠滅と評価され、勾留や保釈で決定的に不利になりますので、絶対に避けてください。ご家族が伝言役になることも同じ結果を招きます。必要な連絡は、すべて弁護人を通じて行ってください。

在留資格への影響

商標法違反は、入管法24条4号チが列挙する薬物関係の罪ではなく、同4号の2の特定犯罪にも含まれません。したがって、退去強制事由に直結するのは、原則として1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた場合(同4号リ)です。組織性が認められ、規模が大きいと評価されれば、実刑の可能性は現実に高まります。出入国管理統計第57表によれば、令和7年の退去強制令書発付は総数7722人で、中国籍は686人、そのうち4号リによるものは単独11人、不法残留との並立を含めると47人でした。中国籍については、退令発付総数に占める4号リの比率が他の国籍より高い傾向が読み取れます。つまり、この類型では、量刑の1年という線が在留の可否と直結します。実刑を避けるための活動が、そのまま在留を守る活動になります。

ご家族が最初にすべきこと

まず、押収品目録交付書を入手し、押収された物の内訳と数量を確認してください。押収された物の中に、他人の所有物や、事件と無関係な私物が含まれていることもあります。次に、入金口座の取引明細と出品の履歴を、消さずに保全してください。売上の推計に反論するには、実際の入金額を示すほかありません。第三に、身元引受人、帰住先、就労の継続の見込みを整理してください。実刑か執行猶予かが分かれる事件では、判決後の生活の受け皿が量刑資料として意味を持ちます。第四に、在留カードと旅券の所在、在留期限、更新の時期を確認してください。刑事の結論が出るまでに在留期限が到来する場合、対応を先に検討しておく必要があります。

中文版:立案只有一块手表,为何仍被主张有组织性

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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