「家族に送金するため」働いた留学生が資格外活動で逮捕されたとき、何が処分を分けるのか
2026/08/31
「家族に生活費を送るためだった」。資格外活動で摘発された留学生が、取調べでこう述べたと報じられた事案があります。この記事は、アルバイトの範囲を超えて働いてしまった留学生の方と、そのご家族に向けて書いています。動機が切実であることは事実として重要ですが、それだけで処分が決まるわけではありません。何が処分を分けるのか、学校を辞めることと在留資格を失うことがどう違うのか、この二つを混同しないための説明をします。
報じられた事案の概要
旅日僑網(華人時代Times)は2023年3月24日、東京都墨田区の派遣型風俗店で外国人女性を資格外活動に従事させたとして日本人の店長が摘発され、同時に外国人女性20人が逮捕されたと報じました。中国・タイ・ベトナム国籍等の女性のうち、5人が中国人留学生であったとされます。報道では、女性らが「家族に生活費を送るためだった」と述べたと伝えられています。これは資格外活動の疑いで逮捕されたという段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。
資格外活動は、どういう形で立件されるのか
留学の在留資格は、本来、教育機関で学ぶための資格です。アルバイトができるのは、資格外活動許可を受けた範囲に限られます。包括的な許可には、1週について28時間以内という時間の制限と、風俗営業や性風俗関連特殊営業が営まれている営業所では働かないという条件が付いています。したがって、この業種での就労は時間の長短にかかわらず許可の範囲外です。立件の形は二通りあり、許可の範囲を超えた就労として資格外活動の罪(入管法73条)で扱われる場合と、学業の実態を失い専ら就労していたと評価される場合とで、重さが変わります。捜査で確認されるのは、勤務の頻度と時間、収入の額と全収入に占める割合、在籍状況と出席率、来日後の生活の実態です。
動機の切実さは、どこで意味を持つのか
家族に送金するためという動機は、犯罪の成立を否定するものではありません。刑法は、法律を知らなかったことをもって罪を犯す意思がなかったとすることはできないと定めており、日本の制度を知らなかったという説明も、それだけでは成立を左右しません。しかし、量刑と処分の選択には影響します。実際、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48・35%です(法務省『令和7年版 犯罪白書』)。約半数が起訴猶予、すなわち不起訴で終わっています。ここで効くのは、就労に至った経緯を裏づける客観資料です。中国のご家族への送金記録、学費の納付状況、来日時に負った渡航費用の借入れ、日本での生活費の内訳。これらは、単なる同情ではなく、常習性や営利性が乏しいことを示す資料として提出できます。
退学と、在留資格を失うことは別の問題
ここを取り違える方が非常に多いところです。学校が退学や除籍の処分をするかどうかは、学則に基づく学校の判断です。他方、在留資格の話は入管法の問題です。留学の在留資格は、学ぶという活動が続いていることを前提としているため、在籍を失えば、活動を継続して3か月以上行っていないことを理由とする在留資格の取消し(入管法22条の4第5号)の対象になり得ます。また、次回の更新は事実上できなくなります。しかし、退学がすなわち退去強制ではありません。逆に、退学になっていなくても、資格外活動を専ら行っていたと認定されれば退去強制事由(同法24条4号イ)に当たり得ます。二つは別々に進みますから、刑事の対応と学校への対応と入管への対応を、同時に、しかし分けて設計する必要があります。
身柄を取られたときの、最初の1週間
逮捕されると、司法警察員は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求します。勾留は原則10日、延長でさらに10日、最大20日です。この期間に学期が進み、出席が途切れることが、後の在籍に響きます。弁護人が付けば、学校に対して事情を説明し、休学の手続で在籍を維持できないかを検討できます。接見禁止が付いてご家族が面会できない場合でも、弁護人との接見は制限されません(刑訴法39条1項)。中国語の通訳を要する事件は、令和6年の被告人通訳事件で中国語726人と全体の15・6%を占めています(同白書)。通訳を介した取調べでは、供述調書の内容が自分の述べたとおりかを、その場で確認してください。
ご家族が準備できること
ご家族には、本人が集められない資料を集めるという役割があります。学費の領収書、在学証明書、成績証明書と出席記録、家賃の支払記録、中国のご家族への送金記録、来日費用の借入れの資料。加えて、日本国内に身元引受人になれる方がいるかどうかを確認してください。身元引受人は、勾留に対する準抗告でも、起訴猶予を求める意見書でも、在留特別許可を求める場面でも使います。また、旅券と在留カードは、警察に押収されていなければご家族が保管してください。手続のたびに必要になります。相談に来られる際は、これらの資料をお持ちいただくと、初回で見通しをお示しできます。
中文版:为了给家人汇钱而打工的留学生被捕,什么会左右处分结果
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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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