偽造品事件で執行猶予になる事件と、実刑が相当とされる事件の分かれ目
2026/09/01
偽造品の販売で摘発されたとき、ご本人とご家族にとって最大の関心は、刑務所に入ることになるのかどうかです。しかもこの類型では、その一点が在留の帰趨を直接に決めます。無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられれば退去強制事由に当たり、全部執行猶予であれば除外されるからです。この記事では、公表されている二つの事案を並べ、どの要素が分かれ目になるのかを整理します。
二つの事案を並べてみる
一方は、愛媛県内に住む中国籍の40代の女性が、フリマアプリで国内ブランドの偽造品3点を約2万7,000円で販売したとして商標法違反で逮捕された事案です。2022年以降、中国の業者から輸入し、税関の指摘後も運送手段を変更して継続したとされ、捜索で1,368点が押収されました。判決は拘禁刑1年6月・執行猶予3年・罰金100万円、1,368点の没収でした(ユニオン・デ・ファブリカン「事件簿」 2025年2月5日掲載)。他方は、中国籍の20代の会社社長の男性が、偽の宝飾品を販売したとして商標法違反の疑いで摘発された事案で、2007年4月以降に1億7千万円以上を販売し、偽のアクセサリー約2千点が押収されたと報じられました。震災の「チャリティーセール」と称しながら寄付していなかったと供述したとも報じられています(日本経済新聞 2011年6月23日報道)。後者は処分の結果が報じられておらず、起訴・有罪が確定したものではありませんから、被疑者には無罪推定が及びます。
分かれ目その一は、期間と売上規模です
販売した期間の長さと、そこから得た売上の規模は、この類型の量刑を決める第一の軸です。数点を数万円で売ったという事実だけを見れば軽微ですが、それが何年にもわたる事業として行われ、売上が億の単位に達していれば、評価はまったく異なります。事業として反復継続し、それを生活の糧としていた場合、営利性が強く認定され、罰金の併科や実刑の検討につながります。弁護人としては、立件された訴因の範囲を明確にしつつ、売上とされる金額のうち、真正品の販売や経費がどれだけ含まれているのかを具体的に示していくことになります。
分かれ目その二は、押収点数と組織性、そして前科です
押収された商品の点数は、事業の規模を推し量る材料として重視されます。もっとも、点数がそのまま有罪の範囲になるわけではなく、起訴された訴因の外にある物は情状として評価されるにとどまります。次に、単独で行っていたのか、仕入れ・保管・出品・発送を分担する体制があったのかという組織性が問われます。役割を分担し、名義を分散し、指示系統があった場合、常習性が強く認定されます。そして前科の有無です。同種の前科があれば執行猶予は困難になり、猶予期間中の再犯であれば、猶予の取消しという問題も生じます。
数字で見る、執行猶予と実刑
令和6年の被告人通訳事件の科刑状況では、有罪となった4,388人のうち、全部執行猶予率は全罪名で85・3%、入管法違反を除くと74・8%でした(法務省『令和7年版 犯罪白書』)。多くの事件で執行猶予が付いていることは事実ですが、これは楽観の根拠にはなりません。同じ資料では、3年を超える実刑が282人、3年以下の実刑が155人、2年未満の実刑が141人と報告されており、実刑となる事件も現に存在します。どちら側に振れるかを決めるのが、前記の各要素です。
「1年を超える実刑」が在留に直結します
入管法(出入国管理及び難民認定法)は、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とし、全部執行猶予を除外しています。令和7年の統計では、この事由の単独による退去強制令書の発付は全国で41人、うち中国籍は11人でした。不法残留と並立する形を含めると中国籍は47人となり、中国籍の発付総数686人の約6・9%を占めます。ベトナム籍の同様の比率は約2・3%ですから、中国籍ではこの事由の比重が大きいことが分かります(出入国在留管理庁「出入国管理統計」第57表)。刑期が1年を超えるかどうかという線は、そのまま日本に残れるかどうかの線になります。
実刑を避けるために、起訴前からできること
権利者への謝罪と損害の填補、在庫の任意提出と廃棄への同意、販売経路の遮断、口座と出品アカウントの閉鎖、家族による監督体制の提示。これらは判決の直前に行っても評価されにくく、起訴前から積み上げてこそ意味を持ちます。あわせて、扶養している家族の状況、日本での在留期間、就労の実態、納税の状況を資料でそろえます。刑事の弁護と入管の見通しは一体ですから、判決の内容が在留にどう影響するかを踏まえて、量刑の主張を組み立てる必要があります。
中文版:假货案件中获缓刑的与被认为应判实刑的,分界究竟在哪里
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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