6人が同時に運ぶ「分散型」。全員が身柄を取られる構造と、帰国までの道筋
2026/09/01
金の密輸には、一人が大量に運ぶ形のほかに、複数人が少しずつ分けて同じ便で運ぶ形があります。一人あたりの量を減らせば見つかりにくいという発想ですが、実際には全員がまとめて摘発される結果になりがちです。しかも、こうした事件の当事者は短期滞在で来日していることが多く、身柄を拘束されたまま在留期限が過ぎてしまうという固有の問題を抱えます。この記事では、公表されている事例を手がかりに、分散型で何が起きるのか、帰国と身柄拘束をどう両立させるのかを説明します。
公表されている事例
大阪税関の公表によれば、2018年6月21日、関西国際空港で、それぞれが身につける形で金地金を持ち込もうとしたとして、香港のグループ6名が関税法違反(無許可輸入)で大阪地方検察庁堺支部に告発されました。金地金は合計で約33キログラムとされています。なお、香港特別行政区の旅券を持つ方も、日本の入管実務では中国籍として扱われます。以下は、この事例の評価ではなく、同じ形の事件に共通する実務の説明です。
分散させても、なぜ全員が結びつけられるのか
税関の検査は、一人の旅客だけを見ているわけではありません。同一の便で到着した旅客のうち、購入経路や搭乗手続の時刻が近い、座席が隣接している、預託手荷物の記号が連続している、といった事情は容易に把握できます。摘発後は、携帯電話の通信記録、宿泊予約の名義、渡航費用の支払方法、過去の出入国記録が突き合わされます。分散して運ぶという方法は、共謀があってはじめて成り立つ手口ですから、分散していること自体が組織性を示す事情として評価されるという逆説があります。したがって「自分の分は少ない」という説明は、量刑では意味を持ちますが、共謀の否定にはつながりにくいのが実情です。
短期滞在者が身柄を取られると、何が起きるか
短期滞在で来日した方が逮捕されると、住居も勤務先も日本にありません。身元を引き受ける人もいないため、勾留の必要性が認められやすく、起訴後の保釈でも住居の確保が壁になります。予定していた帰りの便には当然乗れず、在留期限は身柄拘束中に経過します。ここで重要なのは、身柄拘束中に期限が過ぎたことがそのまま不法残留の刑事責任に直結するわけではないという点と、それでも入管手続の対象になり得るという点の両方を、正確に押さえておくことです。実務では、刑事事件の終了後に入管の手続へ引き継がれる流れを見越して、早い段階から準備を進めます。
帰国と身柄拘束をどう両立させるか
取り得る道は、事案の軽重によって分かれます。第一に、不起訴を目指す道です。役割が末端で、量が少なく、初犯であれば、起訴猶予の可能性を検討する余地があります。第二に、罰金で終える道です。罰金であれば納付後に手続を終え、退去強制事由に該当しない形で出国できる可能性があります。第三に、実刑を避けて執行猶予を得る道です。いずれの場合も、帰国後の生活の安定、家族の監督、再度の来日予定がないことなどを、書面で具体的に示す必要があります。日本に身元引受人がいない場合、本国の家族から書面を取り寄せ、翻訳を付けて提出することもあります。
通訳と領事通報の実務
言語の問題は、この類型で特に大きく作用します。6名が同時に摘発されれば、通訳人の手配だけでも時間がかかり、取調べの順序によって最初に話した人の説明が全体の枠組みになってしまうことがあります。取調べで通訳を介して述べたことは、日本語の調書として残ります。内容が自分の説明と違うと感じたときは、署名の前に訂正を求めることができます。また、領事関係に関するウィーン条約により、本人が要請すれば領事機関への通報が行われます。ご家族が本国から連絡を取る手がかりとして、この制度は実際に役立ちます。
再び日本に来られるのか
短期滞在の方が最も気にされるのは、次に日本へ来られるかどうかです。罰金にとどまり、退去強制を受けずに自ら出国した場合、退去強制歴に結びつく上陸拒否期間の問題は生じません。ただし、次回の上陸審査では入国目的が慎重に審査されることを避けられません。他方、実刑を受けて退去強制の手続に進んだ場合には、上陸拒否期間が発生します。刑事処分の内容が、そのまま将来の往来の可否に跳ね返るということです。ご家族には、勾留の初期から、この見通しを踏まえた選択をしていただく必要があります。
中文版:6人同时携带的分散型:为什么所有人都会被限制人身,回国之路怎么走
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119
この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------