別の事件で起訴されている人が、商標法違反で再逮捕された
2026/09/01
すでに別の事件で起訴され、身柄を拘束されたまま公判を待っている。その最中に、まったく別の容疑で逮捕状が執行される。いわゆる再逮捕です。ご家族からすると、もうすぐ裁判が始まると聞いていたのに、また最初からやり直しになったように見えます。この記事では、詐欺で起訴された後に商標法違反で再逮捕されたと報じられた事件をもとに、複数の事件を抱えたときの手続の流れ、量刑がどう決まるか、黙秘を選んだ場合の見通しを整理します。
報じられた事件の概要
2025年1月19日の埼玉新聞の報道によれば、埼玉県警は、東京都杉並区に住む中国籍の無職の男性(27歳)を、商標法違反の疑いで再逮捕したと伝えられました。報道によれば、この男性は別の事件の詐欺罪で既に起訴されていたとされ、自宅で17ブランド236点を販売目的で所持していたという内容です。鑑定によって偽物と認定され、2024年3月ごろからインターネット販売が行われ、男性は商品の保管や発送を担当していたとされます。取調べには黙秘していると報じられました。逮捕の段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
起訴された後に再逮捕されると、手続はどうなるか
先の事件で起訴されると、その事件については保釈を請求できるようになります。ところが、別の事件で新たに逮捕・勾留されると、その新しい事件の勾留が続く限り、先の事件で保釈が認められても外には出られません。実務では、この状態を身柄の重なりとして説明します。したがって、再逮捕された事件について勾留がいつ終わるのか、その事件が起訴されるのか不起訴になるのかが、そのまま身柄の見通しを決めます。新しい事件についても、勾留は原則10日、延長を含めて最大20日です。この期間に何を積み上げられるかが、その後を左右します。
二つの事件が一緒に裁かれるとき、量刑はどうなるか
同じ裁判所で係属している複数の事件は、併せて審理されることがあります。併合されると、判決は一つになり、刑も一つとして言い渡されます。ここで大切なのは、二つの事件の刑を単純に足し算するわけではないという点と、それでも全体の犯情が重く評価されやすいという点です。詐欺と商標法違反のように、いずれも利益を得るための行為が続いていたと見られる場合、常習性や規範意識の鈍麻として評価されることがあります。他方、併合されることで、被害弁償や再発防止の取り組みを一度にまとめて示せるという面もあります。どの事件でどこまで争い、どこを認めるのかという全体の設計が必要になります。
黙秘を選んだ場合の見通し
黙秘は憲法と刑事訴訟法が保障する権利であり、黙秘したこと自体を理由に不利益な推認をすることは許されません。共犯者が多数存在し、供述が独り歩きしやすい事件では、黙秘は合理的な選択です。もっとも、現実の影響も直視する必要があります。関与の限界や役割の小ささを示す供述をしないため、捜査機関は客観的な証拠と共犯者の供述だけで全体像を描きます。また、反省や被害回復の姿勢は、供述以外の方法、すなわち贖罪寄付、在庫の廃棄、家族による監督体制の書面などによって示すことになります。黙秘を選ぶかどうかは、事件の証拠構造と本人の立場によって決まります。取調べの初日に一人で決めてしまわず、弁護人と相談したうえで方針を定めてください。
匿名流動型グループの周辺者という位置づけ
保管や発送を担当していたとされる立場は、指示役から見れば交換可能な役割です。捜査の側から見れば、末端の一人を通じて全体の構造に迫るための入口になります。この位置にいる人は、二つの相反する力の間に置かれます。一方で、グループの全体の規模が大きいことが、量刑を押し上げる方向に働きます。他方で、自分の関与は限られていたという事実が、正しく立証されれば責任を軽くする方向に働きます。したがって弁護人は、関与の開始時期、指示の内容、報酬の性質、離脱の意思の有無といった事実を丁寧に切り分けます。ここを曖昧にしたまま全体の一員として扱われると、実際の関与を超えた評価を受けかねません。
在留資格への影響とご家族の準備
詐欺と商標法違反が併合されて実刑となり、その刑期が1年を超えれば、入管法24条4号リに該当し、退去強制手続に進みます。執行猶予であれば同号には当たりません。統計で見ると、令和7年に退去強制令書が発付された中国籍の方は686人で、そのうち4号リによるものは単独11人、不法残留との並立を含めて47人でした(出入国管理統計第57表)。ご家族としては、二つの事件それぞれについて、罪名、逮捕日、勾留の満期、担当の警察署と検察庁を一覧にしてください。そのうえで、身元引受人、帰住先、就労の見込み、贖罪寄付の原資を整理します。事件が複数あるときほど、情報を一枚の紙にまとめることが、弁護人との打合せを実効的にします。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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