住居不定の学生が薬物事件で捕まったとき、身柄はどうなるのか
2026/08/31
留学中のお子さんが薬物事件で逮捕され、しかも報道に住居不定と書かれていた。ご家族にとって、これほど不安な状況はありません。住居がないことは、日本の刑事手続では身柄の拘束が続きやすくなる方向に働きます。しかし、それは今から変えられる事情でもあります。この記事では、住居不定がなぜ効くのか、勾留までにどれだけの時間があるのか、保釈のために何を用意するのか、そして学校への説明をどの順序で行うのかを、具体的に説明します。
報道された事案から
沖縄タイムスの令和7年12月11日の報道と沖縄地区税関の発表によれば、那覇空港で、いずれも住居不定の台湾籍の28歳の男性と中国籍の23歳の女子学生が、麻薬である大麻2.85グラムなどを隠して持ち込もうとしたとして関税法違反で那覇地検に告発されました。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。また、読売新聞が令和5年1月31日に報じた事案では、埼玉県内の集合住宅の空き室に覚醒剤約1キログラムを隠して所持したとして、中国籍の26歳の専門学校生が覚醒剤取締法違反などで逮捕されたとされています。こちらも起訴・有罪が確定したものではありません。学生であっても、事案の重さによって長期の身柄拘束は起こり得ます。
住居不定が身柄の判断に効く理由
逮捕された後、司法警察員は48時間以内に検察官へ事件を送り、検察官は24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求します。裁判官は、住居が定まっているか、逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるか、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるかを見て判断します。住居がないという事実は、このうち最初の要件に直接に触れます。勾留は原則10日、やむを得ない事由があればさらに10日延長され、合計20日になり得ます。ホテルや友人宅を転々としていた、寮を出た直後だった、といった事情は、その説明の仕方によって評価が変わりますので、早い段階で弁護人に伝えてください。
保釈のために用意するもの
起訴前の保釈という制度は日本にはありません。保釈を請求できるのは起訴された後です。そのとき裁判所が見るのは、実際に住む場所があるか、監督する人がいるか、逃亡のおそれをどう抑えるかです。ご家族としては、①住居の確保(賃貸借契約書、寮の受入れ承諾、親族宅の間取りと同居者)、②身元引受人(日本国内に居住し、連絡がつき、監督を約束できる人。学校の教員が引き受けてくださる例もあります)、③保釈保証金の原資、④旅券の管理方法、を準備することになります。旅券を弁護人が預かる、指定された住居から離れないといった条件を自ら提案することもあります。
学校への説明は、いつ、誰がするか
多くの学校は、長期の無断欠席そのものを問題にします。連絡が途絶えたまま数週間が過ぎると、事情を知らないまま除籍の手続が進んでしまうことがあります。他方、事実関係が固まらないうちに憶測混じりの説明をすると、かえって不利に働きます。実務的には、弁護人が就いた段階で、学生本人の意向を確認したうえで、弁護人から学校の担当部署に、事件の詳細ではなく、身柄拘束のため登校できない状況にあること、手続の見込み、休学等の手続の可否を照会するのが穏当です。学籍を維持できるかどうかは、在留資格の維持に直結します。
「留学」の在留資格の側で起きること
刑事手続と並行して、在留資格の問題が進みます。在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていないことは在留資格の取消事由であり(入管法22条の4第5号)、住居地の届出義務違反も取消事由です。出入国在留管理庁の統計によれば、令和7年の在留資格取消し1,446件のうち、在留資格別では留学が343件(23.7%)を占め、事由別では届出義務違反等の類型が999件(69.1%)でした。身柄拘束中に寮を引き払ったまま届出をしていない、という状態は避けなければなりません。家族が代わりにできる手続もありますので、弁護人に確認してください。
ご家族が今日できる準備
第1に、本人の旅券、在留カード、学生証、在学証明の所在を確認してください。第2に、日本国内で身元引受人になれる方を探してください。親族に限られません。第3に、住まいを確保できるかどうかを検討してください。契約が難しければ、学校の寮や知人宅でも構いません。第4に、中国のご家族が来日して支援できるかどうか、旅券と査証の準備を始めてください。第5に、本人が希望すれば領事機関への通報が行われます。これは領事関係に関するウィーン条約に基づく仕組みです。薬物事件は、有罪となれば刑の軽重を問わず退去強制事由になり得ますので、身柄と学籍の維持と並行して、在留の見通しも早い段階で立てておく必要があります。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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