雇う側の社長自身が外国人だったとき、その在留資格はどうなるのか
2026/08/31
外国人を雇って摘発される会社の社長が、その社長自身も外国人であるという事案は珍しくありません。この場合、問題は刑事事件だけでは終わりません。刑事処分と並行して、社長本人の在留資格が三つの方向から揺らぎます。この記事は、日本で会社を経営している中国籍の方、永住者として事業を営んでいる方、そのご家族に向けて、何が同時に進むのかを整理します。
報じられた事案では、経営者自身が外国人だった
神奈川新聞(カナロコ)が2025年11月18日および同年12月8日に報じた事案では、千葉県船橋市の鉄鋼資材販売会社の中国籍の社長と法人が、入管法違反(不法就労助長)で摘発され、2025年12月8日に横浜地方検察庁が起訴したと伝えられました。報道によれば、神奈川県内の工場で、技能実習の在留資格をもつ中国籍の男性らに本来の資格では認められない業務をさせていたとされます。有罪が確定したものではなく、無罪推定が及びます。また、警察庁が公表した令和7年の検挙事例には、永住者の在留資格をもつ中国籍の女性会社役員が、不法残留のベトナム人を自社で働かせたとして不法就労助長で逮捕された例も挙げられています。雇う側が外国人であるという構図は、統計上も現に存在します。
第一の流れ、刑事処罰を待たない退去強制事由
入管法24条3号の4は、不法就労助長にあたる行為をした者を退去強制事由として掲げています。この号の重要な特徴は、刑事事件で有罪判決を受けることを要件としていない点です。行為そのものが認定されれば、不起訴であっても入管の手続は別に進み得ます。令和7年の出入国管理統計第57表では、3号の4イ(行為者本人)による退去強制令書の発付は15人で、そのうち中国籍が10人でした。全国で年間15人という数字は、けっして多くはありません。しかし、この号に該当した場合、刑事で不起訴を得ても在留の問題が残るという構造は、他の類型にはない特徴です。
第二の流れ、有罪判決と在留期間の更新
在留期間の更新は、退去強制事由に当たらなければ当然に認められるというものではありません。更新の許否は法務大臣の裁量に委ねられており、素行が善良であることが考慮されます。罰金であっても、執行猶予付きの判決であっても、事業に関連する法令違反での有罪は、素行の評価に直接影響します。ここで見落とされがちなのは、退去強制事由に当たらないから大丈夫だ、という説明が、更新の場面では通用しないということです。刑事処分の内容、反復の有無、是正の状況を、更新申請の中で自ら説明できるようにしておく必要があります。
第三の流れ、経営・管理という在留資格の該当性
「経営・管理」の在留資格は、日本で事業の経営や管理を行う活動に対して与えられます。事業の実体、事業所、常勤職員の状況といった要素が審査され、更新のたびに確認されます。刑事事件によって取引先を失い、許認可に影響が出て、事業そのものが縮小すれば、活動の実体がないと判断される可能性が出てきます。つまり、有罪かどうかとは別に、事業が続いているかどうかが在留資格の存否に直結します。永住者や日本人の配偶者等といった身分に基づく在留資格の方であれば、この第三の流れは働きませんが、退去強制事由と素行の問題は同じように残ります。令和7年末の統計では、中国籍の在留者930,428人のうち、経営・管理は24,840人、永住者は357,565人でした。ご自身がどちらの層に属するかで、危険の形が変わります。
弁護と申請の設計は、はじめから一緒に考える
刑事の場面では、確認体制の実在、指摘後の是正、役割の限定を示して、不起訴または軽い処分を目指します。同時に、入管の場面を見据えて、就労可否の点検表、在留カードの原本確認の運用、責任者の明確化、再発防止のための社内規程を、書面の形で整えておきます。これらは刑事の情状であると同時に、後の在留手続で提出できる資料でもあります。刑事だけを見て走ると、不起訴を得た後に在留の問題で立ち往生することになりかねません。
ご家族が最初にすべきこと
社長本人が身柄を拘束された場合、ご家族はまず在留カードと旅券の所在を確認してください。会社の口座と支払、従業員の給与の手当ても急ぎます。次に、過去の指摘や行政からの連絡に対してどう対応したかが分かる書類を探してください。是正の記録は、刑事でも入管でも使えます。そして、就労可否に疑いのある従業員の勤務を止め、その日付を残します。取調べでは通訳を求め、記憶が曖昧な点は曖昧なまま述べることが大切です。無理に整理した供述は、後で在留手続の説明と食い違い、双方で不利に働きます。
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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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