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帰国直前の留学生が携帯電話の名義を貸した。貸した側も共犯になるのか

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帰国直前の留学生が携帯電話の名義を貸した。貸した側も共犯になるのか

帰国直前の留学生が携帯電話の名義を貸した。貸した側も共犯になるのか

2026/09/01

帰国の日が決まった留学生が、友人や知り合いから「どうせもう帰るのだから、名前だけ貸してほしい」と頼まれることがあります。携帯電話の契約、銀行口座、部屋の賃貸借。頼む側は決まって「絶対に迷惑はかけない」と言います。しかし日本の刑事実務では、名義を貸した側そのものが詐欺の共犯として立件される例が現実にあります。この記事は、名義貸しがなぜ犯罪になり得るのか、故意がどこで判断されるのか、そして在留資格に何が起きるのかを、中国籍の方とそのご家族に向けて整理するものです。

報道されている事案:留学生名義でのスマートフォン契約

日本経済新聞は2018年7月4日、愛知県において、帰国直前の中国人留学生の名義でスマートフォンを契約し、販売店からだまし取った疑いで、中国籍の20代の男が逮捕されたと報じました。報道によれば、名義人となったのは帰国を控えた中国人留学生でした。もっとも、これは逮捕の段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。以下は、この報道を素材として、名義貸しという行為が日本の刑事手続でどのように扱われるかを一般的に説明するものです。

名義を貸した側は、なぜ詐欺の共犯になり得るのか

携帯電話の契約は、契約者本人が自分で使うことを前提に、販売店が端末という物を引き渡し、通信会社が役務を提供する取引です。実際には別の人物が使う、あるいは転売するつもりであるのに、本人が使うかのように装って契約すれば、販売店を欺いて端末を交付させたと評価されます。名義人が店頭で身分証を示し、自ら署名した時点で、欺く行為の中心部分を担ってしまう。ここが名義貸しの恐ろしさです。背後で指示した人物は書類のどこにも現れず、記録に残るのは名義人の筆跡と顔写真だけ、という事態が起こります。

さらに、契約された回線が特殊詐欺やフィッシングの連絡手段に使われた場合には、その後の犯罪との関係も問われ得ます。本人確認を欠いたまま携帯電話の回線を他人に譲り渡したり貸したりする行為そのものを処罰する法律も別に存在し、名義貸しは一つの罪名で終わらないことが多いのです。

故意はどこで判断されるのか。署名・謝礼・帰国の日程

「頼まれただけで、犯罪だとは思わなかった」という説明は、捜査機関には通りにくいのが実情です。理由は単純で、故意の有無は本人の内心そのものではなく、外に残った客観的な事情から推し量られるからです。名義貸しの事件では、次の三つが検討されます。

  • 契約書の署名。本人が店舗まで出向き、身分確認を受け、自分の手で署名しているか。第三者が用意した書類に判を押しただけの場合と、店頭で自ら名乗った場合とでは、評価がまったく違います。
  • 受け取った謝礼。無償の親切であれば故意を否定する方向に働きますが、相場を超える金銭を受け取っていれば、対価をもらう理由があると分かっていたと評価されやすくなります。
  • 帰国の日程。契約の直後に出国する予定があったこと自体が、自分で使い続けるつもりがなかったことを示す事情として使われます。

裏返せば、弁護人はこの三点を反対の方向から検討します。署名に至る経緯(同行者がいたか、店員とのやり取りに言語の壁がなかったか)、謝礼の名目と金額(食事代程度なのか、明らかに対価と呼べる額なのか)、帰国予定の理由(卒業や就職という独立の事情があるか)。刑法38条3項は、法律を知らなかったというだけでは罪を犯す意思がなかったとは言えないと定める一方で、情状によって刑を減軽できるとも定めています。制度を知らずに巻き込まれたという事情は、量刑の場面では正面から主張できます。

名義を貸した留学生の在留資格はどうなるか

まず落ち着いていただきたいのは、刑事事件になったこと自体が直ちに強制送還を意味するわけではないという点です。出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書によって全部執行猶予の場合は除かれます。出入国在留管理庁の令和7年の統計(出入国管理統計第57表)でも、この号だけを理由に退去強制令書が発付された人は全国で41人にとどまり、退去強制の圧倒的多数である5,778人は不法残留を理由とするものです。

むしろ現実に効いてくるのは、在留期間の更新と学籍のほうです。「留学」は学業を続けることを前提とした在留資格であり、身柄拘束が長引けば出席日数が足りなくなり、退学に至れば在留資格の土台そのものが失われます。令和7年の在留資格取消しは1,446件と過去最高で、そのうち留学が343件(23.7%)を占めます(出入国在留管理庁)。判決の重さより先に、学籍が切れることのほうが早く効いてくる。ここを見誤らないことが大切です。

名義を貸してしまった、あるいは頼まれているとき、今日できること

まだ契約していない段階であれば、答えは一つです。断ってください。「名前だけ」という頼み方をする相手は、名義人が刑事責任を負う構造を知っています。

すでに契約してしまった場合は、記憶が新しいうちに、契約した店舗名・日付・同席していた人・使われた身分証を書き出しておいてください。微信やその他のSNSのやり取りは、不利に見えても絶対に削除しないでください。削除した事実そのものが不利な事情として扱われますし、依頼の経緯や報酬の少なさを示す最良の資料は、たいていそのやり取りの中にあります。謝礼を受け取っていれば、金額と受領方法も記録しておきます。

ご家族の側で準備できることもあります。在留カードと旅券の所在を確認すること、学校や勤務先にいつどのように伝えるかを決めること、差し入れと身元引受の準備をすること。取調べは通訳を介して行われるため、微妙な言い回しが調書に思わぬ形で残ることがあります。署名を求められたら、読み聞かせを求めたうえで署名するよう、本人に伝えてください。

中文版:即将回国的留学生出借了手机名义,出借方也会成为共犯吗

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

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この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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