舟渡国際法律事務所

観光中に持ち帰ろうとしただけで、刑事事件になることがあります

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観光中に持ち帰ろうとしただけで、刑事事件になることがあります

観光中に持ち帰ろうとしただけで、刑事事件になることがあります

2026/09/01

旅行先で見つけた生き物や自然物を、記念に持ち帰ろうとする。その行為が日本では犯罪として扱われ、空港ではなく旅先で身柄を拘束されることがあります。短期滞在で来日した方にとって、これは想像以上に深刻な事態です。帰国便に乗れず、在留期限が迫り、仕事も家族も日本にはいない。この記事では、なぜ「持ち帰るだけ」が刑事事件になるのか、どのように行動が特定されるのか、そして短期滞在者の身柄と帰国をどう調整するのかを、実務の順序に沿って説明します。

「持ち帰るだけ」が、なぜ犯罪になるのか

日本には、個人の財産を守る法律とは別に、資源や文化的価値を守るための法律がいくつもあります。文化財保護法による天然記念物の規制、種の保存法による希少な動植物の規制、外国人による水産動植物の採捕の規制、そして国外へ持ち出そうとすれば関税法の輸出入規制が加わります。これらに共通するのは、被害者となる個人が存在しないことです。誰のものでもないから自由だ、という発想は通用せず、むしろ誰のものでもないからこそ、法律が直接に禁じているのです。

そして、これらの規制の多くは、営利目的を要件としていません。売るつもりがあったかどうかは、犯罪の成否ではなく、処分の重さに関わる事情として扱われます。「記念に持ち帰るだけだった」という説明は、無罪の理由にはならないが、処分を軽くする材料にはなる。この位置づけを最初に理解しておくことが大切です。

報道された事案

2026年6月25日、奄美新聞および南海日日新聞(旅日僑網が引用)は、鹿児島県奄美市において、中国籍の男性2人が、天然記念物であるオカヤドカリ約12.8キロを捕獲した疑いで、文化財保護法違反として捜査を受けたと報じました。住民の通報を端緒に、駐車場に停められていたレンタカーが発見されたとされています。捕獲は認めつつ、禁止されている種だとは知らなかったとして一部を否認していると報じられました。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

レンタカーと宿泊の記録から、行動は特定される

旅行者は、自分では気づかないうちに、極めて密度の高い記録を残しています。レンタカーは契約時に旅券の写しが取られ、貸出と返却の時刻、走行距離、車両によっては位置の記録まで残ります。宿泊施設は旅館業法により宿泊者名簿を備え、外国人旅行者については旅券の写しを取ることが求められています。加えて、島の道路には防犯カメラや、車両の通行を記録する設備があり、フェリーや空港の乗船・搭乗の記録も残ります。決済に用いたカードやモバイル決済の履歴も同様です。

つまり、通報から捜査が始まった段階で、いつどこにいたかという骨格は、供述に頼らずに再構成できてしまいます。ここから導かれる実務上の帰結は二つです。第一に、客観的記録と食い違う説明は、直ちに信用性を失い、かえって不利になります。第二に、逆にこれらの記録は、滞在の目的が観光であったこと、現地での行動が一日限りであったこと、事前の準備がなかったことを示す資料としても使えます。記録は敵にも味方にもなります。

短期滞在者の身柄拘束と、帰国の調整

短期滞在の方が逮捕された場合、最初の問題は時間です。逮捕から検察官が勾留を請求するまで72時間、勾留は原則10日、延長で最長20日。この間に帰国便の日程は過ぎ、在留期限も迫ります。弁護人は通常、次の順序で動きます。まず接見して事実関係と意向を確認し、通訳を確保します。次に、身柄を解く方向の活動として、勾留請求前の意見書提出、勾留に対する準抗告を検討します。同時に、被害の回復にあたる措置、たとえば押収された生き物の返還や放逐、地域への謝罪、贖罪寄付を進めます。

在留期限との関係も並行して整理します。刑事手続が続いている間に在留期限が到来すると、そのままでは不法残留(入管法24条4号ロ、罰則は70条1項5号)の問題が生じます。手続の継続という事情を入管に説明し、在留の手当てについて相談することが必要です。ここを放置したまま刑事手続だけを見ていると、刑事は罰金や不起訴で終わったのに入管の問題が残る、という最悪の順序になりかねません。刑事と入管は連続した一つの流れとして設計する、というのが当事務所の基本的な考え方です。

ご家族と旅行会社が、今日できること

まず、ご本人の所持品の所在です。旅券、航空券、クレジットカード、宿泊予約の控え。これらは身柄を解く際にも、帰国の段取りにも必要です。次に、領事機関への通報を希望するかどうかの確認です。領事関係に関するウィーン条約36条1項により、本人が要請すれば領事機関へ通報されます。第三に、中国語の通訳が確保できる弁護人への連絡です。法務省『令和7年版犯罪白書』によれば、令和6年に被告人の通訳を要した第一審の終局人員は4,649人、中国語は726人で第2位でしたが、逮捕直後の数十時間に動ける通訳を見つけられるかは、まったく別の問題です。

最後に、伝え方です。勤務先や学校への説明を急ぐ前に、まず処分の見通しを立ててください。順序を誤ると、刑事処分が確定する前に職や学籍を失い、その事実が量刑や在留の判断にも影響します。落ち着いて、順番に。それが結果を変えます。

中文版:只是旅游时想带回去,也可能变成刑事案件

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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