会社と社長が同時に起訴される。入管法の両罰規定とは何か
2026/08/31
会社が捜索を受け、社長が逮捕されたあと、会社そのものも被告人として起訴される。日本の刑事法にはそういう仕組みがあります。両罰規定と呼ばれるものです。この記事は、外国人を雇っている会社の経営者、役員、そして経営者のご家族に向けて、法人が処罰されるとはどういうことか、法人の罰金と個人に科される刑がどう関係するのか、そして書類送検が繰り返された事案がなぜ最終的に起訴に至るのかを説明します。
報じられた事案の経過
神奈川新聞(カナロコ)が2025年11月18日と同年12月8日に報じた事案では、千葉県船橋市に本社を置く鉄鋼資材販売会社の中国籍の社長と、同社が、入管法違反(不法就労助長)で摘発されました。報道によれば、神奈川県内の工場において、技能実習の在留資格をもつ中国籍の男性らに、金属くずの買い取りなど本来の在留資格では認められない業務に従事させていたとされ、期間は2023年11月から2025年7月にかけてとされています。同社に対する書類送検はこれが3回目であったとも報じられ、2025年12月8日に横浜地方検察庁が同社と社長を起訴したと伝えられました。有罪が確定したものではなく、無罪推定が及びます。
両罰規定とは何をする規定か
入管法76条の2は、法人の代表者や従業者が、その法人の業務に関して一定の違反行為をしたときに、行為者本人を罰するほか、法人にも罰金刑を科すと定めています。ここで押さえておきたいのは、法人は自分で手足を動かせないので、実際に違反行為をした人がまず処罰され、それとは別に、その人を使っていた法人が処罰されるという二段構えになっている点です。判例・実務では、法人の責任は、従業者の選任監督について注意を尽くしたといえるかどうかの問題として理解されており、会社としてどのような体制を敷いていたのかが、法人側の防御の中心になります。同種の両罰規定は商標法などにも置かれており、企業活動に伴う犯罪では一般的な仕組みです。
法人の罰金と、個人に科される刑の関係
法人に科されるのは罰金だけです。法人を身体拘束することはできませんから、拘禁刑はありません。他方、行為者である個人には拘禁刑も罰金もあり得ます。両者は別々の刑であって、法人が罰金を払えば個人が免れるという関係にはありません。実務的に重いのは、法人に前科が付くこと自体の影響です。許認可や入札、金融機関との取引、技能実習や特定技能の受入れの継続に、有罪判決が及ぼす影響は、罰金額そのものよりはるかに大きいことが少なくありません。会社としての弁護活動は、量刑の場面だけでなく、事業の継続を見据えて設計する必要があります。
なぜ書類送検の繰り返しが起訴につながるのか
書類送検で終わった過去があると、次は軽く済むと考える方がいますが、実際は逆です。検察官が起訴・不起訴を判断する際には、同種行為の反復と、是正の機会が与えられていたのに改まらなかったという経過が、強く不利に働きます。過去に指摘を受け、対応する機会があったにもかかわらず同じ状態が続いていたという事実は、会社としての体制不備の証明そのものになるからです。逆に言えば、最初の指摘を受けた時点で、就労可否の点検、在留カードの原本確認の運用、責任者の明確化といった体制を作り、その記録を残していれば、後の事件で法人側の防御材料になります。体制の整備は、事件になってから始めても遅いことが多いのです。
社長個人と会社、それぞれの弁護は同じではない
社長個人の弁護では、業務の指示系統、現場の実態把握の程度、在留カードの確認をどう回していたかが争点になります。会社の弁護では、選任監督上の注意を尽くしたといえるかが中心で、社内規程、教育の実施、点検の記録が問われます。両者の利益が完全に一致するとは限らず、社長が現場を知らなかったと主張すれば、会社の管理体制の不備が浮かび上がるという緊張関係も生じます。誰の立場で何を主張するのかを、早い段階で整理しておく必要があります。
ご家族と会社が最初にすること
社長が身柄を拘束されると、会社の意思決定が止まります。まず、代表者不在でも支払や雇用の手続を進められるように、権限のある役員や顧問との連絡経路を確保してください。次に、在留カードの写し、雇用契約書、シフト表、給与台帳、過去の指摘に対する対応記録を保全します。廃棄や書き足しは絶対に避けてください。並行して、現に問題のある就労を止め、止めた日付を記録に残します。そのうえで、社長の弁護人と、会社側の対応を担う弁護士の役割分担を早期に決めることをお勧めします。
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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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