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在留カードの原本を見なかったことが、未必の故意と評価されるとき

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在留カードの原本を見なかったことが、未必の故意と評価されるとき

在留カードの原本を見なかったことが、未必の故意と評価されるとき

2026/08/31

採用の現場で「在留カードの写真を送ってください」と伝え、送られてきた画像を見て採用する。人手が急に必要な業種では、珍しくない運用です。しかしこの運用は、事件になったときに、単に注意が足りなかったという評価では済まないことがあります。この記事は、人材派遣、建設、飲食、清掃といった業種で外国人を雇っている方に向けて、原本を見なかったという事実が、なぜ未必の故意という重い評価に結びつくのかを説明します。

報じられた運用の実態

2024年5月16日に報じられた事案では、大阪市内の人材派遣会社の代表と社員ら、そして法人が、入管法違反(不法就労助長)の疑いで書類送検されたとされています。報道によれば、2023年3月から2024年2月にかけて、在留カードの原本を確認しないまま65人を派遣し、確認は画像データをSNSで送らせるだけで、意図的に原本確認を怠っていたとされました。この会社は月間で100人から550人程度の外国人を雇用していたとも伝えられています。書類送検の段階の報道であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。なお、この事案については、当事務所が確認できた範囲では配信元の媒体名を特定できていないため、事案の骨格のみを紹介します。

未必の故意とは何か

故意には、間違いなくそうなると分かっていた場合だけでなく、そうなるかもしれないと考えながら、それでも構わないと受け入れて行為に及んだ場合が含まれます。これが未必の故意です。不法就労助長でいえば、この人は就労が許されない立場かもしれないと思いながら、確認すれば分かってしまうので確認しないまま働かせた、という場合がこれに当たり得ます。ここで決定的なのは、確認しなかったという不作為が、無関心の表れなのか、それとも知ることを避けるための選択だったのかという点です。前者は過失の問題ですが、後者は故意の問題になります。

画像だけの確認が危ういのはなぜか

第一に、画像は加工できます。有効期限や就労制限の記載を書き換えた画像を見抜くことは容易ではありません。第二に、そもそも券面自体が偽造されている場合があります。警察庁が公表した令和7年の検挙事例では、技能実習の在留資格をもつ中国人の男2人が、自宅で行使の目的で在留カード30枚を偽造し、不法残留の外国人に提供していたとされています。同じく令和6年の事例では、別の中国人の男2人が居室で在留カード37枚と個人番号カード6枚を偽造したとされます。精巧な偽造が流通している以上、原本を手に取ったうえで、券面の質感やホログラムを含めて確認したかどうかが、防御の分かれ目になります。第三に、画像には確認した日付や確認者が残りません。後から、いつの時点の状態を見たのかを証明できないのです。

境界はどこで引かれるのか

実務で見られているのは、確認しなかったことの理由と一貫性です。たまたま一人だけ原本を見られなかった、という事案と、会社の運用として最初から原本を求めない仕組みになっていた、という事案では、評価がまったく違います。後者は、確認しない状態を組織として作ったことになるからです。加えて、就労可否に疑いをもった形跡があるか、他の従業員については原本を見ていたのか、指摘を受けた後に運用を変えたか、といった事情が積み上げられます。担当者が「聞いてはいけない空気があった」と述べるような事案では、確認回避の意図が推認されやすくなります。

弁護人が組み立てる反論

この類型で反論を組むなら、まず、なぜ画像確認になっていたのかという業務上の合理的理由を示します。遠隔地からの登録で来社が難しかった、初回登録は画像で行い就労開始前に原本を確認する運用だった、といった事情が実際にあるなら、その手順書と実施記録が最大の武器になります。次に、疑いを抱く契機がなかったことを示します。日本語での意思疎通に問題がなく、社会保険や住民票の手続も通っていたのであれば、確認回避の意図とは結びつきません。最後に、指摘後の是正です。運用を原本確認に切り替えた日付と、全件点検の結果を示せば、故意の評価に対する有力な反証になります。

在留への影響と、今日変えられること

雇った側が外国人であれば、不法就労助長は刑事処罰を待たずに退去強制事由となり得ます(入管法24条3号の4)。令和7年の出入国管理統計第57表では、この号による退去強制令書の発付は15人で、うち中国籍が10人でした。雇われていた側は、資格外活動や不法残留の問題を負います。運用は今日から変えられます。原本を手に取って確認する、確認日と確認者を記録する、写しを保存する、満了日を一覧で管理する。この四つを回すだけで、未必の故意という評価から距離を取ることができます。既に捜査が始まっている場合でも、遅すぎるということはありません。是正を始めた日付そのものが、記録として意味をもちます。

中文版:没看在留卡原件,为何会被评价为“未必的故意”

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

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この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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