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中国籍の経営者が、失踪した技能実習生を働かせたとされる事案から考える

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中国籍の経営者が、失踪した技能実習生を働かせたとされる事案から考える

中国籍の経営者が、失踪した技能実習生を働かせたとされる事案から考える

2026/08/31

人手が足りない、来てくれる人がいる、事情は聞かないでおく。この三つが重なると、不法就労助長という罪の入口に立つことになります。しかも、雇った側が外国籍の経営者である場合、刑事処分だけでなく自分自身の在留資格まで危うくなります。本稿では、報道された事案を手がかりに、就労の実態がどのように立証されるのか、「知らなかった」という説明はどこまで通るのか、そして経営者側が負う在留のリスクを整理します。

報じられた事案の概要

産経新聞の2026年2月26日の報道によれば、岩手県内の農場において、技能実習先から失踪したベトナム人の実習生らを住み込みで就労させたとして、中国籍の会社役員の30代の男性と、同社社員の中国籍の40代の男性が、入管法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕されたと報じられています。報道によれば、日給は8000円から1万円、勤務は午前8時半から午後5時半で、就労期間は前年の3月から10月ごろとされ、失踪していたベトナム人13人は前年10月に旅券不携帯などの容疑で既に逮捕されていました。起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

警察庁が公表した「組織犯罪の情勢」にも、令和7年、兵庫県で、永住者の在留資格の中国人の女性会社役員が、不法残留のベトナム人の男性3人らを自社で働かせたとして不法就労助長で逮捕された事例が掲載されています。雇う側が中国籍で、働く側が別の国籍という組合せは、実務上決して珍しくありません。

不法就労助長罪は、どのような罪か

不法就労助長罪は、出入国管理及び難民認定法(入管法)の73条の2に定められています。この罪は、被害者が個人として存在するタイプの犯罪ではなく、出入国管理の秩序という社会的な仕組みを守るための規定です。したがって、示談や被害弁償によって責任が軽くなるという構造がありません。ここが、窃盗や傷害のような個人的な法益を侵害する罪との決定的な違いです。

この点は弁護の設計にも直結します。個人的法益を侵害する罪であれば、被害弁償と示談が処分に影響しますが、不法就労助長ではその筋道が使えません。代わりに、関与の程度、雇用管理体制の是正、再発防止の具体策、事業からの離脱や体制の刷新といった事情を積み上げていくことになります。

就労の実態は、どのように立証されるか

報道で日給や勤務時間、住み込みという言葉が並んでいるのは偶然ではありません。捜査機関は、これらの具体的な事実を積み上げることで「働かせていた」という評価を固めていきます。給与台帳、出勤簿、日報、寮の使用状況、食費の負担、送迎の記録、通信アプリでの指示。これらが実態を語ります。

他方で、これらの資料は、実態が報道されているとおりではないと主張する場合にも、最も有力な材料になります。ある人物は短期間しか関与していなかった、指揮命令を行っていたのは別の者だった、といった主張は、記憶ではなく記録によって支えられるべきものです。事件の初期に資料を確保しておくことが、後の防御の幅を決めます。

「知らなかった」は、どこまで通るのか

時事通信社の2024年3月2日の報道によれば、東京都内の店舗をめぐる不法就労助長の事案で、中国籍の男性が、在留資格の活動範囲を超えて働かせることが違法だと知らなかったとして否認したと報じられています。しかし、刑法38条3項は、法律を知らなかったとしても、そのことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできないと定めています。制度を知らなかったという主張は、原則として犯罪の成立を妨げません。

実務で意味を持つのは、その人が在留カードの原本を確認していたか、確認した内容をどう受け止めたかという点です。画像だけを見て済ませていた、資格外活動許可の有無を確認していなかった、在留期限を見ていなかった。こうした事情は、単なる不注意ではなく、あえて確かめなかったという評価につながることがあります。逆に、原本を確認し、記録を残し、専門家に相談した経緯があるなら、それは早い段階で示すべき事情です。

経営者側が負う、在留のリスク

外国籍の経営者にとって深刻なのは、刑事処分と在留の問題が同時に進むことです。経営・管理などの別表第一の在留資格であれば、事業が止まれば活動の実体が失われ、入管法22条の4第5号の取消事由に触れやすくなります。永住者などの別表第二であっても、後述するとおり不法就労助長は行為だけで退去強制事由になり得ます。

また、入管法76条の2は両罰規定を置いており、行為者だけでなく法人にも罰金刑が科され得ます。会社が処罰されれば、許認可や取引先との関係にも影響します。警察庁「令和6年における組織犯罪の情勢【確定値版】」(令和7年4月公表)によれば、令和6年の雇用関係事犯の検挙件数は278件、検挙人員は326人で、うち不法就労助長罪が262件(94.2%)、312人(95.7%)を占めました。働いていた側の国籍はベトナム247人、タイ50人、中国48人で、在留資格別では技能実習が208人(39.0%)でした。

雇用する側が、今日確認できること

まず、在留カードの原本を、写しではなく現物で確認してください。在留資格の種類、在留期限、資格外活動許可の有無と範囲。確認した日付と担当者を記録に残すことが重要です。次に、就労可能な時間や業務内容が資格の範囲に収まっているかを、業務の実態に即して点検してください。求人の経路や紹介者についても、記録を残しておくべきです。

すでに捜査が始まっている場合には、資料を廃棄しないこと、従業員に口裏合わせを求めないことが決定的に重要です。これらは罪証隠滅と評価され、身柄拘束の長期化に直結します。ご家族や会社の側では、雇用関係の資料、勤務実績、会社の登記や決算書類を保全し、弁護人に早く渡してください。

中文版:中国籍经营者雇用失踪技能实习生的案件说明了什么

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舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

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この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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