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不法就労助長は、刑事処罰がなくても退去強制事由になります

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不法就労助長は、刑事処罰がなくても退去強制事由になります

不法就労助長は、刑事処罰がなくても退去強制事由になります

2026/08/31

「不起訴になったのだから、もう終わったはずだ」。不法就労助長の事案で、この理解のまま入管からの呼出しを受け、驚かれる方が少なくありません。この類型では、刑事処罰を受けたかどうかと、退去強制事由に当たるかどうかが、別の基準で決まるからです。本稿では、条文の構造がどうなっているのか、なぜ刑事と入管が別々に進むのか、そして両方の防御を同時に立てるとはどういうことかを説明します。

刑事事件が終わっても、入管の手続は終わらない

刑事事件は、検察官の処分か裁判所の判決で終わります。しかし退去強制手続は、出入国在留管理庁が独自に進める行政手続です。入管法24条は退去強制事由を列挙していますが、その多くは有罪判決を要件としていません。処分の主体も、判断の基準も、証拠の扱いも、刑事手続とは別のものです。

この違いを、実際の摘発事案に即して見てみます。産経新聞の2026年2月26日の報道によれば、岩手県内の農場で、技能実習先から失踪したベトナム人の実習生らを住み込みで就労させたとして、中国籍の会社役員の30代の男性らが入管法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕されたと報じられています。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。仮にこうした事案で刑事処分が軽く済んだとしても、入管の側の評価がそれに追随するとは限りません。

「行為のみで該当する」という条文の構造

入管法24条3号の4は、不法就労助長に関する退去強制事由です。この号の重要な特徴は、刑事処罰を受けたことを要件としていない点にあります。処罰の有無ではなく、その行為をしたと認められるかどうかが判断の対象です。行為者本人については同号イに規定が置かれています。

これは、退去強制事由の中でも特徴的な構造です。たとえば入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、刑の全部の執行猶予が付いた場合はただし書で除かれます。つまり刑の重さが基準になります。これに対し3号の4は、刑の重さも、有罪かどうかも問いません。「不起訴なら安全」という発想が通用しない理由が、ここにあります。

数字で見ると、どれくらいの規模か

出入国在留管理庁の出入国管理統計によれば、令和7年に退去強制令書が発付された7722人のうち、不法就労助長に関する3号の4イを単独の事由とするものは15人で、そのうち中国籍は10人でした。件数としては大きくありませんが、事由別で見ると中国籍の占める割合が高い類型です。

また、同庁の統計によれば、令和6年に退去強制手続等を執った者は18908人で、そのうち不法就労の事実が認められた者は14453人、全体の76.4%にのぼります。日本の入管実務において、就労をめぐる事実がいかに中心的な位置を占めているかが分かります。なお、これらの数字は年次と出典が異なるものを並べて読むと誤解が生じるため、いずれも公表年次を確認したうえで用いる必要があります。

永住者や定住者でも、対象から外れない

入管法の在留資格は、活動に基づく別表第一と、身分・地位に基づく別表第二に分かれます。別表第一の在留資格者だけを対象とする24条4号の2のような規定もありますが、3号の4にはそうした限定がありません。永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者であっても、この事由の適用対象になります。

警察庁が公表した「組織犯罪の情勢」には、令和7年、兵庫県で、永住者の在留資格の中国人の女性会社役員が、不法残留のベトナム人の男性3人らを自社で働かせたとして不法就労助長で逮捕された事例が掲載されています。永住者であることは、この場面では防壁になりません。日本での生活が長く、家族も生活基盤も日本にある方ほど、失うものは大きくなります。

退去強制手続に進んだ場合、どこで争うのか

退去強制手続では、入国警備官の違反調査、入国審査官の審査、特別審理官の口頭審理、法務大臣の裁決という段階を経ます。在留特別許可については、入管法50条2項が、収容令書により収容された外国人または監理措置決定を受けた外国人に申請権を認めており、それ以前の段階は職権の発動を求める活動になります。同条3項は、退去強制令書が発付された後は申請できないと定めています。時期を逃すと、主張の場そのものがなくなるということです。

同条5項は考慮要素を法定しており、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留の期間、法的地位、退去強制の理由、人道的な配慮の必要性などが挙げられています。出入国管理統計によれば、令和7年に在留特別許可がされたのは、審査で824人、口頭審理で29人、異議申出で177人の合計1030人でした。同年の退去強制令書発付は7725人ですから、簡単な道ではありませんが、主張が届く余地は現に存在します。

二つの防御を、同時に立てる

刑事の弁護では、関与の程度、雇用管理体制の是正、再発防止の具体策を示していきます。入管の側では、これに加えて、日本での生活の実態、家族関係、納税や社会保険の履行状況、事業の適正化の内容を、資料をもって示すことになります。二つは目的も相手方も違いますが、事実関係は共通しています。

実務上、最も避けたいのは、刑事手続で述べた内容が入管手続で不利に働くという事態です。取調べでの説明は、後の退去強制手続でも参照され得ます。刑事処分を早く終わらせるために事実を大まかに認めた結果、入管の側で不利な前提が固まってしまうことがあります。刑事と入管を一つの窓口で管理する意味は、まさにここにあります。ご家族には、雇用関係の資料、会社の登記や決算書類、そして本人の在留に関する資料を早めに保全していただくようお願いします。

中文版:助长非法就劳,即使没有刑事处罚也构成退去强制事由

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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