舟渡国際法律事務所

貸した相手が犯罪に使うと分かっていたか。未必の故意はどう認定されるか

お問い合わせはこちら

貸した相手が犯罪に使うと分かっていたか。未必の故意はどう認定されるか

貸した相手が犯罪に使うと分かっていたか。未必の故意はどう認定されるか

2026/09/01

「相手が犯罪に使うなんて思わなかった」。この弁解は、回線やカードの提供が問題となる事件で、ほぼ例外なく出てきます。そして、この一言が通るかどうかは、本人が何を思っていたかという内心の問題であるにもかかわらず、実際には周囲の客観的な事情によって判断されます。この記事では、報じられた大量貸与の事案を手がかりに、未必の故意がどのような事実から推認されるのか、それにどう反証するのか、そして取調べで何に気をつけるべきかを説明します。

報じられた事案の概要

読売新聞が2024年10月30日に報じた事件では、東京都練馬区に住む中国籍の30代の男性会社役員が、本人確認をせずにSIMカードを貸したとして、携帯電話不正利用防止法違反の疑いで摘発されたと報じられています。貸出枚数は約2,400枚に上るとされ、事件は埼玉県で扱われたとされています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。この記事は、この事案の当否を論じるものではなく、同種の類型に共通する故意の認定の仕組みを説明するものです。

「知らなかった」には二種類ある

まず区別が必要です。一つは、法律を知らなかったという主張です。刑法38条3項は、法律を知らなかったとしても、そのことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできないと定めています。したがって、「本人確認が義務だと知らなかった」という説明は、それ自体では故意を否定しません。もっとも、同項は、情状により刑を減軽することができるとも定めており、量刑の場面では意味を持ち得ます。もう一つは、事実を知らなかったという主張です。相手が誰であるか、何に使うのかを認識していなかったという主張は、事実の認識に関するものですから、故意そのものを否定し得ます。この二つを混ぜて語ると、争点がぼやけ、結果としてどちらも通らなくなります。

未必の故意を推認させる間接事実

実務で重視されるのは、次のような事情です。第一に、取引条件の異常さ。相場から乖離した高額の報酬、極端に短い納期、支払が現金のみであること、領収書や契約書を作らないという相手方の要望。第二に、大量かつ反復であること。一枚や二枚ではなく、数百枚、数千枚という規模で、しかも継続して提供されていた場合、通常の商取引としての説明は難しくなります。第三に、本人確認の欠如そのもの。事業として行っている以上、確認の手順を知らなかったとは考えにくく、あえて確認しなかったという評価に傾きます。第四に、相手方の匿名性。名刺も法人登記も示されず、通信アプリの匿名アカウントだけでやり取りしていたのであれば、相手が正規の用途に使うと信じていたという説明は成り立ちにくくなります。

反証をどう組み立てるか

これらの間接事実に対しては、一つずつ具体的に応じるほかありません。報酬が高額であったのなら、その水準がその業界で異常といえるのか、比較できる取引実績を示します。書面がないのなら、業界における口頭取引の慣行や、過去に同様の方法で行われた正常な取引の記録を提出します。本人確認については、社内で定めていた手順、担当者の分担、実際に確認できた案件の割合を明らかにし、確認漏れが体制上の不備によるものであったことを示します。相手方の匿名性については、紹介者の存在や、過去の取引実績を通じて信頼していた事情を説明します。抽象的に「そんなつもりはなかった」と述べても、間接事実の積み重ねを覆すことはできません。争いは、常に具体的な事実の水準で行われます。

取調べでの受け答えに注意する

この類型では、取調べにおける一言が決定的な意味を持ちます。「言われてみれば怪しいと思っていた」「まあ、良くない使われ方をするかもしれないとは考えた」。こうした表現が調書に記載されれば、未必の故意の認定に直結します。日常会話では控えめな相づちにすぎない言葉が、法的には認識の自白として扱われるのです。中国語の通訳を介する取調べでは、この危険がさらに高まります。訳し方の違いで、断定と推測、認識と可能性の区別が失われることがあるからです。調書に署名する前に、読み聞かせの内容が自分の述べたことと一致しているかを確認し、違うと感じたら訂正を求めてください。訂正されないまま署名すれば、後から覆すのは容易ではありません。黙秘権は権利であり、供述するかどうかは弁護人と相談してから決めれば足ります。

在留資格への影響とご家族ができること

故意が認められるかどうかは、有罪か無罪かの分かれ目であると同時に、量刑の水準を決めます。そして量刑は、そのまま在留の問題につながります。この罪名は、有罪判決だけで退去強制事由となる薬物事犯には当たらず、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑となった場合に、出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号リの問題が生じます。同号の但書により、全部執行猶予の判決は除かれます。ご家族には、会社の契約書類、請求書、入金記録、社内の連絡履歴を保全していただくようお願いします。削除や廃棄は、たとえ意図がなくとも罪証隠滅を疑われ、身柄拘束を長引かせる原因になります。手を加えず、そのまま弁護人に渡してください。

中文版:是否知道对方会用于犯罪:未必的故意如何被认定

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。