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薬物で退去強制事由に当たると、出国命令という選択肢が使えません

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薬物で退去強制事由に当たると、出国命令という選択肢が使えません

薬物で退去強制事由に当たると、出国命令という選択肢が使えません

2026/09/01

在留期限が切れてしまった方から、「自分から出頭して帰国すれば、次に来るときに困らないと聞いた」というお話をうかがうことがあります。これは出国命令という制度のことで、事実その通りの面があります。しかし、薬物に関する事由に該当してしまうと、この制度は使えません。この記事では、少量かつ複数種類の薬物が発見された事案を素材に、出国命令の要件、退去強制との違い、そして上陸拒否期間が1年と5年以上に分かれることの意味を説明します。

中部国際空港で公表された事例

名古屋税関が公表した平成29年(2017年)の事例では、中部国際空港において、在日中国人の女性旅客1名について、覚醒剤約4.6グラム、ヘロイン約23.4グラム、ヘロイン水溶液約2.5グラムが発見され、関税法違反の疑いで名古屋地方検察庁に告発されたとされています(名古屋税関公表資料)。告発の段階であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。この事案のように、少量で複数の種類という態様であれば、自己使用目的の主張が成り立つ余地があり、営利目的が否定されれば法定刑の枠組みは大きく下がります。もっとも、日本に生活の基盤がある方の場合、量刑が軽くなっても、次に述べる入管法上の扱いは変わりません。

出国命令とはどのような制度か

出国命令は、不法残留となった方が自ら出頭した場合などに、収容を経ずに出国できる制度です。出国の期限は15日を超えない範囲で定められます。令和5年の改正により条文の位置が移動しています。要件は複数あり、その中に、退去強制事由のうち一定のものに該当しないことという条件が含まれています。この「一定のもの」に、入管法24条4号チ、すなわち薬物に関する事由が入っています。つまり、薬物の事由に当たる方は、出国命令の対象から外れます。

1年と5年、そして年限なし

制度が違うと、上陸拒否期間も変わります。出国命令によって出国した場合の上陸拒否期間は1年です。これに対し、退去強制を受けて出国した場合は、前歴がなければ5年、前歴があれば10年となります。しかも、薬物に関する上陸拒否事由は入管法5条1項5号に置かれており、こちらには年限そのものがありません。したがって、薬物事案では「5年待てば戻れる」という計算も成り立ちません。再入国を目指すのであれば、入管法12条1項の上陸特別許可を求めるほかありません。この差は、単なる手続の違いではなく、その後の人生の設計に直結します。

統計から見える出国命令の実際

出入国在留管理庁の統計によれば、令和6年(2024年)に退去強制手続等を執られた者は18,908人で、そのうち出国命令手続によったものが10,131人でした。半数以上が出国命令によっているということです。また、退去強制事由別に見ると、母数18,908人のうち不法残留が17,746人(93.9%)を占め、刑罰法令違反は384人(2.0%)です。「刑事事件になったら強制送還」という言い方は正確ではなく、実際には不法残留が圧倒的多数を占めています。ただし、薬物の事案に限れば、出国命令という緩やかな出口が閉ざされるという点で、他の類型とは扱いが異なります。

それでも残る選択肢

出国命令が使えないからといって、打つ手がないわけではありません。第一に、収容によらない処遇として、令和5年改正で導入された監理措置があります。監理人となる親族や知人がいるかどうかが判断に関わります。第二に、在留特別許可を求める道があります。入管法50条2項により、申請権は収容令書により収容された方、または監理措置決定を受けた方に生じます。同条3項により、退去強制令書が発付された後は申請できません。時期を逃さないことが重要です。第三に、50条5項が考慮要素を法定しており、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、法的地位、退去強制の理由となった事実、人道的な配慮が挙げられています。これらに沿った資料を、刑事手続と並行して準備します。

刑事の弁護と入管の準備を切り離さない

薬物事案では、刑事で執行猶予を得ても退去強制事由は残ります。ですから、刑事弁護の段階から、入管手続で使う資料を意識して集める必要があります。就労の実績、納税の記録、家族の生活状況、日本での在留期間、監理人になり得る方の存在。これらは刑事の情状としても、入管の資料としても使えます。窓口が分かれていると、同じ事実の使い方が食い違い、双方で弱くなります。

ご家族が今日できること

まず、本人の在留資格と在留期限、そして不法残留の有無を確認してください。次に、日本国内で監理人や身元引受人になれる方を検討してください。三番目に、住民票、課税証明、賃貸借契約、子の在学証明といった日本国内の資料を早めに取得してください。四番目に、中国国内の資料(家族関係、親族の健康状態)は取り寄せに時間がかかりますので、必要になりそうなものから着手してください。そして、「出頭すれば軽く済む」という一般的な説明を、薬物事案にそのまま当てはめないでください。制度の入口が異なります。

中文版:一旦因毒品构成退去强制事由,就无法使用出国命令

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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