舟渡国際法律事務所

「梱包済みのものを預かっただけで中身は知らない」という否認は通るのか

お問い合わせはこちら

「梱包済みのものを預かっただけで中身は知らない」という否認は通るのか

「梱包済みのものを預かっただけで中身は知らない」という否認は通るのか

2026/09/01

薬物密輸の事件で最も多い弁解は、「友人に頼まれて預かっただけで、中身は知らなかった」というものです。この説明が事実であることは現実にあり得ます。しかし、日本の捜査と裁判では、この弁解は単独では受け入れられません。故意は、本人が「知っていた」と述べたかどうかではなく、周囲の客観的な事情から推認されるからです。この記事では、成田空港での事例を素材に、どのような事情から故意が推認されるのか、そしてその推認に対して何を反証すべきかを整理します。

成田空港での事例

朝日新聞が2023年5月15日に報じた事案では、マレーシア発の便で成田空港に入国した中国籍の男性が、X線検査で保冷袋10個を発見され、覚醒剤約10キログラムが見つかったとされています。報道によれば、本人は「友人に頼まれ、既に梱包された状態で預かった。中身は知らなかった」と述べて否認し、2023年5月12日に千葉地方検察庁が起訴したとされています。起訴は有罪を意味しません。被告人には無罪推定が及びます。

故意はどのように推認されるのか

検察官は、次のような事情を積み上げて故意を主張します。第一に量です。約10キログラムという量は、日常的な土産物の授受とは性質が異なると評価されます。第二に、荷物の隠し方です。保冷袋に小分けされ、外から見えないように収納されていれば、通常の運搬とは違う扱いを受けている物だと分かるはずだ、という論法になります。第三に、依頼者との関係です。連絡先しか知らない相手、面識の浅い相手から荷物を託されたという説明は、かえって不自然さの根拠に使われます。第四に、報酬と渡航費用です。渡航費が第三者負担で、滞在日程が短く、目的が説明しにくい旅程であるほど、推認は強まります。

反証は「否定」ではなく「別の説明」で行う

弁護活動は、「知らなかった」と繰り返すことではありません。同じ事情について、別の合理的な説明を客観的資料で示す作業です。渡航の目的が実在したことを示す資料、依頼者との関係が日常的なものであったことを示すやり取りの履歴、報酬を受け取っていないことを示す入出金の記録、荷物を受け取った状況(場所、時刻、第三者の同席)を示す資料。これらが集まって初めて、量や梱包状態から導かれる推認に対抗できます。逆に、取調べで場当たり的な説明を重ねると、供述が変遷したこと自体が不利な事情になります。

営利目的の有無が刑の重さを分ける

覚醒剤の輸入は、営利の目的が認められるかどうかで法定刑の枠組みが変わります。したがって弁護側は、故意そのものを争う場合であっても、予備的に営利目的を否定する構成を検討します。報酬の約束がなかったこと、収益の分配に関与していないこと、荷物の行き先や引渡先を知らなかったことは、この段階で意味を持ちます。役割の限定は、量刑段階で最も現実的な争い方です。

否認事件の身柄はどうなるか

否認すると身柄拘束が長期化しやすい、というのは実務上しばしば見られる傾向です。もっとも、勾留に対しては準抗告という不服申立てができますし、起訴後は保釈請求が可能です。起訴前の保釈制度は日本にはありません。外国籍の方の場合、住居や身元引受人の有無が保釈の判断に影響します。日本に定まった住所と、身元を引き受ける方がいるかどうかを早い段階で整理しておくことが、後の保釈請求の準備になります。

ご家族が最初にすべきこと

まず、本人と依頼者とのやり取りが残っている端末やアカウントを、そのまま保存してください。削除すると、本人に有利な事情まで消えます。次に、渡航費用を誰が負担したか、航空券を誰が予約したかを確認してください。三番目に、日本国内の滞在先と身元引受人の候補を書き出してください。四番目に、通訳を付けた取調べを求めること、領事機関への通報を希望するかどうかを、本人の意思として弁護人に伝えてください。そして、報道の見出しに書かれた押収量の数字だけで結論を決めないでください。争点は量ではなく、本人が何をどこまで知っていたかです。

中文版:“接手的是已包装好的东西,不知道里面是什么”这种否认站得住吗

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。