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SIMカードを2,400枚貸した。法定刑は軽くても扱いは重い

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SIMカードを2,400枚貸した。法定刑は軽くても扱いは重い

SIMカードを2,400枚貸した。法定刑は軽くても扱いは重い

2026/09/01

「携帯電話の回線を貸しただけ」「本人確認をしなかっただけ」。そう聞くと、軽い違反のように思えます。実際、この類型の法定刑は、詐欺や窃盗と比べれば軽い部類に属します。ところが、実務上の扱いは決して軽くありません。貸与された回線が特殊詐欺や不正送金の道具として使われるからです。この記事では、報じられた大量貸与の事案を素材に、この法律が何を守ろうとしているのか、そしてなぜ量刑が押し上げられるのかを説明します。

報じられた事案の概要

読売新聞が2024年10月30日に報じた事件では、東京都練馬区に住む中国籍の30代の男性会社役員が、本人確認をせずにSIMカードを貸したとして、携帯電話不正利用防止法違反の疑いで摘発されたと報じられています。報道によれば、貸出枚数は約2,400枚に上るとされ、事件は埼玉県で扱われたとされています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

この法律は何を守ろうとしているのか

携帯電話不正利用防止法は、匿名の通信手段が犯罪に使われることを防ぐために、契約時の本人確認と、譲渡・貸与に関する規律を定めた法律です。ここで守られているのは、特定の誰かの財産ではなく、通信の名義と実際の利用者が一致しているという社会的な仕組みそのものです。名義と利用者がずれた回線が大量に流通すれば、詐欺の電話がどこからかかってきたのかを追えなくなり、被害の回復も、犯人の特定も著しく困難になります。つまりこの罪は、被害者が目の前にいない、社会的な法益を侵害する類型です。この性質を理解しておかないと、弁護方針を誤ります。

被害者がいないのに、なぜ量刑が重くなるのか

被害者が特定できないということは、示談によって情状を改善する道が構造的に狭いということを意味します。財産犯であれば、被害弁償と宥恕が処分を大きく左右しますが、この類型ではその手段が使えません。加えて、量刑の場面では、貸与された回線が実際にどのような犯罪に使われたかが、間接的に持ち込まれます。特殊詐欺の被害は、警察庁の令和6年における組織犯罪の情勢によれば、認知件数20,987件、被害額約721億5,000万円とされ、三年連続で増加しています。この社会的背景の中に置かれると、「回線を貸しただけ」という説明は、基盤を供給した行為として重く受け止められます。枚数が二千枚を超えるとなれば、なおさらです。

事業としての提供と、犯罪への供給の線引き

もっとも、携帯回線の再販や法人向けの一括契約は、それ自体が正当な事業として広く行われています。したがって弁護活動の中心は、本人の行為が、通常の事業活動としてどこまで説明できるのかを立て直すことにあります。契約書は作成されていたか。相手方の法人登記や代表者の身分証は確認していたか。料金の請求と回収は記録として残っているか。回線の停止措置は取れる体制だったか。これらが備わっていれば、少なくとも一部については、業務上の手続の不備という評価に近づけられます。反対に、現金決済のみで書面が一切なく、相手方の実在すら確認していないのであれば、その説明は通りません。実務では、この中間に位置する事案が最も多く、記録の再構成が結論を左右します。

弁護人が実際に行う作業

まず、押収されていない社内の記録を集めます。契約書、請求書、入金記録、担当者間の連絡履歴、在庫管理の帳簿。次に、貸与先ごとに、いつ、何枚、いくらで、どのような経緯で提供したのかを一覧に整理します。そのうえで、起訴事実として特定された枚数と、報道された総数との関係を確認します。二千四百枚という数字が、そのまま起訴事実になるとは限らず、個別の貸与について本人確認義務の違反が立証できるものに限られるはずだからです。加えて、再発防止として、事業の中止、在庫の返納、社内手続の見直しといった具体的な措置を実行し、その事実を書面で示します。社会的法益を侵害する類型では、再発防止の実効性こそが情状の中心になります。

在留資格への影響とご家族ができること

この罪名は、有罪判決だけで退去強制事由となる薬物事犯には当たりません。無期又は1年を超える拘禁刑の実刑となった場合に、出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号リの問題が生じ、同号の但書により全部執行猶予の判決は除かれます。もっとも、罰金にとどまった場合でも、次の在留期間の更新では素行が審査されますし、「経営・管理」など事業を前提とする在留資格では、事業の実態が失われれば在留資格そのものの基盤が揺らぎます。ご家族には、法人の登記事項、事業の継続可能性、従業員の雇用状況を整理していただくようお願いします。事業を畳むかどうかの判断は、刑事処分と在留の両方に影響しますので、単独で決めずに弁護人と検討してください。

中文版:出借2,400张SIM卡:法定刑虽轻,处理却很重

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

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この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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