舟渡国際法律事務所

一日50枚、7500点。偽造カードの「工場」の実行役はどう裁かれるのか

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一日50枚、7500点。偽造カードの「工場」の実行役はどう裁かれるのか

一日50枚、7500点。偽造カードの「工場」の実行役はどう裁かれるのか

2026/08/31

在留カードの大量偽造が摘発されると、報道には目を引く数字が並びます。一日に何枚作った、押収データが何点あった、何千枚を販売した。ご家族はその数字を見て絶望されますが、刑事手続で意味を持つのは、報道の数字ではなく、証拠によって認定される事実です。この記事では、大量偽造として報じられた事案を素材に、製造の実行役と指示役の間にどれだけの落差が生じるのか、供述に依拠した枚数の認定がなぜ危ういのか、そして押収データと起訴事実の関係をどう整理すべきかを説明します。

はじめに、この記事で扱う報道の確認レベルについて

以下で触れる事案について、当事務所は報道の見出しレベルまでを確認しており、記事本文までは確認できていません。したがって、数字を含む個々の記載は、確定した事実としてではなく、そのように報じられているという限度で扱います。読者の方も、以下の数量を前提に自分の事件の見通しを判断することは避けてください。同種の事件であっても、証拠関係が違えば結論はまったく異なります。

報じられている事案の骨格

日本経済新聞、時事通信、東京新聞、TBS、テレビ東京の2025年5月10日ごろの報道によれば、中国籍の男性2人が、パソコンとプリンターでホログラム入りの在留カードを大量に偽造したとして摘発されたと報じられています。報道では「一日50枚くらい作った」との供述があったこと、関与が7500点を超えるとされること、押収されたパソコンに偽造データが約1万点あったとされること、日本人名義の戸籍謄本のデータも見つかったとされることが伝えられています。逮捕・摘発の段階であり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

製造役と指示役の落差はどこで生まれるのか

この類型の量刑を分けるのは、枚数よりも役割です。実行役は、目に見える作業を担当しているため摘発されやすく、押収物との結びつきも明白です。他方、注文を集め、価格を決め、利益の大半を取得している指示役は、通信アプリのアカウントの向こう側にいて、国外にいることも珍しくありません。結果として、末端の実行役だけが法廷に立つという事態が生じます。弁護人がすべきことは、この構造を証拠で描き出すことです。誰が機材を用意したのか、誰が原版データを提供したのか、報酬はどのように配分されたのか、離脱を申し出たときにどう扱われたのか。役割の従属性が立証できれば、同じ客観的な枚数であっても、犯情の評価は変わります。

「一日50枚」という供述の扱い方

大量偽造の事件では、枚数の認定が本人の供述に強く依存することがあります。しかし、記憶に基づく概算は、動揺しやすいものです。作業日数を掛け合わせれば大きな数字になりますが、その掛け算の前提となる稼働日数、機材の稼働状況、原材料の購入量、実際の出荷記録といった客観的な裏づけがあるかどうかは、別に検証しなければなりません。取調べの場で、確認していない数字を求められるままに答えると、後からそれが量刑の前提として一人歩きします。分からないことは分からないと述べる、記憶に基づく概算であればその旨を明示する。これは否認でも反抗でもなく、正確な事実認定のために必要なことです。

押収データの点数と、起訴された事実の枚数

押収されたパソコンに偽造データが約1万点あったとしても、それが直ちに1万件の犯罪になるわけではありません。データには、原版、テンプレート、作業途中のファイル、同一人物の複数版、実際には出力されなかったものが含まれます。検察官は、そのうち証拠によって特定できる範囲を起訴事実として構成します。弁護人は、起訴事実として特定された枚数と、単に押収された物量とを切り分け、後者が量刑の場で過大に評価されることを防ぎます。なお、同一の機会に連続して行われた偽造が一罪として扱われるのか、複数の罪として併合罪になるのかという罪数の整理も、量刑の枠に影響します。ただし、罪数の主張は、常に被告人に有利に働くとは限らないため、事案ごとに戦略的な選択が必要です。

在留資格への影響と、実刑の現実味

大量偽造の事案では、実刑判決の可能性を現実的に見据える必要があります。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑(全部執行猶予を除く)に処せられた者を退去強制事由としています。出入国管理統計(令和7年)によれば、退去強制令書発付7,722人のうち4号リ単独は41人(中国11人)ですが、不法残留との並立を含めれば162人(中国36人)が加わります。中国籍については、発付総数686人中47人が4号リに関係しており、比率ではベトナムの約3倍です。実刑となれば刑の執行後に退去強制手続に移り、退去強制を受けた場合の上陸拒否期間は、前歴がなければ5年、前歴があれば10年です(入管法5条1項9号ハ・ニ)。

ご家族が今すべきこと

まず、報道の数字を本人にそのまま伝えて問い詰めることは避けてください。ご本人が動揺した状態で捜査機関に説明すると、確認していない事実まで認めてしまう危険があります。次に、機材や原材料の購入履歴、家賃と光熱費の負担者、報酬の入金記録、募集を見た経緯を示す資料を保全してください。端末やアカウントのやり取りは、本人が削除してしまうと従属性を示す証拠まで失われます。証拠の隠滅とみなされる行為は絶対に避けなければなりませんが、既に存在する記録を保全することは別の問題です。弁護人にどこまで伝えてよいかも含め、早い段階で相談してください。

中文版:一天50张、7500件,伪造工厂的执行者会被如何审判

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

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この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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