紙袋と空き箱が押収された。それが販売目的の証拠になる
2026/09/01
偽ブランド品の事件では、実際に売った場面がなくても、売るために手元に置いていたと認定されれば処罰されます。ここで捜査機関が重視するのが、商品そのものではなく、その周辺にある物です。ブランドの紙袋、空き箱、保存袋。これらが押収されると、「販売目的ではない」という説明は急速に説得力を失います。この記事では、中古品を扱う会社の関係者が逮捕されたと報じられた事件を手がかりに、販売目的がどう認定されるのか、業者に求められる真贋確認の水準はどこにあるのかを整理します。
報じられた事件の概要
2026年8月13日の神戸新聞の報道によれば、兵庫県加古川署は、中古品取扱会社の代表社員の女性(57歳)と、その息子で社員の男性(29歳)の中国籍の親子2人を、偽バッグ17点を販売目的で所持していたとして商標法違反の疑いで逮捕したと伝えられました。会社は大阪府にあり、中古品販売店からの相談が発覚の端緒になったとされています。2人は「販売目的ではない」と否認していると報じられ、捜索では紙袋や空き箱も押収されたとされています。逮捕の段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
紙袋と空き箱が、なぜ販売目的の証拠になるのか
販売目的というのは人の心の中の事情ですから、直接証明することはできません。そこで、外に現れた事実から推し量ることになります。ブランドの紙袋や空き箱、保存袋、保証書の類は、個人が自分で使うために持っている物としては不自然に整った形で保管されていることが多く、しかも中身と組み合わせれば、正規品らしく見せて引き渡す準備そのものに見えます。同じ方向に働く事実として、商品の点数、同一型番の重複、値札やタグの取り付け、撮影用の背景紙や照明、出品用の写真データ、過去の出品履歴、注文者とのやりとり、梱包資材のまとめ買いがあります。否認する場合には、これら一つ一つについて別の説明を示す必要があります。
否認はどこで崩れるか
販売目的ではないという弁解が崩れる典型は、供述と客観的な記録がずれた瞬間です。たとえば、自分用だと述べたのに同じ型のバッグが複数出てくる。知人に譲るだけだと述べたのに、出品用の写真が残っている。仕入れは趣味だと述べたのに、仕入額と過去の売上が対応している。取調べでは、こうした記録の存在を知らされないまま供述を求められることがあります。だからこそ、記憶が曖昧な点は曖昧なまま述べ、断定を避けることが重要です。弁護人の助言を受ける前に、細部を確定した供述調書ができあがると、後から訂正しても信用性が下がります。
中古品を扱う会社に求められる真贋確認の水準
中古品の取扱業者は、一般の個人よりも高い注意を求められます。買取時の本人確認と記録の作成、仕入先の実在確認、仕入価格の妥当性の検討、真贋鑑定の体制、疑わしい品の隔離と権利者への照会。これらの体制が整っていれば、たまたま偽物が混入したという説明に現実味が出ます。逆に、体制が何もないまま安価な大量仕入れを続けていれば、偽物である可能性を認識しながら取引していたと評価されやすくなります。会社としての責任も見過ごせません。商標法82条は両罰規定を置いており、行為者個人だけでなく法人も処罰の対象になり得ます。会社の代表者と社員が同時に立件される事案では、個人の弁護と法人の対応を並行して設計する必要があります。
在留資格と事業への影響
報道からは在留資格が分かりません。ただ、会社の代表社員という立場からは、経営・管理などの就労資格である可能性が考えられます。この場合、恐ろしいのは刑罰だけではありません。事業自体が継続できなくなれば、その在留資格の前提である活動が失われます。入管法22条の4は、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていない場合を取消事由として定めており、事業の停止はここに直結します。刑事処分については、商標法違反は入管法24条4号チにも同4号の2にも含まれませんから、1年を超える拘禁刑の実刑にならない限り、それだけで退去強制事由になるわけではありません。しかし、在留期間の更新の審査では素行が問われますし、事業の実体が失われていれば更新自体が難しくなります。
ご家族と会社が最初にすべきこと
まず、在庫と仕入れの記録を廃棄せずに保全してください。処分は証拠隠滅と評価されます。次に、買取記録、本人確認書類、仕入先との契約書を時系列で整理し、弁護人に渡してください。真贋確認の体制がどこまであったかを示す資料が、故意の有無を左右します。従業員がいる場合は、取調べで何を聞かれたかを互いに共有するのではなく、それぞれが弁護人を通じて対応するようにしてください。共犯とされ得る立場の人同士で口裏を合わせたと見られると、勾留も保釈も一気に不利になります。そして、取引先や権利者団体からの連絡には、弁護人を介して回答するようにしてください。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------