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薬物事件は刑が軽くても退去強制 日本に住んでいる人ほど打撃が大きい

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薬物事件は刑が軽くても退去強制 日本に住んでいる人ほど打撃が大きい

薬物事件は刑が軽くても退去強制 日本に住んでいる人ほど打撃が大きい

2026/08/31

刑事事件のご相談で、最も説明に時間を要するのがこの点です。薬物事件では、刑が軽く済んだことと、日本での在留を続けられることとが、まったく結びつきません。罰金でも、執行猶予でも、退去強制の事由に当たるからです。しかも、この規定は在留資格の種類を問いません。永住者であっても対象になります。この記事では、公表された事例と統計を手がかりに、なぜ日本に生活の基盤を持つ方ほど打撃が大きいのか、そして在留特別許可を求める材料をどう整えるのかを説明します。

公表された事例 在日中国人の女性旅客

名古屋税関の公表資料(平成29年)によれば、中部国際空港において、在日中国人の女性旅客1名が、覚醒剤約4.6グラム、ヘロイン約23.4グラム、ヘロイン水溶液約2.5グラムを持ち込もうとしたとして関税法違反で名古屋地方検察庁に告発されました。有罪が確定したものではなく、無罪推定が及びます。ここで注目すべきは、量が大量密輸の水準ではないことです。量が少なければ量刑は軽くなり得ますが、後述するとおり、在留の帰趨はそれとは別の物差しで決まります。

入管法24条4号チという規定の特徴

出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号チは、覚醒剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法などの違反により有罪となった者を、退去強制の対象と定めています。この規定の特徴は三つあります。第一に、刑の重さを問わないことです。罰金でも、全部執行猶予でも該当します。第二に、在留資格の種類を問わないことです。永住者も、日本人の配偶者等も対象です。第三に、初犯であるかどうかも問いません。他の犯罪について定める同条4号リが、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者に限り、執行猶予を除外しているのと、構造がまったく違います。

出国命令も上陸拒否期間の制限もない

薬物事案では、手続上の選択肢も狭くなります。自ら出頭して短期間で出国し、上陸拒否1年で済ませるという出国命令の制度は、薬物該当者には使えません。また、上陸拒否についても、他の類型では5年や10年という期間が定められているのに対し、薬物の場合は期間の定めがありません。再び日本に入るには、上陸特別許可という例外的な判断を得るほかありません。つまり、「一度帰国して、何年か経ってからやり直す」という設計そのものが成り立たない類型なのです。

だから日本に住んでいる人ほど打撃が大きい

短期滞在で来日していた方であれば、日本での生活の喪失という意味では影響が限られます。しかし、日本で10年、20年と暮らし、家族があり、住まいがあり、仕事がある方にとっては、同じ規定が生活のすべてを失わせる結果をもたらします。中国籍の在留者は令和7年末で93万0428人であり、そのうち永住者が35万7565人を占めます(在留外国人統計による)。永住者は、他の類型では退去強制のリスクが小さい層ですが、薬物事案についてはその保護が働きません。ここが、この規定の最も過酷な点です。

統計から見た実際の規模

もっとも、薬物によって現に退去強制令書が発付される人数は、多いわけではありません。令和7年の出入国管理統計によれば、退去強制令書発付の総数7722人のうち、24条4号チを事由とするものは86人(うち中国籍は4人)にとどまり、圧倒的多数は不法残留の5778人です。つまり「刑事事件を起こせば即座に強制送還」というのは正確ではありません。しかし、薬物事案に限っていえば、該当した以上は手続が進むという構造は変わりませんので、数の少なさは安心材料にはなりません。

在留特別許可を求めるという道

退去強制事由に該当しても、在留特別許可が認められれば日本に残ることができます。令和7年の統計では、審査、口頭審理、異議申出を合わせて1030人に在留特別許可が出ています(出入国在留管理庁の統計による。国籍別の内訳は公表されていません)。令和5年改正入管法により申請の手続が法定化され、考慮すべき事情も法律に明示されました。在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、法的地位、退去強制の理由、人道的な配慮の必要性が、判断の枠組みになります。

材料をどう整えるか

薬物事案は素行の面で消極的に評価されますので、それを上回る積極的な事情を、資料の形で示す必要があります。家族関係については、婚姻の実態を示す資料、子の在学証明、扶養の状況。生活の基盤については、住居の契約、就労先の在職証明と受入れの意向、納税と社会保険の記録。更生については、依存治療の受診記録、監督者の陳述書、再発防止の具体的な計画。これらは刑事の情状としても使えますので、刑事弁護の段階から一貫した形で積み上げることが効率的です。

ご家族が今日から始められること

本人が拘束されている間に、住まいを引き払わざるを得なくなる場面が多くあります。その前に、契約書、公共料金の明細、写真、子の学校の書類など、日本での生活を証明する物を段ボールひとつ分でも確保してください。日本で過ごした年数を裏づける資料は、後から作り直すことができません。あわせて、勤務先には弁護人を通じて連絡し、復職の可能性を残せるかどうかを確認します。これらの積み重ねが、刑事の場面でも入管の場面でも、本人の言葉を裏づける材料になります。

中文版:毒品案件即使刑罚很轻也要被遣返,住在日本的人打击更大

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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