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少量で複数種類の薬物 自己使用目的の主張で法定刑の幅は変わるのか

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少量で複数種類の薬物 自己使用目的の主張で法定刑の幅は変わるのか

少量で複数種類の薬物 自己使用目的の主張で法定刑の幅は変わるのか

2026/08/31

薬物事件では、押収された量が少なければ処分も軽い、と考えられがちです。しかし実際に量刑を大きく左右するのは、量そのものよりも、営利の目的があったと認定されるかどうかです。営利目的の有無で、適用される規定も法定刑の幅も変わります。この記事では、空港で少量ながら複数種類の薬物が発見されたと公表された事例を手がかりに、自己使用目的の主張がどのような材料で支えられるのか、そして在留への影響がどうなるのかを説明します。

公表された事例 少量かつ複数種類の薬物

名古屋税関の公表資料(平成29年)によれば、中部国際空港において、在日中国人の女性旅客1名が、覚醒剤約4.6グラム、ヘロイン約23.4グラム、ヘロイン水溶液約2.5グラムを持ち込もうとしたとして関税法違反で名古屋地方検察庁に告発されました。有罪が確定したものではなく、無罪推定が及びます。この事案の特徴は、量が大量密輸の水準ではないこと、種類が複数にわたること、そして本人が日本に生活の基盤を持つ在日の方であることです。

営利目的の有無で何が変わるのか

薬物取締法規は、所持や輸入について、営利の目的がある場合を重く処罰する構造をとっています。したがって、同じ量、同じ物であっても、営利目的が認定されるかどうかで、量刑の出発点となる幅が大きく動きます。営利目的が否定され、自己使用のための所持であると認定されれば、事案によっては執行猶予の可能性が現実的な選択肢に入ってきます。逆に、営利目的が認定されると、初犯であっても実刑が視野に入ります。したがって、この点は防御の中心に据えられるべき争点です。

営利目的はどのように判断されるのか

営利目的は、本人の内心の問題ですが、実際には外形的な事情から判断されます。実務で重視されるのは次の点です。第一に、小分けの有無です。均等な重量に小分けされ、多数の袋に分けられていれば、販売のための準備と評価されます。第二に、所持の態様です。秤、チャック付き袋、記帳のようなメモ、複数の携帯端末が併せて発見されれば、営利目的を推認させます。第三に、資力です。収入に比して不自然な現金の保有や、説明のつかない入金があるかどうかが検討されます。第四に、使用痕跡です。本人の身体から薬物反応が出ているか、注射痕や使用器具があるかは、自己使用目的を支える事情になります。

複数種類であることは有利か不利か

種類が複数であることは、一見すると組織的な取扱いを示すようにも読めますが、必ずしもそうとは限りません。使用者が複数の薬物を併用することは実際にあり、それぞれの量が使用の範囲にとどまるのであれば、自己使用目的と矛盾しません。他方で、種類ごとに小分けの態様が異なる、片方だけが未開封で大量にあるといった事情があれば、その部分については営利目的が疑われます。したがって、種類ごとに分けて評価を求めるという主張の立て方が有効な場面があります。全体を一括して「複数種類だから営利」と評価されることを避けるのが要点です。

自己使用目的の主張を支える資料

主張は、本人の説明だけでは足りません。使用の履歴を示す資料、身体からの検出結果、依存の程度に関する医学的な所見、渡航の目的や日程を示す資料、経済状況を示す通帳や給与の記録を組み合わせて示す必要があります。あわせて、依存があるのであれば、治療につなげる計画を具体的に示すことが、量刑上も意味を持ちます。医療機関の受診予約、家族による監督の体制、勤務先の受入れの意向といった、判決後の生活の見取り図を用意することが実務的な作業になります。

関税法での立件という側面

空港で発見された事案では、薬物取締法規と関税法の双方が問題になります。輸入してはならない貨物を持ち込もうとした点は関税法の問題として扱われ、告発を経て検察官が処理します。どの罪名で起訴されるかによって法定刑の枠組みが変わりますので、告発の段階で罪名が確定するわけではないことを理解しておく必要があります。税関の調査は刑事手続とは別の手続として進みますので、その段階での説明が後の刑事手続に影響することにも注意が必要です。

刑が軽くなっても残る在留の問題

ここが最も注意を要する点です。営利目的が否定され、刑が軽くなったとしても、覚醒剤取締法や麻薬及び向精神薬取締法の違反による有罪であれば、出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号チの退去強制事由に該当します。この規定は刑の重さを問わないため、罰金でも執行猶予でも該当します。日本に生活の基盤を持つ在日の方であればあるほど、刑事の軽減だけでは解決しない問題が残ることになります。

ご家族と本人が最初にすべきこと

まず、本人が使用者であるのか、運搬を頼まれた立場なのかを、事実に即して整理してください。次に、取調べで営利目的を否定する場合、その根拠となる生活の実情を具体的に説明できるよう、収入、家賃、家族構成、勤務の状況を書き出しておきます。通訳を介した取調べでは、微妙な言い回しが変わりますので、調書の内容には慎重に対応してください。そして、有罪となった場合に備え、日本での在留を求めるための資料を並行して集め始めることが、結果として本人の選択肢を広げます。

中文版:数量少但种类多:主张自用目的能否降低法定刑幅度

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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

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この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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