舟渡国際法律事務所

実習先を離れた人が、次にどの犯罪に巻き込まれるのか 三つの事例から見える道筋

お問い合わせはこちら

実習先を離れた人が、次にどの犯罪に巻き込まれるのか 三つの事例から見える道筋

実習先を離れた人が、次にどの犯罪に巻き込まれるのか 三つの事例から見える道筋

2026/08/31

実習先を離れてしまった。帰るところがなく、在留期限は過ぎ、収入もない。この状態が続くと、多くの方が同じような誘いに出会います。住み込みで働ける現場、身分を証明する書類を用意してくれるという人、そして「簡単な作業で日当が出る」というSNS上の募集です。この記事では、報道と警察庁の公表資料から確認できる三つの事例を横断して、失踪した人が次にどのような犯罪に取り込まれていくのかという構造を示し、そのうえで、失踪した直後だからこそ選べるもう一つの道である出頭申告について、具体的に説明します。

三つの事例が示すこと

一つ目は、産経新聞が2026年2月26日に報じた事例です。岩手県九戸村の農場で、中国籍の会社役員の男性(36)と同社社員の男性(41)が、技能実習先から失踪したベトナム人実習生らを住み込みで就労させた疑いで、不法就労助長により摘発されたとされます。失踪したベトナム人13人は、その前年10月に旅券不携帯等ですでに逮捕されていました。

二つ目は、産経新聞が2024年6月2日に報じた事例です。実習先から失踪した中国籍の技能実習生の男性らが、千葉県船橋市のアパートで在留カードやマイナンバーカードを偽造したとされ、微信経由で指示役から指示を受け、日当約1万5千円で偽造していたと報じられました。

三つ目は、警察庁が公表する組織犯罪の情勢に掲載された検挙事例です。令和7年に警視庁が扱ったもので、技能実習の在留資格を持つ中国人の男性2人が、令和7年4月に自宅で行使目的で在留カード30枚を偽造したとされます。SNSの犯罪実行者募集情報に応募し、中国国内の指示役の指示で偽造して不法残留の中国人らに提供し報酬を得ていたとされ、在留カード偽造・偽造在留カード提供未遂で逮捕されたと公表されています。いずれも起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

三つに共通する構造

並べてみると、道筋がはっきりします。失踪した人は、まず身分を証明する書類を失います。次に、正規の求人に応募できなくなります。そこに、書類を問わない現場か、書類そのものを作る仕事が現れます。指示は対面ではなく微信やSNSで来ます。報酬は日当で、その日のうちに支払われます。この形は、犯罪に関与しているという自覚を持ちにくくするために作られています。

そして、最初の一件が最後にはなりません。偽造した枚数、提供した人数、受け取った報酬が積み上がり、それが後に量刑の基礎になります。警察庁の統計では、令和6年の来日外国人による入管法違反の検挙件数5,974件のうち、偽造在留カード所持等が401件を占めています。

失踪した瞬間から、二つの時計が動き出す

一つは在留期限の時計です。在留期間を過ぎれば不法残留となり、入管法70条1項5号の罪となります。もう一つは、生活費の時計です。手持ちの現金が尽きるまでの日数が、判断の余裕を奪います。実務上、危ない誘いに乗るかどうかは、この二つ目の時計で決まってしまうことが多いと感じています。

ですから、失踪した直後こそが、法的にも生活の面でも最も選択肢が多い時期です。時間が経つほど、選べる道は減ります。

もう一つの道としての出頭申告

自ら地方出入国在留管理官署に出頭して申告するという道があります。これは単なる自首の一種ではなく、法的な効果が明確に定められています。

入管法24条の3は出国命令の要件を定めており、その第1号にはイとロの分岐があります。イは違反調査の開始前に自ら出頭した場合、ロは違反調査の開始後で47条3項の通知の前に出国の意思を表明した場合です。出国命令は条文の位置が55条の85に移り、出国期限は15日を超えない範囲とされています。そして上陸拒否期間は、出国命令によって出国した場合は原則1年、ロに該当する人が出国命令で出国した後に短期滞在で来ようとする場合は5年、退去強制で送還された場合は前歴がなければ5年、前歴があれば10年です。

さらに、在留特別許可のガイドラインは令和6年3月に改定され、令和6年6月10日に施行されています。その中で、不法滞在を申告するために自ら地方出入国在留管理官署に出頭したことが、積極要素として明記されました。他方、不法滞在の長期化は消極要素とされています。つまり、早く出るほど有利になる制度設計になっています。

出頭する前に整理しておくこと

旅券と在留カードを手元に用意してください。手元にない場合、どこにあるのかを整理してください。次に、失踪に至った経緯の資料です。賃金の未払い、長時間労働、暴力やハラスメント、旅券の取上げ。こうした事情があれば、それを示す記録は極めて重要です。給与明細、勤務表、同僚とのやり取り、通院の記録などが該当します。

さらに、失踪後の生活の記録も整理します。どこで、誰の紹介で、いくらで働いたのか。これは不利な事実の告白に見えますが、隠したまま手続に入るほうがはるかに危険です。加えて、日本に家族がいるか、子どもが就学しているか、帰国後の生活の見通しはどうかも、判断の材料になります。監理措置の運用については、出入国在留管理庁の統計で、令和6年6月10日から同年末までの監理措置決定が1,123件(退去強制令書発付前647件、発付後476件)で、監理人の9割以上が親族・知人であったとされています。身近に監理人となりうる方がいるかどうかは、収容を避けるうえで実際的な論点です。

ご家族から連絡が取れなくなったとき

連絡が途絶えた場合、まず本人の在留期限を確認してください。次に、最後に働いていた場所と紹介者を把握してください。そして、本人が逮捕されている可能性があるときは、逮捕直後から弁護人を選任できることを伝えてください。接見禁止が付いても、弁護人との接見は刑訴法39条1項によって保障されており、制限されません。

「もう手遅れだ」と考えて何年も放置するうちに、不法滞在の長期化が消極要素として積み上がっていく。これが最も避けたい経過です。今日相談することが、来年の選択肢を増やします。

中文版:离开实习单位之后,人会被卷进哪些犯罪 从三个事例看清路径

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。