ブローカーが捕まったら、頼んだ留学生も捕まるのか 刑事責任と在留資格取消しは別に進む
2026/08/31
「頼んだ行政書士やブローカーが捕まったらしい」という話が、微信のグループを通じて一気に広がることがあります。自分の名前で出した申請がその中に含まれているかもしれない、と思ったとき、真っ先に浮かぶのは「自分も逮捕されるのか」という不安でしょう。この記事では、報道された虚偽申請ブローカー事件を手がかりに、依頼した側の刑事責任がどこで分かれるのか、刑事とは別に進む在留資格の取消しがどのようなものか、そして警察や入管から任意で話を聞きたいと言われたときにどう臨むべきかを、順を追って説明します。
まず結論から
依頼した人が自動的に逮捕されるわけではありません。しかし、無関係でもありません。この二つを同時に理解しておく必要があります。実務上、依頼者の立場は大きく三つに分かれます。虚偽であることを知って積極的に加担した人、虚偽であることをうすうす分かりながら黙って任せた人、そして本当に何も知らされないまま署名した人です。刑事責任が現実に問われやすいのは一つ目、事案によって分かれるのが二つ目、刑事責任は問われにくいが行政処分は避けられないことがあるのが三つ目です。
何を知っていたかで結論が変わる
旅日僑網(東京online酱)が2023年6月29日に報じた事件では、中国籍のブローカーらが在留期限の迫った中国人留学生に虚偽の書類を提出させ、約80人分について「経営・管理」への変更許可を取得させたとされています(起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます)。この種の事件で捜査機関が知ろうとするのは、依頼者が申請書の中身を見たか、事業所として届け出られた場所に行ったことがあるか、出資金として計上された金銭が実際に自分の資金だったか、報酬がなぜその金額だったか、といった点です。
逆に言えば、依頼者の側から示せる事情もここにあります。書類の控えを渡してもらえなかったこと、内容を説明されなかったこと、報酬が手続の代行費として説明されていたこと。こうした事情は、故意の有無を判断する材料になります。
刑事責任と行政処分は、別の手続として進む
ここが最も誤解されやすいところです。刑事事件が不起訴になったからといって、在留資格が守られるとは限りません。入管法22条の4は、偽りその他不正の手段による上陸許可等(第1号)、虚偽の申請等(第2号・第3号)を在留資格の取消事由として定めており、取消しは刑事処分とは独立に判断されます。
なお、取消しにあたっては出国のための期間が指定されることがあり、その期間内に出国すれば退去強制の手続には進みません。他方、一定の場合には期間が指定されず、そのまま退去強制手続に移ります。どちらになるかは事案によって異なり、この見通しを早い段階で立てておくことが、その後の選択肢を大きく左右します。
任意で話を聞きたいと言われたときの臨み方
任意の事情聴取は、法律上、応じる義務のあるものではありません。ですから、日時の調整を求めることも、通訳を付けてほしいと求めることも、当然にできます。慌てて一人で出向く必要はありません。まず弁護人に相談し、何を聞かれる見込みかを整理してから臨んでください。
実際に臨むときは、次の点を意識してください。記憶のない事柄を「たぶんそうだったと思います」と埋めないこと。日本語のニュアンスに不安があるときは通訳を通すこと。供述調書は読み聞かせを受け、内容が自分の言ったことと違えば署名押印を留保できること。そして、話したくないことは話さなくてよいこと。これは黙秘権として保障されています。取調べで一度作られた調書は、後から「本当はこう言いたかった」と訂正することが非常に難しいのが実情です。
取消しになった場合に、その先で何が変わるか
仮に在留資格を失った場合でも、その後の選択肢は一つではありません。入管法24条の3は出国命令の要件を定めており、第1号にイとロの分岐があります。イは違反調査の開始前に自ら出頭した場合、ロは違反調査の開始後で一定の通知の前に出国の意思を表明した場合です。この違いは上陸拒否期間に直結します。出国命令によって出国した場合の上陸拒否期間は原則として1年ですが、ロに該当する人が出国命令で出国した後に短期滞在で来ようとする場合には5年とされています。退去強制で送還された場合は、前歴がなければ5年、前歴があれば10年です。
つまり、「先に自分から出頭したか、摘発されてからか」という一点で、日本にいつ戻れるかが変わります。日本に家族や仕事の基盤がある方ほど、この差は重く効いてきます。
ご家族と本人が、今日できること
申請の控え、ブローカーとのやり取り、支払いの記録を集めて保管してください。パスポートと在留カードの所在をご家族が把握してください。学校に在籍している方は、在籍が続いていること自体が有利な事情になり得ますから、自主的に退学を申し出る前に相談してください。そして、身柄が拘束されていない今のうちに、通訳の付いた弁護人と一度話しておくことをお勧めします。何もしないまま呼び出しの日を迎えるのと、見通しを持って臨むのとでは、その後の展開が変わります。
中文版:中介被抓之后,委托的留学生也会被抓吗 刑事责任与在留资格取消是两条线
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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