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共用回線、VPN、アカウントの譲渡。他人が使った可能性をどう示すか

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共用回線、VPN、アカウントの譲渡。他人が使った可能性をどう示すか

共用回線、VPN、アカウントの譲渡。他人が使った可能性をどう示すか

2026/09/01

前回の記事では、アクセスログが指し示すのは回線や端末であって人ではないという点を述べました。では、実際に他人が使った可能性を主張する場合、何をどこまで示せば裁判所に届くのでしょうか。「他人かもしれない」という抽象的な可能性の指摘だけでは、日本の裁判所は動きません。この記事では、中国籍の方とそのご家族に向けて、共用回線、公衆無線、VPN、アカウントの譲渡という具体的な場面ごとに、主張を事実で支える方法を説明します。事実に反する弁解を作るための記事ではありません。実際にそうした事情がある場合に、それを証拠の形にする方法の話です。

この論点が正面から問題になった事件

福井新聞が2026年6月10日に報じた事件では、福井県内の50代男性のチケット販売サイトのアカウントに複数回不正アクセスし、電子チケットを取得して仲介サイトで転売したとして、中国籍の40代の男性が不正アクセス禁止法違反と電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕され、本人は自分ではないと否認していると報じられています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。この種の否認事件では、接続元の回線が誰の管理下にあり、その回線を誰が使い得たのかが、審理の中心に据わります。

同居人・来客・職場という、最も現実的な可能性

まず検討すべきは、身近な人です。自宅の無線ネットワークのパスワードを知っていた人は誰か。過去に部屋に出入りしていた人は誰か。ルーターに接続した機器の履歴は残っていないか。ルーターの管理画面には、接続した端末の識別情報と最終接続日時が記録されていることがあり、これが決定的な資料になる場合があります。職場の回線であれば、同じネットワークを共有していた従業員の一覧、その時間帯の在席状況、来客記録が必要です。飲食業の店舗であれば、店内の無線を客に開放していたかどうかが直接の争点になります。これらは、時間がたつほど記録が消え、関係者の記憶も薄れます。

公衆無線とVPN、そして海外事業者のログ

公衆無線ネットワークを経由した接続では、同じ出口のIPアドレスを多数の利用者が共有します。この場合、IPアドレスから個人にたどり着くには、事業者側の接続時刻や端末識別情報の記録が必要になりますが、記録の粒度は事業者ごとに大きく異なります。VPNを使っていた場合はさらに複雑です。VPN事業者の多くは海外に所在し、記録の保存方針も国によって異なるため、日本の捜査機関が接続元をたどりきれないことがあります。ただし誤解しないでいただきたいのは、この事実は「たどれないから無罪」という意味ではないということです。捜査機関は、ログがたどれない部分を、端末に残ったアプリの利用履歴、決済の履歴、通信相手との連絡内容といった別の証拠で補おうとします。弁護側も、その補いが十分かどうかを一つずつ検証することになります。

アカウントを譲った、貸した、売ったという場合

実務でしばしば現れるのが、アカウントや端末、回線契約そのものを他人に渡していたという事情です。これが事実であれば、本人性の連鎖は切れます。しかし同時に、他人名義の利用を可能にする行為は、それ自体が別の法令に触れる可能性があります。読売新聞が2024年10月30日に報じた事件では、本人確認をしないままSIMカードを貸し出していたとして、中国籍の男性が携帯電話不正利用防止法違反の疑いで逮捕され、貸出枚数は約2400枚とされていました。譲渡の事実を述べることが防御になる場面と、新たな立件を招く場面が紙一重で隣り合っています。述べる順序と範囲は、必ず弁護人と設計してください。

技術的な反論を、法廷で通用する形にする

技術的な指摘は、そのままでは意見にすぎません。法廷で機能させるには形式が要ります。第1に、通信事業者や運営会社に対して、保存期間内に照会をかけ、ログの原本と保存方針を明らかにさせること。第2に、捜査機関が提出するログの解析結果について、抽出条件と対象範囲の開示を求めること。第3に、必要に応じて専門家の意見書を用意し、ログの解釈に複数の説明が成り立つことを示すこと。第4に、公判前整理手続の中で争点を明確にし、証拠開示の請求につなげることです。いずれも時間がかかりますから、弁護人の選任が早いほど選択肢が残ります。

在留への影響と、ご家族への具体的なお願い

否認事件は身柄拘束が長くなりやすく、それ自体が在留資格に影響します。入管法24条4号には、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者に関する定めがあり、全部執行猶予が付いた場合はただし書により除かれます。無罪や不起訴を目指す弁護と、仮に有罪となった場合に実刑を避ける弁護は、両立させて設計する必要があります。ご家族にお願いしたいのは、次の点です。自宅のルーターを初期化したり買い替えたりしないこと。契約書類と請求明細を保管すること。本人の端末を勝手に操作しないこと。そして、在留カードと旅券の所在、在留期限、勤務先や学校への連絡の要否を、弁護人と早い段階で共有していただくことです。

中文版:共用线路、VPN、账号转让,如何说明可能是他人所为

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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