拘禁刑1年6月・執行猶予3年・罰金100万円。偽造品事件の量刑を語れる確定事例
2026/09/01
偽造品の販売で摘発されたご本人やご家族から、「どのくらいの刑になるのか」と真っ先に聞かれます。この類型は公表される判決が少なく、見通しを語りにくい分野ですが、権利者団体が公表した事案の中に、主文まで明らかになっているものがあります。この記事では、その一件を手がかりに、判決の主文をどう読むのか、何がその重さを決めたのか、そして執行猶予が付いた場合に在留資格はどうなるのかを説明します。
公表された事案の内容
フリマアプリで国内ブランドの偽造品を販売したとして、愛媛県内に住む中国籍の40代の女性が商標法違反の疑いで逮捕された事案が公表されています。逮捕は2024年6月6日、立件されたのは偽のポシェットなど3点を約2万7,000円で販売した行為で、捜索によって1,368点が押収されました。2022年以降、中国の業者から輸入していたとされ、税関から指摘を受けた後も運送手段を変更して継続していたとされています。判決は、拘禁刑1年6月・執行猶予3年・罰金100万円、偽造品1,368点の没収でした(ユニオン・デ・ファブリカン「事件簿」 2025年2月5日掲載。捜査は愛媛県警)。
主文を一つずつ読み解く
この主文には四つの要素が入っています。第一が拘禁刑1年6月という自由刑の重さ、第二が3年間の執行猶予、第三が罰金100万円、第四が偽造品の没収です。注意すべきは、執行猶予が付いているのは自由刑の部分だけで、罰金は現実に納付しなければならないという点です。罰金を納められない場合には、労役場に留置されて作業に従事することになります。没収も執行猶予とは無関係に実行されます。「執行猶予がついたから何もしなくてよい」という理解は誤りで、判決の日から現実の支払いが始まります。
この事案で刑を重くした事情と、軽くした事情
重くする方向に働いたと考えられるのは、2022年以降という販売期間の長さ、押収点数の多さ、そして税関から指摘を受けた後も継続したという経緯です。指摘を受けた時点で是正する機会があったのに続けたという事実は、故意の強さと規範意識の乏しさを示すものとして評価されます。他方、軽くする方向に働いたと考えられるのは、立件された販売が3点・約2万7,000円にとどまること、そして前科がないと見られることです。押収点数が1,368点であっても、有罪と認定されるのは起訴された訴因の範囲であり、残りは情状として評価されるにとどまります。この構造を理解しておくことは、見通しを立てるうえで重要です。
罰金100万円と没収1,368点が意味するもの
商標法違反では、自由刑と罰金を併せて科すことができます。罰金が併科される事案は、営利目的で反復して行われたと評価されたことを意味します。没収については、押収された偽造品は権利者に返還されるものではなく、国が取り上げて廃棄されます。したがって、在庫を資産と考えて没収を争うことに実益はほとんどありません。むしろ、任意に提出し、廃棄に同意し、権利者に対して謝罪と再発防止を示すほうが、量刑上の評価につながります。
執行猶予付き判決と在留資格
入管法(出入国管理及び難民認定法)は、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としていますが、全部執行猶予が付いた場合は除外されています。したがって、拘禁刑1年6月であっても、3年の執行猶予が付いていれば、この規定によって退去を強制されることにはなりません。もっとも、在留期間の更新や在留資格の変更の審査では、素行が考慮されます。有罪判決を受けた事実は消えませんから、更新の際には、事業や就労の実態、納税の状況、再発防止のために何をしているかを、具体的な資料で示す必要があります。
同種事案で弁護人が組み立てること
起訴前の段階では、権利者への謝罪と損害の填補、在庫の任意提出と廃棄、販売アカウントの閉鎖、仕入先との取引停止を、記録の残る形で実行します。これらは不起訴や略式命令を求める材料になります。起訴された後は、立件された訴因の範囲を確定させ、押収点数がそのまま犯情に置き換えられないよう主張します。あわせて、生活の基盤、家族の状況、収入の見通しを示し、執行猶予と、その後の在留の継続が現実的であることを裁判所に伝えます。
中文版:拘禁刑1年6月、缓刑3年、罚金100万日元:可以据以谈量刑的确定案例
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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