転売額3億7200万円と報じられた事件で、自分の関与分だけを認定させるには
2026/09/01
クレジットカードの不正利用と転売がからむ事件では、まず大きな金額が報道に出ます。愛知県警などが摘発した事件では、転売額が約3億7200万円以上と報じられました。逮捕された方のご家族から、この金額を自分の家族が背負うことになるのかというご相談を受けることがあります。しかし報道の総額は、事件全体について捜査機関が描いた見立ての数字であって、一人ひとりが刑事責任を負う範囲とは別のものです。この記事では、中国籍の方とそのご家族に向けて、報じられた総額と自分の関与分をどう切り分けるのか、弁護人が実際に何を集めて何を争うのかを説明します。
報じられている事件は、どのようなものか
読売新聞や中日新聞などが2026年5月15日以降に報じたところによると、他人のクレジットカード情報を通信販売サイトの決済画面に入力して腕時計、ベビーカー、音響機器、家電、化粧品などを購入し、荷受けの役割を担う人物の自宅などへ配送させたうえで売却・転売していたとして、中国籍の男女6人から7人が、私電磁的記録不正作出・同供用、窃盗、詐欺の疑いで逮捕されたと報じられています。逮捕は一度では終わらず、同年6月にかけて再逮捕と追加の逮捕が繰り返されました。転売額は約3億7200万円以上とされています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
なぜ全体の被害額が自分の罪として立てられるのか
検察官は、この種の事件を、役割を分担した一つのグループによる継続的な犯行として構成しようとします。カード情報を用意する者、注文を入力する者、商品を受け取る者、売りさばく者が分かれていても、全体が一個の計画の上に乗っているのであれば、共謀に加わった者は自分が手を下していない部分についても共同正犯として責任を負う、という理屈です。ここで効いてくるのが共謀の射程という考え方です。共謀は、参加した時点より前にすでに完了した行為までさかのぼって及ぶものではありませんし、当初の合意の内容を超えて後から拡張した部分にも当然には及びません。したがって争点は、いつ加わったのか、加わった時点で何をどこまで認識していたのか、自分の行為と結び付く被害はどれか、という三点に絞られます。
参加時期・受領件数・報酬総額を突き合わせる
弁護人が最初に行うのは、三つの数字を並べて矛盾を探す作業です。第1に参加時期。募集に応じた日、最初の入金日、最初に商品を受け取った日を、通信記録と口座の入出金で押さえます。第2に受領件数。配送伝票、宅配業者の通知、集合住宅の入退室記録、在宅していた時間帯を照らし合わせ、実際に受け取ったのが何件かを数えます。第3に報酬総額。この種の事案では報酬が1件いくらという単価で支払われることが多く、旅日僑網が2023年7月18日に報じた別の事件では、留学の在留資格を持つ方が荷物の受け取り代行として1件50元の報酬で60回以上受け取っていたと報じられています。単価と総額が分かれば件数を逆算でき、逆算した件数と検察官の主張する件数が合わなければ、そこが認定を削る糸口になります。三つの数字が互いに支え合う形で説明できたとき、初めて「自分の関与分はここまでだ」という主張が具体性を持ちます。
押収されたデータの量と、起訴される事実の量は別物である
押収された情報の量に引きずられないことも大切です。読売新聞や朝日新聞などが2022年から2023年にかけて報じた決済サービス乗っ取り事件では、技術者役とされた男性のパソコンからIDとパスワード約290万件、クレジットカード情報約1万7000件が押収されたと報じられた一方で、個別に立件された購入額は約60万円分とされていました。押収データは捜査の端緒や組織の規模を示す材料ではありますが、裁判所が有罪と認定する対象は、あくまで訴因として特定された個々の行為です。冒頭陳述で示される全体像と、起訴状に書かれた具体的事実とを、必ず1行ずつ突き合わせてください。
認定される範囲の差は、在留の差になる
認定範囲の差は量刑の差になり、量刑の差はそのまま在留の差になります。出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号には、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とする定めがあり、ただし書により全部執行猶予が付いた場合は除かれます。つまり実刑か猶予かが分水嶺です。出入国管理統計(令和7年)によれば、退去強制令書が発付された7722人のうちこの事由が単独で用いられたのは41人にとどまり、圧倒的多数は不法残留の5778人でした。刑事事件がただちに送還に直結するわけではありません。もっとも、中国籍については退去強制令書発付総数686人のうち、この事由が単独11人と不法残留との並立36人の計47人(6・9%)を占め、ベトナム籍の2・3%より比率が高い点は正直にお伝えしておきます。
ご家族が今日から準備できること
身柄を取られた直後にご家族ができることは、思っているより多くあります。第1に、在留カードと旅券の所在を確認してください。捜索で押収されている場合と自宅にある場合とでは、その後の入管対応が変わります。第2に、報酬の入金記録、募集の画面、やり取りの履歴を消さずに保全してください。一見して本人に不利な記録でも、参加時期を確定させることで関与範囲を狭める方向に働くことがあります。第3に、被害弁償の原資の見通しを立ててください。中国から送金する場合は、正規の経路と資金の出所の説明が必要になります。第4に、勤務先や学校への説明の時期を弁護人と相談してください。無断欠勤が続けば在留資格の活動実体が失われ、刑事処分が出る前に在留の側から崩れます。接見禁止が付いてご家族が面会できない場合でも、弁護人の接見は制限されません(刑事訴訟法39条1項)。
中文版:转卖额3亿7200万日元的案件,如何只让法院认定自己参与的部分
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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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